産後10ヶ月で育児休業から復帰した佐々木さん(仮名)。
好きな看護の仕事ができる喜びからフルタイム復帰を決意しましたが、待っていたのは、思い描いていた理想の生活と現実の大きなギャップでした。
産後の体力低下、子どもの体調不良、そして「なぜ私は他人のケアを?」と自己嫌悪に陥った経験。
仕事と育児の両立の狭間で「仕事を辞めた方がよいのでは」と、一人で涙する日々を過ごしたと言います。
本記事では、育休復帰直後に直面した佐々木さんの葛藤と、それでも看護師を辞めずに続けられた理由、そして苦悩を乗り越えるために見つけた3つの心構えをインタビュー形式で紹介します。
復帰後の働き方で悩む看護師の方へ、一歩踏み出すヒントをお届けます。
目次
育休復帰後に「辞めたい」思い描いた理想と現実のギャップ
インタビュアー
本日は、佐々木さんが第一子の育休復帰後に「辞めたい」と思ったエピソードや、どのように乗り越えたかをインタビューさせていただきます。
はじめに、簡単に自己紹介をお願いします。
佐々木さん
よろしくお願いします。第一子の育休復帰後から約1年が経ち、実は今第2子を妊娠中でもうすぐ産休に入ります。
インタビュアー
おめでとうございます!育休復帰してからの1年間、多くの壁を乗り越えてこられたかと思います。
復帰の時期が近づいた時には、どのような思いでしたか。
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好きな仕事ができる喜びからフルタイムでの復帰を決意
佐々木さん
過去に育休復帰したスタッフはほとんどフルタイムで復帰していて、時短で働くスタッフは病院全体から見ても少ないのが現状でした。
職場が家から近いことや、病棟スタッフの人手不足もあったので夜勤なしのフルタイムで復帰を決めました。
産後10ヶ月で復帰した理由としては、職場がはじめて学生を受け入れ始めるタイミングが産後10ヶ月の頃で、学生指導が好きで職場にも貢献できるのではと思ったからです。
そして、より子どもと楽しい時間を過ごすには、少し子どもから離れて仕事に打ち込むのもいいかなと思ったのも理由の一つです。
子育ての大変さに直面し考えが甘かったと痛感
インタビュアー
子育てをして仕事もこなすママってかっこいいと思います。
ポジティブな気持ちで復帰されたと思いますが、現実はうまくいかないことも多かったですか。
佐々木さん
はい。笑
もうそれはそれは大変でした。
一番は、産後の体力回復が思うように進まず、疲労困憊の毎日でした。
仕事の日は子どもが保育園に通っていますが、自分が休みの日は子どもも保育園を休まなくてはいけなくて。
サポートも手薄だったため、一人の時間を確保できませんでした。
あとは、やはり子ども自身が抱える負担が大きいことですね。
預ける時間が長ければ子どもがストレスを感じ機嫌が悪い時間が増えたり、子どもの成長に伴ってイヤイヤ期を迎えたりと子育ての大変さを感じました。
よく考えて復帰の時期や働き方を決めたつもりでしたが、甘かったと反省。
30分でも1時間でも早く子どもをお迎えにいければ、もっと自分の心に余裕ができたのではないかと後悔することもありました。
子どもの体調不良や残業で看護師を続けるか葛藤の日々
インタビュアー
育休明けの仕事は単に体が辛かったり、育児が大変だと思うだけでなく、場合によっては「辞めたい」と思うケースもあると思います。佐々木さんはいかがでしたか。
佐々木さん
子どもの体調不良が一番きつかったです。
私の勤める職場では、小児科病棟で職員の子どもの病児保育を実施しています。復帰前は、いいシステムだと思っていました。
子どもが熱を出しても仕事を休まなくていいくらいにしか思っていなかったんですよね。
ですが、いざ子どもが体調を崩した時、「預ける」なんて考えられなかったです。
そばにいてあげたいし、ママがいるから大丈夫だよって言ってあげたかったです。
実際の病児保育は名ばかりで、サークルの中に1日放置の現状でした。
インタビュアー
実際にどう思うかはなかなか想像がつかないこともありますよね。
「なぜ私は他人のケアを?」病児保育で泣き続けた我が子と自己嫌悪
佐々木さん
病児保育に預けに行った際、病棟の看護師に子どもを受け渡すと「早く行ってください、ほら泣いちゃったじゃん。」と言われ悲しい気持ちになりました。
自分が勤務中も、自分の子どもが辛い時になぜ私は他人のケアをしているんだろうと、働くことさえ疑問に感じました。
お迎えにいくと、初めて声の枯れた我が子と対面。
どんなに泣いても声が枯れたことはなかったため、少しも休むことなく泣き続けたんだと思うと胸が苦しくなったのをよく覚えています。
師長に「絶対利用しません」と宣言し、今では職場の病児保育ではなく地域の小児科クリニックと連携している病児保育を利用しています。
