高齢者のポリファーマシーを防ぐために:薬剤師が知っておきたい介入ポイントと実践例

キャリア&スキル

高齢者のポリファーマシー対策で、どう対応すべきか悩んだ経験はありませんか?
厚生労働省としても、高齢者の医薬品適正使用の一環として、ポリファーマシー対策についてさまざまな案内を出しています。そうはいっても、何から手をつけてよいのかわからない、という方は多いでしょう。
今回の記事では、高齢者のポリファーマシーに介入する際に気をつけたいポイントや考え方についてご紹介します。ポリファーマシーに介入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

高齢者のポリファーマシーはなぜ改善すべき?

ポリファーマシーは、単に「薬の種類や数が多くて大変」というだけではなく、薬が多いことに伴ってさまざまな悪影響があるということを、改めて確認してみましょう。

薬物有害事象が生じやすい

高齢者は生理機能が低下してくること、併存疾患が複数あることで多剤服用になることなどにより、薬物有害事象が生じやすい状態です。有効かつ安全な薬物療法をおこなっていくためにも、不要な薬剤を服用させない、安全性の低い薬剤を変更するといった工夫が必要になります。
ポリファーマシーとは、単に薬剤数が多いだけでなく、それにより何らかの問題を抱えた状態のことです。薬効が重複している、相互作用のリスクがある、飲みにくいなど、個々の問題をきちんと把握し、薬剤師として的確に介入していきましょう。

アドヒアランスの低下を招きやすい

服用する薬剤の種類や数が多いことは、自己管理の難しさに繋がってしまいます。また、「本当にこんなにたくさん必要なのだろうか」「飲まなくてもよい薬もあるのでは?」といった思いから、自己調節・自己中断に至ってしまうケースも少なくありません。
ポリファーマシーを是正して薬剤を整理するとともに、服薬の必要性を患者に理解してもらうことで、アドヒアランスの向上に寄与することができます。

基礎疾患としてパーキンソン病を持つ高齢男性の例

実際の例を用いて、実際にポリファーマシーを是正する考え方・方法を学んでいきましょう。

【患者背景】
82歳男性。パーキンソン病および糖尿病の治療をおこなっている。腎機能低下がある。元々は別の医療機関で処方を受けていたが、パーキンソン病の進行に伴って複数の医療機関へかかることが難しくなり、数年前より近医でまとめて処方されるようになった。現在、要介護2である。
薬は一包化し家族が管理しているため飲み忘れることはないが、錠剤数が多く飲み込みが大変、嚥下時につかえるような感覚があるという訴えがあり、薬剤整理をおこなうため、医師から相談があった。
身長:172cm 体重:48kg
CRE:1.3mg/dL Ccr:29.74mL/min 標準化eGFR:41.1mL/min/1.73m2 HbA1c:6.4
【処方例】
ドパコール配合錠L100 1回1錠 毎食後
ドパコール配合錠L50 1回1錠 寝る前
ゾニサミド錠25mg 1回1錠 朝食後
ラベプラゾールNa錠5mg 1回1錠 朝食後
酸化マグネシウム錠330mg 1回2錠 毎食後
センノシド錠 1回2錠 寝る前
レパミピド錠100mg 1回1錠 毎食後
モサプリド錠5mg 1回1錠 毎食後
セレコキシブ錠100mg 1回1錠 朝夕食後
メトホルミン錠250mg 1回1錠 朝夕食後
リナグリプチン錠5mg 1回1錠 朝食後
グリメピリド錠1mg 1回1錠 朝夕食前
ダパグリフロジン錠5mg 1回1錠 朝食後
デュロキセチンカプセル20mg 1回1カプセル 寝る前

まずは問題点を確認

まずは、患者が改善したいと思っていることや、医師が問題だと考えていることを確認しましょう。今回のケースでは、患者からの次の訴えの原因を考え、解消できるように考えてみます。

  • 錠剤数が多い
  • 飲み込みにくい
  • 嚥下時につかえる

処方意図・それによる副作用症状や問題点を確認

減薬や変更を考える際には、処方の意図を正しく把握することが大切です。必要な薬を誤って中止してしまえば、健康被害が出る恐れもあります。わからない場合は、処方元をたどり、意図を確認する必要もあるかもしれません。

今回の場合は、患者本人や家族が大まかにこれまでの病歴を理解していたこと、お薬手帳から処方の流れを把握することができたことから、次のように処方意図が確認されました。

①下剤
パーキンソン病を発症してから徐々に便秘が悪化し、順次追加された。種類・錠数ともに多いのが問題と考えられる。(酸化マグネシウム、センノシド、モサプリド)

