高齢者介護の現場には、男性介護職と女性介護職の割合が「1:9」あるいは「2:8」のように女性が圧倒的に多い職場が存在します。
転職や異動によって、このような女性の多い職場で働くことが決まったとき、男性介護職はどのような悩みや不安を抱えるのでしょうか。
この記事では、男性介護職が女性の多い職場で働くときに抱える悩みや不安、それらを解決するためのヒントを紹介します。
女性の多い職場で働いたことのある男性介護職の体験をまじえて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
女性の多い職場で働く男性介護職の割合
はじめに介護事業所における男性介護職と女性介護職の割合を紹介します。
公益財団法人 介護労働安定センターは、厚生労働省からの委託を受けて、全国の介護保険指定介護サービス事業を行う事業所を対象にアンケート調査(介護労働実態調査)を行いました。同調査によると、5,680事業所に在籍する介護職員の人数は合計9万5,401人。このうち男性は24.6%、女性は66.6%(性別不明8.8%)でした。
この数値を1事業所に換算した場合、1事業所あたりの介護職員は16.8人となり、そのうち男性は4.1人で女性は11.2人(性別不明1.5人)です。
参照:介護労働安定センター|令和5年度介護労働実態調査結果 事業所における介護労働実態調査 結果報告書
「令和4年度介護労働実態調査結果」から、職種別の性別割合を紹介します。
職種別就業形態と性別
| 全体 | 22.2% | 77.3% |
| 訪問介護員 | 12.5% | 87.3% |
| サービス提供責任者 | 17.6% | 82.2% |
| 介護職員 | 26.5% | 72.8% |
| 看護職員 | 8.1% | 91.5% |
| 生活相談員 | 34.4% | 65.4% |
| PT、OT、STなど | 50.6% | 49.1% |
| 介護支援専門員 | 23.6% | 76.1% |
これらの資料からわかることは、介護事業所では男性介護職よりも女性介護職の人数の方が圧倒的に多いということです。
男性と女性の割合が「1:9」あるいは「2:8」といった介護事業所で、男性介護職が働くことも決して珍しいケースではありません。
介護労働実態調査の概要
| 調査期間 | 公益財団法人 介護労働安定センター |
| 調査目的 | 介護事業所における雇用管理や介護労働の実態および介護労働者の雇用の実態や就業意識などを明らかにする |
| 調査実施期間 | 令和5年10月1日~10月31日 |
| 調査対象 | 全国の介護保険指定介護サービス事業を行う事業所から18,000事業所を無作為抽出にて選定 |
| 有効調査数 | 17,115事業所 |
| 有効回答数 | 9,077事業所 |
| 回収率 | 53.0% |
【体験談】男性介護職が女性の多い職場で働くときに抱える悩みや不安
相葉さん(仮名) 32歳 男性
男性介護職が女性の多い職場で働くとき、どのような悩み・不安を抱えるのでしょうか。取材をもとに3つの体験談を紹介します。
女性管理者の態度や言葉に振り回された
男性介護職が女性の多い職場で働くとき、
「女性職員が何を考えているのか全くわからない」「機嫌が悪くなったりよくなったりするのはどうして?」
と、相手の態度や言葉に振り回されることが起こります。
相葉さんの勤めていた介護事業所の女性管理者は、機嫌のよいときと悪いときで、態度や言葉を大きく変える人だったそうです。
「資料の確認印が押されていないんだけど、なんで押してないの?ねえ、なんで?」や
「アレ(加湿器の水の補充のこと)やってください」とキツく言われたり、パソコンのキーボードを乱暴に叩くなどの態度をとられたりしたことも。
彼女の機嫌が悪いときに、相葉さんが仕事で軽微なミスをすると大声で叱責されたり、近距離で目を睨まれたりしたこともあったそうです。
