「なんのために使っている薬なのだろうか?」と、困った経験はありませんか?現在の病態では必要がないにも関わらず、継続されている薬というのは実際多いです。
薬Aの副作用対策のため、実際に症状があるかどうかに関わらず、薬Bをセットで処方するというケースはいくつもあります。こういった組み合わせのことを、今回の記事では「組み合わせ処方」と呼ぶことにし、2パターンご紹介します。
「組み合わせ処方」を把握しておけば、薬剤が不必要に継続されるのを防ぐことができ、ポリファーマシーの是正につながるでしょう。
組み合わせ処方の例①抗がん剤治療
たとえば、次のように処方内容が変わった患者が調剤薬局へ来たとします。
◯◯総合病院消化器内科
ルビプロストンCp24μg 1回1Cp 朝夕食後
ロペラミドCp1mg 1回1Cp 下痢時
プラバスタチンNa錠5mg 1回1錠 朝食後
ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 手、体幹
◯◯総合病院消化器内科
ミノサイクリン錠100mg 1回1錠 朝夕食後
ルビプロストンCp24μg 1回1Cp 朝夕食後
プラバスタチンNa錠5mg 1回1錠 朝食後
ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 手、体幹
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏 10g 爪周囲、体幹
◯◯総合病院消化器内科
ミノサイクリン錠100mg 1回1錠 朝夕食後
ルビプロストンCp24μg 1回1Cp 朝夕食後
プラバスタチンNa錠5mg 1回1錠 朝食後
アジルサルタン錠20mg 1回1錠 朝食後
ミノサイクリンが長期処方されていること、消化器内科から保湿剤やステロイド外用薬が出されていることから、EGFR阻害薬を含んだ抗がん剤治療をしていることを聴取できていればベストです。患者本人から聞くか、最近はマイナ保険証の診療情報から把握できる場合もあります。
本症例では、患者への聴取によって、直腸がんに対してFOLFILI+CET(セツキシマブ) の治療を2回おこなったのち、先月からFOLFOX+Bevへ変更され、本日FOLFOX+Bevの2回目を投与してきたということがわかりました。アバスチンが開始され、血圧が上がってきたため、アジルサルタンが追加されたのです。
ミノサイクリンおよび外用薬は、爪囲炎やざ瘡様皮疹のために処方されていたと推察されます。外用薬の処方がなくなっていたため、患者に確認したところ、皮膚の症状はすっかり良くなったと確認できました。
外用薬はすでに中止されていますが、ミノサイクリンも中止することが可能と思われます。不必要に長く服用していれば耐性菌の発生にも繋がりますので、皮膚障害が改善したのであれば中止を提案しましょう。
組み合わせ処方の例②結核治療
次は、大学病院からリハビリのために転院してきたという想定の患者です。
◯◯大学病院呼吸器内科(前医より持参)
リファンピシンCp250mg 1回3Cp 就寝前
イソニアジド錠100mg 1回2錠 朝食後
ピリドキサール錠10mg 1回1錠 毎食後
カンデサルタン錠2mg 1回2錠 朝食後
メトクロプラミド錠5mg 1回1錠 朝食後・就寝前
※診療情報提供書より
リファンピシン及びイソニアジドは、Y+2月末まで継続してください。
△△病院内科
ピリドキサール錠10mg 1回1錠 毎食後
カンデサルタン錠2mg 1回2錠 朝食後
メトクロプラミド錠5mg 1回1錠 朝食後・就寝前
前医からの指示通り、Y+2月まで内服を継続し、Y+3月からはリファンピシン及びイソニアジドが中止されました。ここで注目したいのは、ピリドキサール錠です。
ピリドキサール錠は、イソニアジド内服に伴ってビタミンB6が欠乏するのを予防するために処方されていたものと考えられます。そのため、現在ビタミンB6欠乏症状(神経障害)がないのであれば、イソニアジドと共に内服終了でよいでしょう。
メトクロプラミドは、リファンピシンによる吐き気のために服用していた可能性があります。患者本人に服用目的を聴取するか、処方された経緯を確認の上、中止の提案ができるかもしれません。
その他の組み合わせ処方の例
今回挙げた2つの例以外にも、組み合わせ処方の例はいくつかあります。
【手足症候群(HFS)に対する予防・治療薬】
フッカピリミジン系製剤やキナーゼ阻害薬による手足症候群の予防や治療には、ヘパリン類似物質、尿素含有軟膏、サリチル酸ワセリンなどが使われます。尿素含有軟膏やサリチル酸ワセリンは、角化した皮膚を柔らかくしHFSには効果的です。しかし、症状のない皮膚に使用を続けると、健康な角層が剥がれ、かえって乾燥を引き起こすことがあります。外用薬も、適切なタイミングで使用しなければなりません。
【高度催吐性化学療法に対する制吐剤】
シスプラチンなど、高度催吐性リスクの化学療法を実施する際に、制吐剤としてオランザピンを最大6日間程度併用します。誤って毎日ずっと服用するという処方をしてしまうことや、既に別のレジメンへ変更し不要になったにも関わらず前回と同様の処方をしてしまうこともあるでしょう。調剤薬局でも、治療中のレジメンを知り、適切なフォローに繋げることが大切です。
【デノスマブによる低カルシウム血症の予防】
骨粗鬆症に対して、デノスマブなどのRANKL阻害剤を使用している場合、低カルシウム血症の予防としてカルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤を併用することが多いです。カルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤はRANKL阻害剤を使用している場合にしか適応がありませんので、骨粗鬆症治療薬が変更になった場合には中止が妥当です。
まとめ
今回は、特定の薬剤に対する副作用の予防や治療に対して別の薬剤を処方することを「組み合わせ処方」と定義し、2つのパターンをご紹介しました。
治療が終了したら、副作用の予防や治療のための薬剤が不必要に継続されないよう、中止を提案しましょう。お薬手帳や診療情報を振り返るにも、限界があります。ポリファーマシーを防ぐには、早く気がつき対応することが重要です。
医師・患者と密に連携をとり、適切な薬物療法をすすめ、患者の安全や医療費の削減に貢献しましょう。
