病棟で経験を積んできた太田さん(仮名)。
自分の時間も充実させたいという思いから、フリーランスの看護師という働き方を選びました。
一つの職場にとどまらず、人手の足りないところに即戦力として活躍するフリーランス看護師。
今回はその中でも夜勤専従という働き方について太田さんにお話を聞いていきたいと思います。
目次
フリーランス看護師という働き方を選んだ理由
インタビュアー
本日はお時間をいただきありがとうございます。
太田さんはフリーランスで働いていると伺いました。
看護師でフリーランスというのは珍しいように思うのですが、なぜフリーランスになったのですか?
太田さん
そうですね、フリーランスの看護師と言うと驚かれます。
私も今までは病棟や訪問看護で働いてきたのですが、患者さんやご家族に「デイサービスってどんなことをするの?」「施設ってどんなところ?」と聞かれた時に、上手く説明ができなかったことがありました。
もちろん、ざっくりとした概要は説明できるのですが、実際にそういったサービスや施設の利用を検討している患者さんは、もっと具体的な事を知りたがっています。
そのため、フリーランスという働き方に変えて、いろんな現場を経験したい、メリットデメリットも含め、患者さんに情報提供できる引き出しを増やしたいという気持ちから、思い切って転職しました。
夜勤専従という働き方を選んだ理由と実際の業務
インタビュアー
フリーランスという働き方は、思い切った決断でしたね。
今回はその中でも”夜勤専従”という働き方について伺っていきたいと思います。
夜勤専従という働き方は需要が高まっているようですね。
夜勤専従を選んだ理由
太田さん
最近はだんだんと男性看護師も増えてきていますが、やはりまだ女性が多い職種ですので、夜勤専従という働き方の募集も増えてきていると思います。
理由としては、子育て中のママナースが多い病院は、夜勤に入れる日が限られていること、また、自分の年齢や体調面に不安があったり、家族の介護などの生活背景によって夜勤が難しい看護師もいるということが大きな理由だと思います。
インタビュアー
そういった背景があるのですね。太田さんが夜勤専従という働き方を選ばれた理由はなんでしたか?
太田さん
病棟勤務をしていた頃、日勤や夜勤があり、昼間に働いたり夜に働いたりと生活リズムを整えるのが大変でした。
もともと夜型だったため、夜に働く方が得意ということもあり、夜勤専従を選びました。
他に挑戦したいことがあったため、昼間にまとまった時間を確保したかったというのも理由の一つです。
インタビュアー
そうなんですね。確かに昼に働いたり夜に働いたりするよりは、一貫して夜に働く方がリズムがつけやすそうですね。
実際働いてみてどうですか?
太田さん
昼間の時間を自由に使えるようになり、生活の質がぐっと上がりました。自分の趣味の時間や勉強の時間に費やすことができ、毎日充実しています。
思っていたよりも難しかったのは、患者さんの個性の把握です。
夜勤専従は昼間の患者さんの様子を知らず、消灯後は入眠してしまうため、患者さんとゆっくりお話しする時間はとても少ないです。
そのため、しっかりと情報収集が必要だと感じました。
限られた勤務時間での情報収集
インタビュアー
そうですよね、夜だけ看るとなると、患者さんの全体像(患者さんを取り巻く身体的・精神的・社会的側面)の把握が難しそうですね。
そのなかで、太田さんはどのようにして情報を収集したのですか?
太田さん
患者さんが起きている時は、なるべく患者さんに声をかけるようにしています。例えば、ちょっとした世間話から、その方の気持ちや趣味などの話に発展させることで、その方のことを知るきっかけになります。
また、イエス・ノーを聞くクローズドクエスチョンではなく、患者さんが自由に答えられるようなオープンクエスチョンを使うようにしています。
些細な会話から、まずは患者さんとの信頼関係を築くことに気を配っています。
夜勤は看護師2名体制で行うのですが、その日一緒に夜勤をするパートナーの看護師は、日勤もしている常勤スタッフになることがほとんどです。そのため、患者さんのキャラクターや家族背景などは、パートナーのスタッフにも聞くようにしています。
特に家族背景については、患者さん本人からは情報を得ることが難しかったり、触れない方がいいという方もいらっしゃるので、スタッフから情報を得ることが大切になります。
夜勤だけでは得られない情報も多いため、患者さんだけでなく、スタッフとのコミュニケーションをしっかり取ることも必要と感じています。
インタビュアー
なるほど。コミュニケーションスキルも必要になってくるんですね。
夜勤の業務の大変さはどうですか?