その結果、女性管理者の態度や言葉が気になったり自分が監視されているように感じたりして、安心して働くことが困難になったと相葉さんはインタビューで話されていました。
周りの職員も、女性管理者の態度が豹変するため、彼女の機嫌を常に気にしていたそうです。
上記の体験談のように、相葉さんは女性の多い職場で、そのときの気分・感情によって大きく態度を変える女性職員と出会うことがありました。
気分や感情によって態度を変える女性職員と一緒に働く場合、その人の態度や言動に振り回されて、男性介護職は仕事へのモチベーションや集中力を保ちにくくなります。
そんな時、相葉さんは利用者さんの介助や送迎業務といった目の前の業務や役割に集中することで、モチベーションを維持していたそうです。
陰口や悪口を聞かされて同調を求められた
女性の多い職場では、陰口や悪口を耳にする機会が増えます。
悪口の主な対象は、その場にいない上長、同僚、後輩です。
彼らの陰口や悪口を聞かされた後に「あなたもそう思わない?」と同調を求められることも少なくありません。
介護現場で働く女性は、男性に比べて人の陰口や悪口を話してストレスを解消しようとする傾向があります。
相葉さんが、自分以外のスタッフは全て女性という事業所で働いていたときのエピソードです。
職場の女性数名が「〇〇(法人のトップ)は私腹を肥やすことしか考えていない」「会社のお金を自分の趣味に流用している」と陰口や悪口を口にしていたそうです。
「あなたもそう思うよね?」「今の話を口にしたらただじゃおかないからね」と同調を求められたり脅されたりもしたこともあるようです。
陰口や悪口を聞かされた結果、施設への不信感が高まり、仕事へのモチベーションに悪影響を感じたと相葉さんはインタビューで話されていました。
相葉さんの場合、女性職員の陰口や悪口が始まったら、「物品のチェックに行ってきます」と言ってその場を離れたり「すみません、用事があるのでお先に失礼します」と帰宅したりして、陰口や悪口を耳にしないことを意識していたそうです。
相葉さんは「聞きたくない話を聞かない方法を考えました。一番角が立たない方法でした」と話されていました。
悪口や陰口を話す人から「あなたもそう思うよね?」と同調を求められても、安易に乗ってはいけません。
他人の陰口や悪口の中には、陰口を話す人の希望や憶測が含まれていて事実がどうか判断できないものがあるからです。
「私もそう思います」と同調した場合、何かのきっかけで悪い噂が広がり、法人や会社におけるあなたの立場が悪くなるおそれもあります。
男性の相談相手が見つからない
女性の多い職場では、信頼できる男性の相談相手が見つかりにくいものです。
引き続き、相葉さんが自分以外のスタッフは全て女性という事業所で働いていたときのエピソードを紹介します。
これまでの経験から、事業所の上司や同僚に相談事はできないと考えていた相葉さん。
その後、相談相手がいない状況が続いたことで、自分の悩みや不満を口にする機会がなくなり、「毎晩お酒を飲むようになる」「酒量が増える」「プライベートでイライラすることが増えた」といった悪循環にはまることになったそうです。
女性の多い職場に強いストレスを感じていた相葉さんは「このままでは潰れてしまう」と職場以外に男性の相談相手を作るように努力したそうです。
気の置けない男性の友人や普段あまり話のしない父親に、思い切って現在の現状や心境を打ち明けました。
その後、信頼できる相談相手が複数できたことにより、職場の不満や辛いことを吐き出せるようになり、上手にガス抜きができるようになったそうです。
同性の信頼できる相談相手がいない場合、男性介護職は孤立感を深めたり不満を自分の内側にため込んだりしやすくなります。
職場の良好な人間関係は、心身を健康に保ち仕事の能率を高めるために大切です。
もしも女性の多い職場で働く機会があるのなら、人間関係の悩みに押しつぶされずに周りと上手にやっていくための対策が必須となります。
男性介護職が女性の多い職場で「悩み過ぎない」ために実行したこと
