ママナースと独身ナースの距離が縮まった日|看護師の人間関係

女性はライフステージの変化で、優先順位の変化や、働き方の変化が生まれることがあります。
そんな中で、独身ナースとママナースの間に、言葉にしにくい距離感や温度差を感じることがあります。

今回話を聞いたのは、独身ナースとして働いた経験もあり、今はママナースとして働いている、看護師の松尾さん(仮名)です。
本記事では、両方の立場を経験したからこそ見えてきた、「独身ナースの本音」と「ママナースの気持ち」についてお話を聞いていきたいと思います。

インタビュアー
本日はお忙しいところありがとうございます。松尾さんは長年、病棟勤務をされているんですね。

松尾さん
はい、独身の頃から病棟看護師として働いており、結婚、出産をしてからもずっと看護師を続けています。

インタビュアー
ライフステージが変わる中で、働き方の意識にも変化はありましたか?

松尾さん
そうですね。その時々で感じることが違うんだなと思いました。
特に違いを感じたのは、実は私は、独身ナースだった時にママナースに対してモヤッとした気持ちを抱いていたことがありました。
自分自身がママナースになった今、独身の時は分からなかったママナースの気持ちが、ようやく分かるようになりました。


ママナース・独身ナースそれぞれの思い

インタビュアー
その立場にならないと分からないことってありますよね。では最初に、独身ナースとして働いていた頃のお気持ちからお聞きできますか?

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独身ナース時代の本音と負担

松尾さん
一番感じていたのは、ママナース優先の勤務体制ですね。
家族の予定や子供のイベントのために、優先して休み希望を取っていました。
独身者も、家族や友人とリフレッシュしたりしたいのに、「その日だけは出勤して。」と頼まれることも多かったですね。

他にも夜勤の回数を減らしたり、残業ができないためリーダー業務を外してもらったりと、なにかと優遇されているような印象がありました。
そのしわ寄せはほとんど独身ナースにかかってくるんですよね。
独身ナースは少なからず「なんで私ばっかり」という気持ちが生まれてしまうのも仕方のないことだと思います。

それに加え、どうしても子供の急な体調不良などで、欠勤が生じたり…。
誰も攻めることはできないけれど、なんだかモヤッとしてしまっていました。「不公平」とさえ思ってしまうこともありましたね。

今だから言えるんですが、急な欠勤や早退があった時、特に忙しい日などは「またか」と思ってしまうこともありました。
もちろん仕方ないことなのは分かっているんですけど、“だからこそ言えない”というモヤッともありました。
“大変なんだろうな”とは思うけれど、実際体験していないので想像することしかできないので、どう声をかけていいか分からないという感じもありました。

今ならわかる、ママナースの気持ち

インタビュアー
独身時代はいろいろな思いをしながら働いていらっしゃったんですね。ママナースになった今、そのことについてどう思いますか?

松尾さん
自分が逆の立場になった今だから分かったことがたくさんあります。
一番に感じたのは、ママナースは常に「申し訳ない」という気持ちでいっぱいということですね。
融通の利く働き方をさせてもらってることも、本当にありがたい気持ちでいっぱいなんです。

そんな中、急に欠勤せざるを得なくなった日などは、申し訳なさ過ぎてストレスになることもあります。簡単に休んでいるわけではないんだということが、今になってわかりました。

私の場合特にですが、本当はもっと働きたい。でも、子供のために、家庭のために、働き方の選択肢が限られるということは、ママナースならではの不満なんだと思います。
子供を育てながら働くことの大変さは、体験しないと分からないですね。
ママになったから、仕事は楽をしたいというわけではなく、優先順位が変わったということなんだなと思います。

距離を縮める方法

インタビュアー
なるほど、見方が変わると感じ方も全然違うんですね。実際一緒に仕事をする上で、そんなお互いの立場や気持ちにどうやって歩み寄ったのですか?

松尾さん
大前提として、どちらの気持ちも責めることはできず、誰も悪くないんですよね。

独身ナース時代にしたこと

松尾さん
そのうえで私がしたことは、独身ナースの立場から「せめてこうしてほしい」ということを、勇気を出して言ってみました。といっても、ほんのちょっとのことですが、例えば物品の補充だけでも、本当に助かるんですよ。

リーダー業務は難しくても、薬のチェックやドクターの指示が抜けていないかなどの確認をしてもらうなど、リーダーのサポートをしてもらえると、効率もいいし、自分の担当の患者さんを責任もって看るという意味でも、責任感が高まっていいのではと提案しました。

そういったことを、月1の会議の時に、「もう少し助け合いましょう」と話す場を設けて話しました。
独身ナースがしてほしいことって、謝ってほしいとか労ってほしいとかよりも、大きなことでなくていいから、ママナースにもできる範囲でもっと声をかけたり少し助けてくれたりしてほしい、ということだったんです。

インタビュアー
それを言うのはとても勇気がいりましたね。気持ちを伝えてみて、何か変化がありましたか?

行動を起こして変わった病棟の空気

松尾さん
最初はきっと、嫌な気持ちをした方もいるかもしれません。でも、徐々にママナースからも「何かできることある?」という言葉をかけてもらえるようになりました。
「今日は急いで帰らなくていい日だから手伝うよ」と、自主的に残業をしてくれることもあって、本当に助かったし、嬉しかったですね。

夜勤ができなくても、「どうやったら夜勤スタッフが困らないか」という視点をもってもらえるようになりました。
これは、日勤・夜勤に関わらず、みんなが次の勤務の人がどうやったら働きやすいかを考えるようになるきっかけになって、病棟全体がいい方向に変わっていきました。

当時はまだ経験の浅い私の気持ちを汲んでくれて、変わってくれたスタッフに感謝しています。

インタビュアー
全体の意識が変わっていい方向にいって本当によかったですね。勇気を出して伝えた甲斐がありましたね。
独身ナースとママナースの関係性に変化はありましたか?

松尾さん
実はそれも上手くいったんです。
今まではママナースはママナース、独身ナースは独身ナースで固まっていることが多かったのですが、お互いに話すことが増えました。
お互いの背景や気持ちを話す機会が増えたことで、仕事もしやすくなったし、困ったときはお互い頼みやすくなりました。

一緒に働くスタッフ同士、ほんの少し意識を向けるだけでも、病棟の雰囲気全体が変わっていきました。

どちらも経験したからこそ得られた考え

インタビュアー
お互いのことを思いやって、とてもいい職場ですね。独身ナースとママナース、どちらも経験した今の思いを教えてください。

松尾さん
今回の件で一番感じたのは、看護はチームだということですね。
それまでは、なかなかお互いの気持ちを知るきっかけがなかっただけだったんだなと思います。勇気を出して声を上げたことでいい方向に進んだと思います。

独身ナース時代の気持ちも、ママナースになった今の気持ちも、どちらも本物で、どちらも責めることはできません。
どちらの気持ちも分かった今は、独身ナースとママナースの間に立ち、チームが円滑に回るよう務めています。
もちろん、今回のようにうまくいくことばかりではないと思いますが、スタッフの人間関係が悪いと、患者さんに伝わるものです。できるだけいい関係性を築いていきたいですね。

まとめ

独身ナースとママナース、それぞれの立場があり、それぞれの思いがあります。
全てを理解することは難しいかもしれませんが、お互いに歩み寄ろうとする意識が少しあるだけでも、関係性はよくなるかもしれません。

看護がチームとして患者さんを支えるうえで、スタッフ同士の関係性もよいものになると、より質のいい看護につながります。
ライフステージが変わっても、長く続けることができる仕事だからこそ、お互いの思いやりの姿勢を大切にしていけるといいですね。

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