ポリファーマシーの減薬が進まない…患者の理解を得るための説明と接し方

キャリア&スキル

薬剤師としては、「ポリファーマシーにはもちろん介入すべき」「薬が減れば、服薬が楽になって嬉しいだろう」と考えます。しかし、患者が必ずしも同じように感じているとは限りません。
ポリファーマシーを解消し、安全な薬物療法をおこなっていくためには、患者本人や家族と信頼関係を構築し、理解を得ることも重要です。

今回は、患者の理解を得るために必要な手順やポイントについてご紹介いたします。

ポリファーマシーへの介入を拒否する患者の気持ちとは?

減薬・用量調整などへの介入をためらったり、拒否したりする患者は、たとえば次のような思いを持っているかもしれません。拒否感を持つ患者との場合は、思いを聞き出すところから始めましょう。

・先生の処方に文句を言っては失礼だ
このように思っている方は多いです。実は飲んでいない薬があっても、言えずに処方を受け続けている方もいるということは、薬剤師の皆さんなら実感があるのではないでしょうか?

・薬が増えるにつれ体調が良くなった実感があり、減薬に不安がある
治療の過程で効果を実感できており、全て必要な薬として認識している場合は、減薬に心配があるのも自然なことです。

・たくさんの薬を飲んでいると安心する
薬が増えることに全く抵抗がなく、むしろ安心する、よいと感じる方もいます。

ポリファーマシーに介入する際のステップ

では、実際に患者本人と対話を重ねながらポリファーマシーへ介入していく流れについて、模擬症例を使って解説していきます。

【患者情報】
82歳男性
既往:椎間板ヘルニア、糖尿病、大腿骨頸部骨折
元々ADL自立しており、サービスの利用はなく自宅で過ごしていた。夜に尿意を感じて目が覚め、トイレへ向かったところ、ふらついて転倒し、大腿骨頸部骨折を生じた。
術後、リハビリのため当院に転院してきた。リハビリ期間は2か月程度を予定しており、自宅退院を目指している。
体重64kg、身長168cm
HbA1c:6.2%、CRE:1.18mg/dL、Ccr:43.7mg/min、eGFR:43.76mL/min/1.73m2
【処方例】
・プレガバリン錠75mg
→1日2回 1回1錠 朝夕食後
・デュロキセチンカプセル
→1日1回 1回1カプセル 寝る前
・グリメピリド錠1mg
→1日2回 1回1錠 朝夕食前
・リナグリプチン錠5mg
→1日1回 1回1錠 朝食後
・ダパグリフロジン錠5mg
→1日1回 1回1錠 朝食後
・メトホルミン錠250mg
→1日1回 1回1錠 夕食後
・ゾルピデム錠10mg
→1日1回 1回1錠 寝る前
・セレコキシブ錠100mg
→1日2回 1回1錠 朝夕食後
・レバミピド錠100mg
→1日2回 1回1錠 朝夕食後
・エドキサバン錠15mg
→1日1回 1回1錠 朝食後 ※◯月◯日まで継続
【ポリファーマシー介入のきっかけ】
入院後、理学療法士より午前中の倦怠感やふらつきが気になると報告があった。また、看護師より、朝食前の低血糖が週に3回生じており、糖尿病薬の調整が必要ではないかと指摘があった。そこで医師から薬剤師に、「リスクのある薬剤を整理したいので、いくつか挙げてほしい」と依頼があり、介入することとなった。

処方内容の評価

まずは、患者情報と合わせ、処方内容を評価しましょう。

・腎機能の観点から
腎機能からみて過量な薬剤はありません。セレコキシブとレバミピドは、お薬手帳などの情報から、大腿骨頸部骨折後から開始されているため、疼痛が良くなれば中止可能です。疼痛状況をチェックしながら、適切な時期に中止提案を検討します。

・血糖コントロールの観点から
82歳でADL自立であることから、SU剤を使用する場合でHbA1c 8.0%、使用しない場合でHbA1c7.0%が目標と考えられます。夜間〜朝にかけての低血糖も、転倒リスクとなります。SU剤を中止し、その上で血糖コントロールが悪化するようなら、メトホルミンを1日750mgまで増量することで対応できると思われます。

・転倒リスクの観点から
ゾルピデムは、50歳代の頃から継続的に服用していると聴取した。お薬手帳を遡ると、ゾルピデム錠5mg、1回2錠のいわゆる「倍量処方」が、いつの間にか1回10mgになってしまっているようであった。まずは5mgへ減量し、可能であれば転倒リスクの少ないオレキシン受容体拮抗薬などへ置換していくことが望ましいと考えた。

副作用と思われる症状について患者と一緒に確認する

医療者だけがポリファーマシーを問題視していても、患者からスムーズに理解が得られるとは限りません。まず、どういった症状が薬の副作用と考えられるのか、患者にも理解してもらう必要があります。

・低血糖について

薬剤師:低血糖が何度かあるようですね。ご自宅でもありましたか?
患者:そうですね。なんとなくふわっとするなという時はありました。
薬剤師:低血糖を繰り返していると、自覚症状を感じにくくなってしまうんです。安全のため、血糖値の薬を変更しようか、と先生と話し合っています。
患者:でも、HbA1cは6.5とかそのくらいがいいって昔聞きました。あまり悪くなるのも心配です。
薬剤師:よくご存知ですね。ですが目標値は、ご年齢によって少し変わってくるんです。今ですと、7.0未満が目安になるかなと思います。低血糖のリスクが高い薬は、中止して経過を見てみませんか?
患者:そうなんですね。目標が変わっているということなら、わかりました。

・睡眠薬について

薬剤師:睡眠薬は、ずいぶん昔から飲まれてるんですね。
患者:そうなんだよ。ないと眠れないから、お願いしますね。
薬剤師:最近、夜中や午前中にフラフラする、足に力が入りにくいということはなかったですか?
患者:まあ、午前中は眠気が残ってるかなあ。だから、午前はリハビリも億劫になってしまうね。
薬剤師:もしかしたら、薬の効果が残り過ぎているのかもしれないですね。今使っている睡眠薬は、足の力が入りにくくなる副作用があって、少し量を減らしてみたいと思うのですが、どうでしょうか?
患者:うーん・・・
薬剤師:今は入院してますから、もし効果が足りないとなったら対応もできますし、少しだけ試してみませんか?
患者:まぁ、少しだけなら、試してみてもいいです。
年齢とともに、数値目標が変わることや、生理機能が低下することを理解してもらいましょう。
問題点について、患者自身にも気づいてもらいましょう。

医師とも話し合っていることを伝えたり、医師と一緒に患者と話したりすることも有効です。

同意を得てから減薬を始め、経過をフォローする

患者に薬剤調整について伝え、理解が得られたら、減薬を始め、経過をフォローしていきます。薬剤師もモニタリングのために、定期的に患者面談を実施しましょう。

「低血糖を起こさなくなってきましたね」「よく眠れていますか?」など、スタッフから声かけをおこなうことで、安心感が高まり、また、「成功している」という前向きな気持ちを持つこともできます。

まとめ

今回は、ポリファーマシーの改善を成功させるためのポイントの1つとして、「患者の理解を得ること」について解説しました。
患者の理解が得られなければ、結果として元の処方内容に戻ってしまうこともあります。患者に黙って薬を調整し、もし「調子が悪くなった」となれば、信頼関係が崩れてしまう可能性もあるでしょう。
減薬の際には、あらかじめ説明をしたり、ポジティブな声かけをしたりすることが重要です。今回の記事が、ポリファーマシーに介入する際の参考になれば嬉しく思います。

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