看護師に向いてないのかも…人の生死に向き合う中でたどり着いた“寄り添う看護”に込めた想い

看護師は日々、患者さんやご家族と共に、命と向き合っています。

医療現場において看護師という職業は、医師や多職種と共に患者さんの命を繋ぐサポートをするだけでなく、患者さんやご家族と近い立場に立ち、気持ちに寄り添うケアを行っています。
そのため、プロフェッショナルな知識や技術を求められるだけでなく、冷静さも求められます。

しかし 、看護師も一人の人間であり、大切な方を失う悲しみや、心が揺れる瞬間を経験することがあります。
そんな時、仕事とプライベートをどうやって切り替えているのでしょうか。
今回は、癌患者の多い病棟で働く川田さん(仮名)に話をお聞きしていきたいと思います。

インタビュアー
この度は、お時間をいただきありがとうございます。
川田さんが働いている病棟では、癌の患者さんが多いそうですね。癌というと、重い病というイメージがありますが、実際働いていて、いかがですか?

川田さん
私の勤務する病棟は、癌患者さんの専門病棟です。治療中の方も多い中、やはり亡くなられる方もいらっしゃいます。

癌という病気は、日本では死因の1位と言われていることもあり、「癌=死」を連想してしまう方も多いと思います。
最近は
若い方でも発症することがあり、辛い現実に一緒に立ち向かわなければならないこともあります。
そんな生死に直面する病棟で働くうえで、“感情の切り替えが難しい”と思うことが多々あります。

インタビュアー
そうなんですね。癌の治療も、とても辛いものだというイメージがあります。具体的に、どのような時に難しいと感じたのか教えてください。

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看護師が難しいと感じる“感情の切り替え”とは

プロとしての冷静さと、人としての想い

川田さん
癌の患者さんと一言に言っても、様々な段階の方がいらっしゃいます。
辛い治療を頑張っていらっしゃる方、再発してしまって落ち込んでいらっしゃる方、もうこれ以上治療は難しく手の施しようがなくなってしまった方、残りの人生をどう生きるかという難問の答えを探している方…。
その方・そのご家族、それぞれに寄り添うケアが必要です。

その一方で、看護師自身にも、身近に病気と闘っている方がいたり、大切な方を失ったりすることもあります。
看護師自身の喪失体験や、近い将来、大切な方とお別れしなければいけないかもしれないという予期悲嘆と向き合わなければならないことがあります。

インタビュアー
そうですよね、大切な方とのお別れは、看護師さん自身にもあり得ることですもんね。
仕事でもプライベートでも生死に直面しなければならないというのは、想像するだけでもとても辛い気持ちだとお察しします。実際に、上手く切り替えられない時もありましたか?

川田さん
やっぱりありました。どうしても自分のプライベートの事が頭をよぎって、自分自身のことと重ねてしまって、本当に辛かったですね。
そんな時は、仕事中も冷静ではいられない時もあって、感情の切り替えが難しいと感じました。
正直、「私は看護師に向いていないのかもしれない」と思ったこともありましたし、このままではプロとして働けないと自信喪失しました。

インタビュアー
もしよかったら、その時のことをお聞きしてもいいですか。

仕事の垣根を超えて築かれたつながり

感情を見せることで近づいた心の距離

川田さん
私は、患者さんの前では、“常に冷静でいなければならない、笑顔でいなければならない”と思っていました。
でも、私も家族を癌で亡くしてしまって。今の職場で働いていると、プライベートと重なってしまったんですよね。
それで一度、耐え切れずに、患者さんのご家族のお話を聞いている時に、涙が出てしまったんです。
私はとっさに、「私は看護師として支える立場なのに。私が泣いちゃいけないのに…」と思ったんですが、ご家族からは「一緒に泣いてくれてありがとう」と言っていただきました。
それから、そのご家族との距離が一気に近くなり、ふさぎ込んでいた気持ちをたくさん話してくれました。
ご家族も患者さんを支える立場として気を張っていて、看護師の“人間らしさ”を見せることで、“気を許していい存在”になることができたんです。

そのことがあってから、常に冷静で笑顔でいなければと思っていたのは実は自分だけで、患者さんやご家族は、もっと看護師と人と人との関わりを望んでいる時もあるのではないかと思いました

もちろん冷静さは必要だけど、“共感”することは悪いことではないし、「私もそうでしたよ。」と、自分の体験を話すことも、悪いことではないと思いました。

インタビュアー
それは素敵なエピソードですね。親身になってくれる看護師さんがいて、ご家族は嬉しかったのかもしれませんね。

川田さん
そうなんです。後から私自身に置き換えて考えてみたら、気持ちが辛い時って、淡々と冷静な対応をされるより、「分かりますよ。そんな気持ちがあっていいんですよ」と気持ちを肯定してくれたら、すごく嬉しいし、いろんな感情が出てくることは悪いことじゃないんだって思えて、少し楽になるのかもしれないと思ったんです。
自分の気持ちを分かってくれる人がいる事、間違ってないですよって言ってくれる人がいる事は、大きな支えになるんじゃないかと思いました。
これは患者さんとご家族が教えてくださったことだなと思いました。

心に残る思いを寄り添う力に

川田さん
私は、大切な方を失ったとき、その時できる精一杯のことをしていたとしても、「もっとあぁすればよかった」「もっとこうできたんじゃないか」って少なからず後悔の気持ちも生まれると思うんです。
私自身がそうだったし、看護師として働いていて、そんな言葉をよく耳にします。
その気持ちってすごく辛くて、引きずるんですよね。
だから私は、その気持ちを“看護師という仕事を続けること”で和らげるようにしています。
そうすることで、患者さんやご家族に寄り添う力に変えることができるようになりました。

まとめ

人の生死に直面する看護師という仕事は、冷静さと専門性を求められる一方で、人と人とのつながりでもあります。
看護師にも様々な背景があり、それを抱えて日々働いています。
それは時に、患者さんやご家族を支える大きな力に変えることができます

その最中にいる時は、感情の切り替えは難しく、仕事も辛く感じるかもしれませんが、相手の立場や気持ちを理解することで、“寄り添う力”に変えることができるのは、看護師ならではの強みかもしれませんね。

もし今、感情の切り替えができずに悩んでいるなら、それは「向いていない」のではなく、それだけ真剣に人と向き合っている証なのかもしれません。

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