現場で働く介護職の方には、肉体的・精神的な負担がのしかかっています。
「最近、仕事がつらい」と感じたり、実際に身体や心のバランスを崩してしまったりする介護職の方も少なくないようです。
中には、「自分の努力が足りないのかも」「自分の性格を直さないと…」と自分を責めてしまう方も。
しかし、介護の仕事がうまくいかないのは、自分だけが原因ではないのかもしれません。
本記事では、同じように悩み、燃え尽き症候群(バーンアウト)を経験した介護職の方の体験談をご紹介します。
自分を必要以上に責めてしまう介護職の方、身近に“メンタルが限界の職員がいる”という現場リーダーもぜひ参考にしてみてください。
吉富さん(仮名)
31歳男性
特別養護老人ホームの介護職時代に燃え尽き症候群(バーンアウト)を経験
目次
燃え尽き症候群(バーンアウト)の理由は「シフト」と「法人の考え方」だった
吉富さんは、ユニット型の特別養護老人ホームの介護職時代に、燃え尽き症候群(バーンアウト)を経験しました。
介護職がつらくなった原因の1つは、過酷なシフトだと思います。
当時、私が所属する特別養護老人ホームのユニットでは、2日連続で夜勤を担当するのが当たり前になっていました。
体力的負担はとても大きかったです。
下記は、吉富さんが勤務していた特別養護老人ホームのシフトです。夜勤明けの日に夜勤が割り当てられています。
| 曜日 | 勤務時間 |
| 月曜日 | 公休 |
| 火曜日 | 早番(7:30~16:30) |
| 水曜日 | 日勤(9:00~18:00) |
| 木曜日 | 夜勤入り(21:00~) |
| 金曜日 | 夜勤明け(~7:00) 夜勤入り(21:00~) |
| 土曜日 | 夜勤明け(~7:00) |
| 日曜日 | 公休 |
吉富さんは、バーンアウトに至ったもう1つの理由に法人の考え方を挙げます。
法人の介護現場に対する考え方も、私にとっては大きな負担でした。
当時、法人で上の立場にいる人たちは、介護事故が発生したユニットを低く評価していました。
たとえば、あるユニットで事故が発生すると、そのユニットに所属する介護職にマイナスの査定をつけていたようです。
すると、現場の介護職は“事故を起こさないこと”に意識が集中するようになります。
スタッフ皆の神経が張り詰めていて、ギスギスした雰囲気になっていました。
「入居者や同僚に会いたくないのはなぜ?…」30代介護職が感じた3つの限界
“ショート夜勤”の続くシフト、介護事故が起きたユニットを低く評価する法人の姿勢。
こうした職場で働く中で、吉富さんの心身には3つの異変が起きたそうです。
入居者の言動に腹が立つ…そんな自分が嫌になる
いつもの勤務中に、転倒リスクが高いのに杖を使わずに歩く入居者さんをみたとき、腹が立って大声で注意しそうになりました。
ぐっとこらえて怒鳴りはしませんでしたが、心の中で「何やってるんだ!転んだらどうするんだ!」と叫んでいました。
吉富さんは、認知症の入居者さんの言動にも腹を立てたことがあると話します。
ある認知症の入居者さんから、「晩御飯のメニューは何?」と繰り返し質問されたときも、イライラしてしまいました…。
「焼き魚ですよ」とおだやかに返そうと思うのですが、内心「何度同じことを言うんだ、うるさいんだよ」と…。
おだやかに対応できない自分が嫌になり、「入居者に会いたくない」「同僚にこんな姿をみられたくない」と思うようになりました。
休んでも疲れが取れない…出勤の朝はいつも憂鬱な気分
あるときから、吉富さんは休んでも疲れが取れなくなったと言います。
休日や連休があっても、休み明けの日は朝から気分が憂鬱で体も重たかったです。
階段を昇ったり長い距離を歩くのもつらくて、自分に何が起こっているんだろうって怖くなりました。
お酒の量も増えてしまいました…。それまで晩酌に飲むビール2本くらい飲むことがありましたが、酔っぱらうまで飲み続けてしまったんです。
もともとお酒は強くない、と話す吉富さん。
ストレスを解消したい思いから、深酒の日が増えてしまい、余計に出勤の朝がつらかったと当時を振り返ってくれました。
「辞めたい…どうしたらいいかわからない」状態からの『休職』
心身の不調がエスカレートしていく中で、吉富さんは以下のような対応を取ってしまい、ひどく落ち込んだそうです。
- 夜間の巡回を飛ばすことがあった
- 入居者のコールを無視した
- 認知症の方の訴えを冷たくあしらってしまった
当時は、「こんなことをしてしまうなら介護職失格だ。」「辞めるべきだろうけど、自分が抜けると周りに迷惑がかかるかも。どうしたらいんだ」と、出口のない迷路に迷い込んだようでした。
ある日の朝、自宅を出ても現場が近くなると足が動かなくなりました。
妻に連絡して、私の代わりに会社に電話してもらい、その日の勤務は休みにしてもらいましたね…。
その後、上司との面談の結果、吉富さんは「休職」となったそうです。
燃え尽き症候群(バーンアウト)に対する周りの反応
燃え尽き症候群とは、「それまで人一倍活発に仕事をしていた人が、なんらかのきっかけで、あたかも燃え尽きるように活力を失ったときに示す心身の疲労症状」のことで、バーンアウトとも呼ばれます。
引用:こころの耳|用語解説
こうした吉富さんの状態を、家族や施設の同僚・上司の方たちは、どのように受け止めたのでしょうか。
妻や両親
私の異変を一番早く察知してくれたのは、妻でした。出勤できなくなった日、最初に職場に連絡を入れてくれたのも妻です。
休職が決まったあと、妻から連絡を受けて状況を知った両親も、時間のあるときに駆けつけてくれました。
妻も両親も、誰一人として私を責めることはなくて、本当にホッとしたことを覚えています。
同僚や上司
同僚の反応はさまざまでしたね。
「あーやっぱりね」という反応をした人もいれば、「大丈夫?無理しないでね」と声をかけてくれた人もいました。
上司は、シフトの調整や担当の引継ぎなどを対応してくれて、そのうえで「人間関係や働き方のことで、つらいことがあったら何でも言ってね」と言ってくれました。
本当にありがたかったです。
介護部長や法人経営者
15分程の短い面談でしたが、「現場にできることはあるか?」「できれば復帰して欲しい。今のユニットがつらいなら、別のユニットに移ってもいい」といった質問や提案をしてくれました。
自分に居場所があるとわかってホッとした半面、迷惑をかけたことに罪悪感を感じていました。
一方で、燃え尽き症候群の原因になった「シフト」については改善されなかったそうです。
ショート夜勤の体力的な負担が大きいと伝えたのですが、「他の介護職もそのシフトで働いている。あなただけ変えるわけにはいかない」「自己努力の範囲だ」と言われました…。
そのセリフを聞いて、もうこれ以上は何を言っても聞き入れてもらえないだろうな、と思いました。
前編のまとめ
職場のストレスから、「なんだかおかしい」「体調がいつもと違う…」と心身に異変を感じ始めた吉富さん。
働きながら体調を立て直すことは難しく、職場を「休職」することになりました。
後編では、吉富さんが立ち直るまでのお話や、「職場に復帰してからどうなったのか」を紹介します。
同じように「最近つらい」「もう限界かもしれない」と感じている介護職の方にとって、この前編が「自分だけではない」と感じるきっかけになれば幸いです。