②糖尿病治療薬
食前の薬があり、服用タイミングが増えている。糖尿病は数年以上は同じ処方がされており、時々低血糖症状もある。

③鎮痛薬
セレコキシブとレバミピドは、数年前に転倒し腰痛があった時に処方が始まった。現在、痛い部位はないようである。

④デュロキセチン
ヘルニアによる神経障害に処方されている。以前プレガバリン75mgを服用したことがあるが、ふらつくためデュロキセチンへ変更になった。現在、痺れはほぼ気にならない。

減薬・変更すべき薬剤をピックアップ

高齢者にとって安全に使用できる薬かどうか、相互作用は問題ないかどうかなどを確認しながら、減薬・変更すべき薬剤をピックアップしていきます。

  • 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
  • Beers Criteria
  • STOPP/START criteria

などの資料が参考になります。

また、高齢者は唾液分泌が低下していることから、カプセルが口内へ張り付いて飲み込みにくくなることが多いです。錠剤の大きさや数だけでなく、剤形による飲みやすさも考慮するとよいでしょう。

①下剤の整理
酸化マグネシウムは、ドパコールとの相互作用により効果が減弱します。また、腎機能低下例では高マグネシウム血症のリスクも高いです。
錠数も1日6錠と多いため、ルビプロストンへの変更を提案します。エロビキシバットやリナクロチドも選択肢ではありますが、服用タイミングが食前であり、ルビプロストンの方が管理は楽でしょう。
第2段階の介入として、ルビプロストンが奏功するようならモサプリドも中止できそうです。

②糖尿病治療薬
低血糖を起こすことがあると聴取したため、リスクの低い薬剤を中心に治療できるよう変更したいです。
現在はHbA1c6.4とかなり厳格にコントロールされていますが、要介護2であり基本的ADLの低下がある状態では、合併症の予防の観点を考慮しても、目標値はHbA1c8.0未満でよいと思われます。
「特に慎重な投与を要する薬物」に分類されるグリメピリドを中止し、血糖コントロールが悪化するようなら、メトホルミンの増量で対応するという提案をしてみます。腎機能から判断すると、メトホルミンは750mg/日まで増量可能です。

③鎮痛薬
セレコキシブは、現在痛みがないことから、不要と考えます。また、ラベプラゾールを服用していますので、レバミピドも中止できるでしょう。NSAIDsは、腎機能低下や消化管出血のリスクが高いため、高齢者には「慎重な投与を要する薬物」に分類されています。もし今後、鎮痛薬を必要とする場合は、アセトアミノフェン400mgを使用するよう提案しておきます。

④デュロキセチン
デュロキセチンを含め、SNRIやSSRI、三環系抗うつ薬などは、「特に慎重な投与を要する薬物」とされています。また、Beers criteriaでは、慎重投与(Ccr30未満は控える)と記載されています。口渇の副作用や、比較的大きなカプセルであることもあり、飲み込みにくさもあるでしょう。
一度休薬し、痺れの状況を確認してもよいかもしれません。痺れがつらいようなら、少量のトラマドール(神経障害性疼痛への効果)やミロガバリンを提案してはいかがでしょうか。

<提案内容>

  • 酸化マグネシウムからルビプロストン12μgへ変更提案(錠数:6→2)
  • グリメピリド中止(錠数:2→0)
  • セレコキシブ、レバミピド中止(錠数:5→0)
  • デュロキセチン中止(錠数:1→0)

合計で、29錠から17錠へ減らし、服用タイミングも全て食後に揃えることができました。一度に全てを変更せず、少しずつおこなっていくと、変更した部分についての評価がおこないやすいです。今回の例では、まずは下剤を調整、その後鎮痛薬を中止、のように段階を踏むことをおすすめします。

フォローアップ

医療者としては「薬を減らせば楽になるだろう」と思っていても、患者側は必ずしもそうではありません。「たくさん飲んでいるから安心」と感じている方もいます。薬を調整した場合は、患者や家族が不安に思わないよう、減薬・変更した理由などをあらかじめ伝え、理解を得ることも大切なステップです。

減薬や中止の提案をした後は、体調に問題がないかどうか、さらなる調整が不要かどうかの確認をしましょう。今回のケースでは、HbA1cの値や低血糖症状、排便状況、痛みや痺れの有無を確認します。必要であれば、さらに薬剤の調整をおこないます。

まとめ

今回は、実際に高齢者のポリファーマシーの例から、介入する際に考えるポイントをお伝えしました。

ポリファーマシーへの介入は、介入前の確認、介入後のフォローと時間のかかるものではありますが、患者の生活の質を向上させたり、安全性を高めたりする、非常に重要な業務です。あまり実践したことがないという方も少なくないでしょう。今回の記事が、ポリファーマシーへ介入するきっかけとなれば幸いです。

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