ここからは、相葉さんが女性の多い職場で「悩み過ぎない」ために実行した3つの方法をお伝えします。
自分の仕事に集中する
女性の多い職場で悩みすぎないために、相葉さんは「利用者さんの介助業務に集中する」と決めて実行したそうです。
たとえば、歩行介助の場面。
相葉さんは、利用者の歩行状態や周囲の障害物に意識を向けて「利用者が安心して移動できること、万が一にも事故を起こさないことを心がけていました」とインタビューで話されていました。
自分の仕事に集中するという取り組みを続けた結果、相葉さんの心境や職場の状況が以下のように変化したそうです。
- 利用者さんの安全・今の気持ちに注意することで、悩む時間が減った
- 利用者さんから喜ばれること、「ありがとう」と言われることが増えて、自分の自信につながった
- 上司や同僚からの評価があがった
気になる女性職員がいると、つい相手の態度や言動のことを考えてしまいますが、それでは自分の仕事がおろそかになるかもしれません。
「今、自分が担当している仕事、やるべきことを考えて一つひとつ行動にうつすことが大切だと思います」と、相葉さんはインタビューで話されていました。
目の前の業務、自分の役割に集中することで、男性介護職は、現在のつらい状況を乗り越えやすくなるようです。
職場の外に男性の相談相手を持つ
「自分の弱音や愚痴を人に聞かせるのは嫌でしたが、1人で抱え込むのは限界でした」と相葉さんは当時の心境を話してくれました。
女性の多い職場で悩んでいた時、相葉さんは、父親、男性の友人、同法人の男性職員に悩みや不安を打ち明けたことで、悩みすぎることを防いだそうです。
悩みや不安を相談した結果、相葉さんの心境は以下のように変化したそうです。
- 話すことで気持ちの整理がついた
- 話を聞いてもらえたことで、孤立感がなくなり安心感を得た
- 客観的なアドバイスをもらえて勇気がわいた
一人ひとりの利用者さんにあった介護サービスを提供するために、介護現場では職員同士の連携も重要だと考えられています。
そんな介護現場で悩みすぎないためには、職場の外に相談相手を持つことも大切な取り組みなのでしょう。
「やっぱり、男性の気持ちを本当に理解してくれるのは男性だと思うんです。身近に相談できる男性がいたら、思い切って相談した方がいいと思います」と相葉さんはインタビューで話されていました。
女性との人間関係で辛い思いをしている時は、男性の相談相手が必要なのかもしれません。
ただ、同じ法人や会社で働く男性に相談する際は、以下の点に注意するとよいかもしれませんね。
- 変な噂が立たないように「職場の外で会う」
- 女性の多い職場では「相談相手の話をしない」
自分だけのストレス解消法を持つ
男性介護職が女性の多い職場で悩み過ぎないために、自分だけのストレス解消法を持つことも効果的なようです。
「ストレス解消法を実行すると、単純に気分がスッキリするんです」と相葉さんは話されていました。
相葉さんが実行したストレス解消法は次のとおりです。
- スポーツジムや自治体が運営する体育館でランニングや筋力トレーニングをする
- 自治体運営のプールで泳ぐ
- 映画鑑賞、漫画や小説を読む
インタビューの途中、インタビュアーが
「どれも1人で実行できることですね」
と相づちをうつと
「僕の場合は1人の活動が多かったと思います。大切なことは自分にあってるかどうかだと思うんです」
と、相葉さんは答えてくれました。
相葉さんが最もストレス解消法になったことは、体を動かすことだったそうです。
たとえば、プールで泳いでいる最中や運動している間は、自分の注意が体の動きや呼吸、周りのこと(ほかに泳いでいる人にぶつからないか、前や後ろに人がいないか)に向かったため、悩みや不安から離れられたそうです。
「仕事の悩みや不安を意識することがなくなり、結果的にストレスを解消できました」と相葉さんは当時の心境を教えてくれました。
