ポリファーマシー対策とは?高齢者における多剤併用のリスクと薬剤師の役割

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高齢化社会の日本では、多くの高齢者が病院へ行き薬局を利用しています。その際に、複数の薬剤を服用することになることで起きる薬物有害事象や服薬ミスなどの問題を引き起こすことがあります。このポリファーマシーが、特に高齢者ではリスクが増加し、処方の連携や患者啓発が必要な現状です。

この記事では、薬剤師が知っていてほしいポリファーマシーの定義や原因、対策について解説していきます。

ポリファーマシーとは?

困った薬剤師のイラスト

ポリファーマシーとは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態であり、何剤からポリファーマシーとするかについての厳密な定義はありません

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」によれば、高齢入院患者で薬剤数と薬物有害事象との関係を解析した報告で、6種類以上で薬物有害事象のリスクは特に増加していました。また、外来患者で薬剤数と転倒の発生を解析した研究では、5種類以上で転倒の発生率が高いことが分かりました。となれば、5、6種類以上でポリファーマシーと定義しても良いかというとそういうわけではありません。

現場では、3種類の薬剤でも問題が生じることもあるため、本質的には患者の病態、生活、環境により適正処方がなされているかが大切になっていきます。

ポリファーマシーが起こる原因とは

高齢者に起きやすい多剤併用のわけ

ポリファーマシーの起こりやすい対象者の多くが高齢者です。

高齢者は、生活習慣病や老年症候群が重複することで、治療薬や症状を緩和するための薬物の処方が増加します。その結果、多剤服用になりやすい傾向があります。

全国の保険薬局における処方調査の結果によれば、75歳以上の約1/4が7種類以上、4割が5種類以上の薬剤を処方されていると報告されています。この背景には、併存疾患の増加だけでなく複数の診療科・医療機関の受診により、処方薬の全体が把握されない問題や重複処方も関係してきます。

そのため、ポリファーマシーを解消するには、医療関係者間の連携や患者啓発が求められていきます。

ポリファーマシーが形成されるしくみ

ポリファーマシーが形成されてしまうのには、2つの理由があります。

1つ目は、患者に新たな病状が加わる度に、新たな医療機関又は診療科を受診してしまうことです。

これによって、医療機関又は診療科を受診するごとに処方される2、3剤の薬剤でも、既存の薬剤に足し算的に服用薬が積み重なってしまいます。これによって、ポリファーマシーとなってしまうことがあります。

2つ目は、新たな病状を薬剤で手当てしていくと、薬物有害事象が生じてしまうことがあります。

それを対処するために、新たな医療機関又は診療科を受診して追加処方された薬剤で対処し続ける「処方カスケード」と呼ばれる悪循環に陥る可能性があります。

このようなポリファーマシーは、かかりつけ医による診療が開始された際に薬剤の処方状況全体を把握すること、又は薬局の一元化などで解消に向かうことが期待されています。

薬剤師がやるべきポリファーマシーを防ぐ対策

すべての薬剤、サプリメントなどの把握と評価を行う

ポリファーマシー対策として最初に行うのが、患者が受診している診療科・医療機関をすべて把握することです。

そこから薬剤師として処方されているあらゆる薬剤、サプリメント等や服薬状況を確認することも必要になっていきます。さらに、患者の罹病疾患や老年症候群などの併存症、高齢者総合機能評価(CGA)の主な構成要素である認知機能や日常生活動作(ADL)、生活環境、患者の薬剤選択嗜好などを評価して、現状を把握していきましょう。

肝機能、腎機能等の生理機能のモニターを行う

肝代謝や腎排泄等の加齢変化に伴う生理機能の低下や薬物有害事象の観察等を行い、投与量の減量や投与間隔の延長など慎重な投与を考慮する必要があります。

ポリファーマシー対策として処方の適正化を行うにあたり大切な指標となりますので、現状の生理機能の把握をしておきましょう。

処方の優先順位と減量・中止を提案する

日頃からポリファーマシーを回避するような処方態度を心がけることが大切です。

しかし、服用回数の減少や配合剤の導入など服薬錠数の減少のような服薬アドヒアランスの改善に注目したものでは、ポリファーマシー対策とは言い難いです。薬物有害事象を回避することを目的とした場合には、併用する予防薬のエビデンスは高齢者でも妥当か検討する必要があります。

また薬物療法以外の手段で賄うことができないかも検討する価値があります。生活習慣の改善を行うことは、高齢者の疾患治療に有用な場合があります。生活習慣病に対する塩分制限や運動療法、適度な運動による夜間の不眠を解消、十分な睡眠がうつ症状の治療に有用となる可能性もあります。

最後に、治療の優先順位に沿った治療方針になっているかを確認し、薬剤ごとに優先順位をつけていくことも大切になります。

ポリファーマシー対策を行う上での注意点

減薬手順はまだマニュアル化されていない

ポリファーマシー対策を実際に行っていく上での注意点があります。それは、現在まで系統的なポリファーマシーの改善のための減薬手順は確立されていないことです。

つまり、マニュアルのようなものは存在しないということです。そのため、機械的に薬剤を減らすことはかえって罹病疾患を悪化させるという報告もあります。

他職種と共に患者と常に向き合いながら少しずつ行う

薬剤を減薬又は中止する場合には、少しずつ慎重に行うなど病状の急激な悪化や有害事象のリスクも高くなることに留意する必要があります。そのため、薬物療法の効果を判定するうえでは、日常生活の変化などの情報を踏まえ、薬剤の変更や代替薬について検討を行うことも有効です。

その後の経過観察として、治療法の変更により対象疾患の増悪が認められないか、過剰な治療効果が出ていないか、また変更した代替薬による有害事象が起きていないかなど、慎重な経過観察が欠かせません。そのため、問題の発生の有無を看護師等の他職種と情報共有し、確認しつつ、適宜処方の適正化を行っていくことが推奨されています。

一般用医薬品等やいわゆる健康食品に関連する有害事象の認知

ポリファーマシー対策は、医師の処方薬だけに注目するものではありません。患者が使用している一般用医薬品等やサプリメントなどの健康食品の把握も大切な要素となります。しかし、一般用医薬品等や健康食品と医療用医薬品の併用に関連した薬物有害事象についての認知が一般には低い現状です。

健康食品は、薬剤との併用により、治療効果に重大な影響を及ぼすことが知られています。また、一般用医薬品等でも、処方薬との重複などの不適切な使用により、薬物有害事象が年間250件前後厚生労働省等に報告されています。

これらの使用状況を把握することは、薬物治療における安全性確保の面で重要でありながら、医療機関を受診しなければ知ることのない状況です。

このため、患者や家族、介護職員などにもポリファーマシーについてのリスクの自覚を促すことが大切です。

まとめ

ポリファーマシーは、多剤併用だけでなく、薬物有害事象や服薬過誤のリスクを伴う状態であることが理解していただけたでしょうか。

薬剤師は患者の全ての薬剤を把握し、個人の生理機能や優先順位を考慮しながら適切な処方を再検討し医師に提案する必要があります。ポリファーマシー対策を円滑に行っていくために、服薬アドヒアランスの改善だけでなく、日々の業務でポリファーマシーを意識して未然に防ぐことが大切になっていきます。

参考: 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

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