インシデントを起こして「怖くなった」看護師の本音|与薬間違え未遂から立ち直るまで

医療現場において、少しの気の緩みや、確認不足が、大きな事故に繋がってしまう事があります。
インシデントやヒヤリハットは、おそらく誰もが少なくとも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
大きな事故には至らなかったとしても、そのことは看護師にとって心に深く傷を負う体験になります。
今回は、インシデントを起こしてしまった時の気持ちや、その後の変化について、上村さん(仮名)に話を聞いていきたいと思います。

誰にでも起こりえる看護師のインシデント

インタビュアー
本日はお忙しいところありがとうございます。
今回はインシデントのご経験についてお話を聞かせてください。

上村さん
私は病棟勤務3年目の時に起こした
インシデントが、とても心に残っています。
インシデントは、新人看護師だけが起こすものではないということを改めて感じた経験でした。

インタビュアー
そうなんですね。実際働いていて、インシデントが起こりやすい時などはあるのでしょうか。

上村さん
そうですね、他の看護師の話を聞いていても、ナースコールが鳴りやまない時、業務量が多く時間に追われている時、人員不足など、忙しい時にヒヤリハットやインシデントが起こりやすいようです。
私がインシデントを起こした時もそうでした。

インタビュアー
そうなんですね。その時のお話を聞かせていただけますか。

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同姓患者による患者誤認…そして起こった与薬間違え

上村さん
その当時、同じフロアに同姓の患者さんがいました。年齢も近く、スタッフの間でも「気を付けないといけないね」と話していました。

ある日の昼食時、スタッフも休憩に入るため手薄になる時間でした。
私が患者さんにお薬を配っていたのですが、同姓の患者さんに間違って渡してしまったんです。
他のスタッフが薬を飲ませようとしたところ、名前が違うことに気付いてくれました。

幸い、どちらの患者さんもまだ内服しておらず、大事には至りませんでした
同姓患者がいることは分かっていたし、“気を付けていたはずなのに”という気持ちでいっぱいでした。

インタビュアー
事故にならずによかったですね。でも、ショックだったのではないですか。

「まさか私が…」与薬ミスに気づいた瞬間

上村さん
その時は本当にショックでした。間違いを指摘された時は、まさに“血の気が引く”という感覚でした。
“未遂に終わってよかった”という安堵感と同時に、“気付いたのがもし内服した後だったら…”という恐怖がありました。
薬によっては、患者さんに大きな影響が出てしまうことを知っているからです。

新人の時の、右も左も分からない時のミスと違ったのは、その薬が患者さんの健康にどう影響を与え、どんなリスクが生じてしまうかをすぐに理解できたことです。
そういった意味では、新人の時のミスよりも、経験を積んでからのミスは、とてもショックが大きかったですね。
自分への落胆の気持ちや、患者さんへの申し訳ないという気持ち、患者さんや他のスタッフからの信頼がなくなるのではないかという怖さなど、とにかく様々な気持ちが入り混じった心境でした。

インシデントを起こしてしまった後は、本当に仕事に行きたくなくなるし、周囲の視線も気になっていました。
みんなに白い目で見られているんじゃないかと、うつむいてしまいました。

インタビュアー
そんな時には、誰かが助けてくれたのですか?

誰の言葉も耳に入らない、ふさぎ込んだ日々。

上村さん
同僚や先輩が励ましてくれましたが、正直なところ、私には誰の言葉も心に刺さらず、救いになった言葉はありませんでした。
当日は自己嫌悪に陥り、「看護師に向いてないかも」とさえ思いました。
翌日仕事に行くのも本当に嫌でした。
どんな顔をして病棟に入ればいいのか、患者さんに合わせる顔がないと思いながら出勤しました。
そんな辛さも乗り越えるしかなく、ただただ日にちが薬だったことを覚えています。

 インシデントを起こした後の心の変化

消えない怖さ

上村さん
気持ちの回復にはとても時間がかかりました。
以前のように前向きな気持ちで仕事に行けるようになるまで、何日もかかりました。

怖さは完全に消えることはなく、何年も経った今でも心に引っかかっていますし、また同じようなミスをしてしまったら…という気持ちもあります。

インタビュアー
その怖い気持ちを打破するために、どう気持ちを切り替えたのですか?

上村さん
最初は落ち込むばかりでしたが、今の自分にできることは、今まで以上にしっかりと確認をすることだと思うようになりました。

今考えると、看護師3年目になり仕事にも慣れ、効率よく仕事をやろうとするなかで、新人の頃に比べて一つ一つの確認が疎かになっていたのかもしれません。
今回の事で身が引き締まり、「慣れ」を捨て、丁寧に仕事をしようと思うようになりました

インシデントの経験をこれからの看護に生かす

インタビュアー
インシデントが看護への姿勢を見直すきっかけになったのですね。

上村さん
本当にそうなんです。
本当はこんなこと言ってはいけないと思いますが、それまでは医療事故って、どこか他人事のような感じに聞こえていたんです。
でも、自分が当事者になるかもしれないという「怖さ」を知ることができました。

「怖さ」を知ったからこそ、責任をもって仕事をするようになったし、そういう仕事をしていることを改めて胸に刻むきっかけになりました。

まとめ

インシデントは、看護師にとって辛い過去であり、本人にとっては消えない傷として心に残るかもしれません。しかし、ほとんどの看護師が経験していることでもあります。
それは新人、ベテランなどは全く関係なく、誰にでも起こりえることです。

上村さんは、看護師という仕事の責任において、確認作業の大切さを身をもって経験していました。
失敗を糧にすることは、自分自身の看護への姿勢の見直しや、時にはチームとしての看護のありかたの見直しにつながるかもしれません。

もしインシデント後の心の傷に悩む看護師さんがいたら、あなたの経験は、必ず誰かの安全につながると信じて、一緒に頑張っていきましょうね。

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