もしもこれを読んでいる皆さんの中に、女性の多い職場でストレスを感じている方がいたら、自分だけのストレス解消法を見つけて、仕事の悩み・不安から離れる時間を持ってみてはいかがでしょうか。
男性介護職が女性の多い職場になじむために実践したこと
続いて、男性介護職が女性の多い職場になじむためのヒントを紹介します。
聞き役にまわる
女性の多い職場では、「自分の話を聞いてほしい」「自分の話に共感してほしい」と考える女性が一定数存在するようです。
そうした女性の聞き役になってあげると、職場で必要とされる存在になれるかもしれません。
相葉さんは女性職員の話を聞くときに以下のポイントに注意することで、自然と職場になじめたそうです。
- 相手の話に反対したり批判したりしない
- 聞く・話すの割合を「7:3」にする
- 「そうなんですね」「大変ですね」といった相づちを忘れずに打つ
話の聞き役にまわるためには、自分が話上手である必要はないのかもしれません。
「たとえ、話が苦手な人でも、コミュ障だと自分を評価している人でも、聞き役になることはできると思います。『私でよければ話を聞きますよ』と相手に伝えるだけでも、聞き役にまわることはできるんです」と相葉さんは話されていました。
確かに、自分が人に何かを話したい時に、話の聞き役になってくれる男性がいたら、「話を聞いてくれてありがとう」「おかげですっきりした」とお礼を言いたくなりそうですね。
男性介護職が女性の多い職場になじむ方法として、聞き役にまわることは効果的な方法なのかもしれません。
本音と建前を使い分ける
女性の多い職場では、本音と建前を使い分けることも必要なようです。
「自分の本音を相手にぶつけるより、建前を使ってストレスを感じない場面を自分で作ることも大切だと思うんです」と相葉さんは話されていました。
相葉さんの場合、悪口や陰口が始まったら「物品の補充に行ってきます」とその場を離れたり、終業時間であれば「この後予定があるのでお先に失礼します」と伝えて帰宅したりしていました。
入浴で使用するシャンプーやタオルに欠品がないかチェック・補充するためにその場を離れることで、女性職員の悪口や陰口を避けていたそうです。
「はっきり本音を伝えなくても、『悪口や陰口は嫌なんです』と態度で示し続けました。すると、自分が悪口や陰口が苦手なタイプだって気づいてくれる女性職員も現れました」
本音と建前の「建前」とは、表向きの考えのこと。本音と建て前を使い分けることは、自分がつぶれることなく女性の多い職場になじむ方法としても有効なようです。
挨拶を忘れずにお礼の言葉も伝える
挨拶やお礼は、社会人のマナーですが、女性の多い職場になじむ方法としても効果的なようです。
「重介護の利用者を2人で介助することは現場ではよくあることです。だけど、手伝ってもらうたびにお礼を伝えることで、女性職員に受け入れてもらえるようになりました」
相葉さんが挨拶やお礼の言葉を欠かさずに続けた結果、以下のような変化が起きたそうです。
礼儀正しい人と思ってもらえた
挨拶から、会話が始まることが増えた
自分がサポートしたときにお礼を言ってもらえるようになった
相葉さんが、挨拶やお礼を伝えるときに気をつけたポイントは次のとおりです。
- 自分から先に挨拶する
- 仕事でサポートしてもらったとき、お菓子をもらったときなどにお礼を述べる
「苦手な人に挨拶をするときは、相手の鼻の付け根あたりをボンヤリと見ていました。そうしたら、相手は『目と目を合わせて挨拶している』と感じるし、自分は相手の目を正面から見なくて済みます」と相葉さんは挨拶のコツも話してくれました。
相手の目を見るのが苦手な方や、目も合わせたくないくらい嫌いな方がいる場合は、相葉さんの方法を職場で試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
男性介護職が女性の多い職場で働くときの悩みや不安、それらを解決するためのヒントについて、男性介護職の体験談を交えてお伝えしました。
女性の多い職場で働く男性は、参考にしてください。