夜勤ならではの大変さ
太田さん
夜は昼間のような検査や手術は基本的にはなく、患者さんも眠るため、緊急の場合がなければ落ち着いた業務になることが多いです。
しかし逆に、急変や看取り等があった場合は、少ない人数で迅速に対応する必要があるため、判断力とアセスメント能力が必要だと感じます。
そのためにも、限られた情報の中でも患者さんの性格や家族との関係性などを把握しておく必要があります。
インタビュアー
異常に気付くためにも普段の患者さんのことを知っておく必要があるということですね。
夜は患者が不安になる時間|夜勤看護師の寄り添い方
インタビュアー
他に、太田さんが夜勤専従で働き始めて、患者さんの対応で悩んだことはありますか?
眠れない患者へのケア
太田さん
そうですね。夜はゆっくり休める患者さんばかりではありません。眠れない理由は様々です。
体の調子が悪い、点滴やモニターが気になるといった、身体的な面だけでなく、夜は不安になる患者さんが多いものです。
一言に「不安」と言っても、患者さんの「痛い」「苦しい」などの苦痛症状を増長させることもあります。
また、“家に帰りたい”、“私はこの先どうなるの?”といった気持ちが強くなる患者さんもいらっしゃいます。そういった患者さんのメンタルケアに当たることも多いです。
私の声が届いたと思う瞬間
インタビュアー
なるほど。昼間とは違った患者さんの顔があるんですね。精神的なケアに対して気を付けていることはありますか?
太田さん
不安が強い患者さんには、最初から眠り薬を渡すのではなく、時間が許す時は、まずゆっくりとお話を聞くようにしています。
気持ちを傾聴したり、痛いところを擦ったりするだけで、安心してスッと眠れることもあります。
心と体がつながっているんだなと思う瞬間ですね。そんな時には私もとても安心します。
そして、その事を次の日に日勤者に申し送るのですが、私の次の出勤までに他のスタッフが試行錯誤をし、“夜に眠れるための工夫”などをされていると、その方の“辛さ”にみんなで向き合ってくれたんだなと、本当に嬉しい気持ちになります。
患者さんからも「今日はあなたがいるから安心して眠れるわ」と言ってもらったこともあります。それは夜勤専従ならではの嬉しさです。
夜は眠るのが当たり前のように思われがちですが、人が眠ることにおいて、安心できるということが必要不可欠であることがよく分かります。
インタビュアー
健康な人でも、夜になると気持ちが落ち込んだりすることがありますもんね。病気や障害を持つ方は尚更かもしれませんね。
体への負担との向き合い方
インタビュアー
夜勤ばかりだと、体の負担はありませんか?
生活リズムと体調管理の工夫
太田さん
そうですね、正直、楽な仕事ではないですね。
夜勤専従を始めたばかりの時は、帰宅後に寝すぎてしまい、せっかくの昼間の時間を有効活用できなかったり、生理不順になってしまったこともありました。
女性はホルモンのバランスが崩れやすいということを実感し、それからは自分自身の生活リズムを整えることにも目を向けるようになりました。
夜勤ばかりしていると昼夜逆転の生活になるため、昼間に起きて夜は眠るという規則正しい生活リズムに戻りやすくするために、仕事後の仮眠や睡眠時間の調整したり、運動をすることでストレス発散や眠りやすくするという工夫をしています。
夜勤専従を無理なく続けるために
インタビュアー
夜勤専従を長く続けるために、どんなことが大切だと感じましたか?
太田さん
自分に合ったペースで働くリズムをつくることが、夜勤専従を続ける上でまず大切だと感じています。
夜勤専従はやりがいはある仕事ですが、人が眠っている時間に働くというのは大変な事です。拘束時間も長く、正直なところ長く続けるのは難しいと感じることもあります。
しかし、時間の使い方を上手にすれば、何か目標があって時間を有効に使うためにはいい働き方です。
比較的給与が高いことも魅力の一つですね。
自分の体調管理にも目を向け、無理なく続けることが必要だと思います。
まとめ
看護師という仕事は、女性でもバリバリ働ける仕事として人気がありますが、実際は体にも負担がかかります。
また、女性はライフステージの変化も大きいため、柔軟な働き方が必要です。
そのことを踏まえると、フリーランスの看護師という新しい働き方は、女性が活躍する職場では理にかなった働き方かもしれませんね。


