結婚・妊娠・出産で女性介護職が退職する理由|本音を言えない職場の実態

「結婚や妊娠、出産を機に退職する女性介護職の方を何人もみてきました」

そう話すのは、今回インタビューに答えてくれた石田さん(仮名)です。

しかしながら、退職理由が“本当にそれだけ”とは限りません。

石田さんによると、「本音を言うと、会社や上司と揉めるかもしれない」「本音は違うけど、円満に辞める理由はそれしかなかった」と、複雑な胸の内を明かしてくれた女性介護職がいたそうです。

今回は、表には出にくい介護施設の現実を紹介します。

インタビュー対象者
石田さん(仮名) 35歳
特別養護老人ホームなどの介護施設で介護業務に10年従事してきた介護職。リーダー職も経験。

結婚・妊娠・育児をきっかけに退職を選ぶ女性介護職

はじめに、結婚・妊娠を機に退職した2人の女性介護職のエピソードを紹介します。

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正社員への登用を断った「仕事ができる」と評判の女性介護職

1人目は、正社員登用の話を断った女性介護職Aさんのエピソードです。

Aさんは、周囲から仕事ができると評判の介護職でしたが、入職3年目にお付き合いしていた方との結婚を機に退職を決意。

会社へ退職の意向を伝えたところ、正社員登用の話を持ちかけられたそうです。

石田さん
Aさんは、利用者さんへの人当たりも丁寧でやさしく、いつも明るい人柄で現場を盛り上げてくれる貴重な存在でした。管理者や現場リーダーからは高く評価されていて、私も一緒に働いていて楽しいと思える女性介護職でした。

しかし、Aさんは正社員登用の話を断り、退職の道を選びます

石田さん
正社員の話を断った理由は、遠方に移住するかもしれないから、というものでした。彼女の婚約者は運送業で働いており、近い将来転勤になる可能性が高かったそうです。

「私が正社員になっても、転勤で退職することになるかもしれない。そんな迷惑はかけられない」と、私は現場リーダーから退職の理由を教えてもらいました。

そのとき、石田さんは、残念な気持ちと同時に「本当にそれだけが理由なのだろうか」と、どこか引っかかりを覚えたと言います。

妊娠・結婚を機に退職を選んだ女性介護職「子育てをしながら続けられない」

2人目は、妊娠・結婚を機に退職を決めた女性介護職Bさんのエピソードです。

Bさんは、勤続5年目の介護職で周囲からの信頼も厚かったそうです。ある日、妊娠がわかり結婚が決まったことで、退職することを決意されました。

石田さん
Bさんは、小さな仕事でも責任を持って最後までやり通す方で、同僚や上司から頼りにされていました。後輩の育成も任されていましたね。

退職の話を聞いた管理者は、「産休・育休を取得してからでもいい。落ち着いたら戻ってきてね」と彼女を引き留めようとしていました。

しかし、Bさんは産休も育休も取得せずに退職の道を選びます

石田さん
Bさんの場合は、彼女の婚約者から「会社を退職してゆっくり出産に専念してほしい」「生活費は俺が稼ぐから、育児を任せたい」という話があったそうです。

現場で働きたい思いはあるものの、「妊娠と子育て中は、みんなに迷惑がかかる。だから退職しかない」と周囲に話していました。

介護職の女性が退職する背景|続けられない理由と本音を言えない職場の現実

石田さんは、妊娠や出産、育児をきっかけに女性介護職が退職するのは、「続けたいけど辞めるしかないケースなんだ」と考えていたそうです。

しかし、先ほど紹介したAさんとBさんの本音を知ったことで、石田さんは「本音を言うと周囲とトラブルになるかもしれない」と本音を隠したまま退職する女性介護職がいることを知ります。

石田さん
Aさんと2人でゆっくり話す機会がありました。そのときに、彼女が「本当は人間関係が悪いから、この会社を辞めたい」とポロッともらしたんです。

詳しく聞くと、いわゆる“お局”のベテラン女性介護職が、Aさんが休んだときや仕事でミスをしたときに、陰口を言ったり「何回言われたらわかるの?」と必要以上に厳しく指摘したりしたそうです。

彼女は今の職場で働き続けることに苦痛を感じていました…。お局社員のことを上司に相談しても「(彼女たちは)そういう人だから、上手に距離を取って付き合うしかない」と真剣に取り合ってくれなかったそうです。

続けて、石田さんはBさんの退職理由について教えてくれました。

石田さん
退職が決まったあと、仲のよい人たちとBさんで食事に行ったとき、Bさんは「モチベーションが上がらなくて、働くのがつらかった」と話していました。

モチベーションが上がらなかったのは、業務と給料のバランスが原因だったようです。

残業代が支給されなかったり基本給・賞与が(期待以上に)上がらなかったりして、「この職場で頑張り続けても仕方がない…」とむなしさを感じていたようでした。

あと、「本音を言うと、会社と揉めるよね?退職する前にトラブルを起こしたくない」「結婚を機に一回ゆっくりと休みたい」と真剣な表情で話していたことも覚えています。

まとめ|女性介護職が辞めずに続けられる介護業界を

石田さんに話を伺ったことで、表には出てきにくい介護施設のリアルな現場がみえてきました。

退職を選ぶ女性介護職の方の中には、会社や上司に本当の退職理由を伝えられずに、「本音を言わない方が円満に退職できる」と考える方もいるようですね。

最後に、石田さんに今の思いを伺いました。

石田さん
私は、AさんとBさんを引き留められなかったことを後悔しています。大変な現場を協力して乗り切ってきた仲間なので、できれば妊娠や育児が落ち着いたあとでも一緒に働きたかった。

でも、私たちが働いていた介護施設は、きっと彼女たちが心から働き続けたいと思える職場ではなかったんですよね…。

続いて、今後の介護業界や介護施設に期待したいことを伺いました。

石田さん
介護職に魅力を感じて転職してきた方、現場で頑張っている女性介護職の方が働き続けられるように、待遇の向上と人手不足の解消を実現してもらいたいと思います。

介護施設を運営する方や現場管理者の方には、やはり現場の介護職を大切にしてほしいです。待遇面や働きやすさ、それと思いやりのある対応をお願いしたいと思います。

それがあれば、現場で働く人たちは、利用者一人ひとりに向き合いながら明るく働けるんじゃないでしょうか。

厚生労働省が公表している資料によれば、介護職員全体のうち、女性が占める割合は72.4%。訪問介護員に至っては83.0%にものぼります。
参考:厚生労働省|介護人材確保の現状について

女性介護職の人数が多い介護業界。だからこそ、結婚・妊娠・出産といったライフイベントがあっても、安心して働き続けられる環境づくりが求められています。

本音を言えない職場ではなく、本音を言っても大丈夫と思える職場が、少しずつ増えていくことを願っています。

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