どうしても休めない時に一度利用したのですが、お迎えに行ったら体調が回復していました。
ほぼマンツーマンで見てくれるので、子どももリラックスして過ごせたと思います。
ただ、予約が取れない時はなんとか休めないか師長へ相談することもありました。
子どもが理由だと休めないため、自分の体調が悪いと伝え休みをもらったこともありましたね。
少し嘘をついてでも自分の心を守らないとダメだと思っています。
保育園に通いだし半年が経つと、子どももあまり熱を出さないようになりました。体調不良の際はうまく職場以外の病児保育を活用できたり、事前に勤務交代をお願いしたりしてなんとか乗り越えました。
一人ポツンと残された我が子の我慢と母の罪悪感
インタビュアー
お子さんの辛い様子が一番だったのですね。他にも育休復帰してきつかったことはありますか。
佐々木さん
フルタイムで復帰したため残業の日も時々ありました。残業が長引くと、子どもが一人ポツンと残されていることもあって。
保育士は掃除をして子どもは一人、その光景に申し訳なさから涙が溢れました。
園長の前で号泣したこともあります。
いつもはお迎えにいくと「ママー!」と笑顔で駆け寄ってくれる我が子も、その日は保育士の側から離れませんでした。
楽しそうに保育園で過ごしていても、小さな体で一生懸命我慢しているんだなと胸が締め付けられました。
多くの葛藤を乗り越えた看護師が伝えたい|育休復帰する際の心構え
インタビュアー
お話ししていただいたこと以外にも、多くの葛藤があったかと思います。佐々木さんがなぜ乗り越えられたか教えていただけますか。
また、これから育休復帰する方に伝えたいことがあればお話しください。
佐々木さん
育休復帰後の始めの1年が、今後の方向性を決めるうえで大切な時期だと感じました。
復帰前に慎重に、かつ現実的に考えたつもりでも、実際にはどうなるかわかりません。
色々な葛藤と向き合ったことで自分が何を大切にしたいかが徐々に明確になりました。
自分の譲れない一線を決める
佐々木さん
ある先輩看護師から「みんな子どもを預けてやってきたんだからあなたも大丈夫」と言われたことがありました。
私は、他の人が決めた常識に従う必要はないと思っています。
私の場合、働きながら分かったことは、仕事よりも子どもが一番ということです。
これ以上こどもがストレスを感じるなら辞めようと思いました。
「完璧な看護師」を一旦手放す
心構えみたいな感じになりますが、育休復帰する場合、他のスタッフが代わりに負担を請うケースも少なくありません。
「やってもらって当たり前、早く帰って当たり前」といった姿勢では協力も得られないと思います。
私の場合はフルタイムで復帰したものの、やはり定時になると後輩ですら、自分の業務が残っていても「早く帰ってあげてください」と声をかけてくれました。
仲間からの声かけにどれだけ助けられ励まされたことか……。
もしかしたら私がいないところで「育休復帰の人はいいよね」と言われていたかもしれません、実際よく愚痴っている先輩もいましたし。
ですが、決められた時間を誰よりも一生懸命に、積極的に取り組むことでまわりの協力も得られたと思います。
感謝と行動で得られた協力
子育てとの両立をするには、自分一人で頑張っても続きません。
仲間のスタッフには、ただありがとうだけでなく、「〜〜が助かる」「あの時は〜〜に救われたよ」など、具体的に感謝を伝えるのも大切だと思います。
肩身が狭くても限られた時間の中でやり切った時に、仲間から「ありがとう!助かったよ!」と言われると報われた気持ちになりました。
育休復帰後「看護師を辞めたい」と思ったら働き方を見直すのも選択肢の一つに
今回、佐々木さんには、育休復帰後の葛藤から、辞めずに続けるために必要な「自分の軸」を見つけるまでをお話しいただきました。
産後の体力低下、子どもの体調不良、周囲からの心ない言葉など、育児と仕事の両立に悩む看護師さんは少なくありません。
佐々木さんのように、「自分の譲れない一線を決める」「完璧な看護師を一旦手放す」といった心構えで周囲と感謝をもって協力体制を築けたことで、苦悩を乗り越えられたと感じました。
育休復帰後は、以前のような働き方ができない場合が多く、育児と仕事の両立に悩む看護師さんは多いはずです。
子どもを早くお迎えに行くために休憩時間を返上して仕事をする場合も多く、上司に相談する時間を作れないこともあると思います。
ですが、上司に相談して働き方を変える、あるいは今の環境に縛られず、時短勤務や託児所付きなど、子育てに理解のある新しい職場を探すのも大切な選択肢の一つです。
佐々木さんの体験談が、育休復帰後で悩んでいるみなさんの心を軽くするきっかけになれば嬉しく思います。
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