抗インフルエンザ薬の使い分けと服薬指導|流行期に薬剤師が押さえたいポイント

キャリア&スキル

冬になり、インフルエンザが流行するようになってきました。今年は例年よりも早く、10月末ごろから感染がみられ、すでにインフルエンザ治療薬を調剤・服薬指導した薬剤師の方も多いでしょう。
インフルエンザの流行は、年明けの1月〜2月ごろまで続く見込みです。今回は、インフルエンザ治療薬についての服薬指導のポイントや、治療・予防に関してよくある質問への答え方についてまとめました。
日々の服薬指導の参考になれば幸いです。

インフルエンザの患者への指導で気をつけたいポイント

説明は端的に!

日頃、高血圧や糖尿病など慢性疾患の患者の場合は、コンプライアンス・残薬状況・デバイスの使い方などさまざまな確認や指導が必要になり、面談に時間をかけることもあると思います。

ですが、インフルエンザなど「ご本人(もしくは子どもなど)が今現在、体調が悪い」という状況では、できるだけシンプルな説明で、時間をかけずに服薬指導をすることも重要です。

また、体調不良により指導内容を十分に覚えておけないことも考えられます。たとえば頓服薬であれば「1日3回まで」などの説明をマーカーで強調しておくなど、指導内容が手元にわかりやすく残るような工夫もしてみましょう。

剤型は問題ないか?

種類により、カプセル、散剤、錠剤、吸入と剤型があります。
とくに子どもや高齢者の場合、問題なく服用できる剤型かどうかは、よく確認しましょう。

治療?予防?

抗インフルエンザ薬は、治療と予防(曝露後予防)のどちらにも使用されることがありますが、薬剤によっては用法・用量が異なることもあるため、確認がとても重要になります。
薬剤師としては、

  • 患者の家族内にインフルエンザ陽性者はいるのか?
  • 症状はすでに出ているのか、まだ症状はないのか?
  • 今回の処方目的は「治療」なのか「予防」なのか?

といった状況を確認し、誤った服用スケジュールにならないよう確認する必要があります。
急性疾患では、患者も家族も混乱しがちです。「上の子は予防」「下の子は治療」など、親が治療と予防の両方を管理しなければならないケースもあります。
正しく内服できるよう、的確な指導が重要です。

インフルエンザ治療薬の種類と特徴

オセルタミビル

「タミフル」です。
A型・B型ともに有効で、世界中で多くの使用実績があります。

【用法・用量】

容量
治療 成人 1回75mg、1日2回 5日間
幼小児 2mg/kg/回、1日2回 5日間
※1回75mgを最大量とする
新生児・乳児 3mg/kg/回、1日2回 5日間
予防 成人 1回75mg、1日1回 7〜10日間
幼少児 2mg/kg/回、1日1回 10日間
※1回75mgを最大量とする

小児から高齢者、妊婦まで多くの方に使用できます。

【効果・注意点】
発症後48時間以内の投与で、症状のある期間を約1日短縮します。A型と比較すると、B型はやや効果が弱い可能性があります。
以前は、小児にオセルタミビルを投与すると「異常行動を起こす可能性がある」とされていましたが、現在はインフルエンザに感染したこと自体による影響(せん妄)であると、見解が変わりました。オセルタミビルの服用によって発熱の期間が短くなれば、異常行動のリスクも下がると考えられます。
もし不安の訴えがあった場合は「熱の影響で異常行動を起こす可能性はありますが、タミフルは安全に服用できます」「熱のある期間は、異常行動がないかどうか注意してください」などと回答しましょう。

ラニナミビル

「イナビル」です。

A型・B型のいずれにも使用できますが、とくにB型についてはオセルタミビルと同等の治療効果が得られます。

【用法・用量】

容量
治療 成人 40mg 単回吸入
10歳以上 40mg 単回吸入
10歳未満 20mg 単回吸入
予防 成人 40mg 単回吸入、または1日1回
20mg 2日間吸入
10歳以上 40mg 単回吸入、または1日1回
20mg 2日間吸入
10歳未満 20mg 単回吸入
【効果・注意点】
単回の吸入で済む点は利便性が高いですが、小児では二峰性の発熱(いったん解熱したあと、再度発熱すること)を生じるケースが報告されており、注意が必要です。また、薬の成分によって気道が刺激され、喘息発作が生じる場合があるため、既往をよく確認する必要があるでしょう。
欧米では承認されていないため、オセルタミビルと比較すると使用実績が少ない点はデメリットといえます。

ザナミビル

「リレンザ」です。
A型・B型のインフルエンザに有効ですが、一部の研究ではとくにB型で有効性が高いという報告もあります。

【用法・用量】
成人も小児も、用法・用量は同じです。

治療 1回10mg、1日2回 5日間吸入
予防 1回10mg、1日1回 10日間吸入
【効果・注意点】
B型の場合、ザナミビルの方がオセルタミビルと比較して、発熱持続時間が半日前後短くなるという結果でした。
※参考文献:インフルエンザA型およびB型の治療におけるザナミビルとオセルタミビルの有効性の比較薬の成分によって気道が刺激され、喘息発作が生じる場合があるため、既往をよく確認する必要があるでしょう。

バロキサビル マルボキシル

「ゾフルーザ」です。
ここ数年で登場した新しいタイプの抗インフルエンザ薬で、臨床現場にも浸透しつつあります。

【用法・用量】
バロキサビル マルボキシルは、治療も予防も単回投与です。10kg未満の小児に対しては予防内服の用量設定がされていませんので、注意してください。

年齢 体重 容量
治療 成人、12歳以上の小児 80kg以上 80mg
80kg未満 40mg
12歳未満の小児 40kg以上 40mg
20〜40kg 20mg
10〜20kg 10mg
10kg未満 1mg/kg
予防 成人、12歳以上の小児 80kg以上 80mg
80kg未満 40mg
12歳未満の小児 40kg以上 40mg
20〜40kg 20mg
【効果・注意点】
症状の改善までの中央値が約53.7時間で、プラセボ(約80.2時間)と比べて 1日以上の短縮が期待できます。
また、ウイルス量(ウイルス排出)の低下も早く、服用の翌日にはプラセボやオセルタミビルよりも大きなウイルス減少が確認されているため、同居家族がいて家族内感染を防ぎたい場合によいかもしれません。ただし、ウイルスのタイプによって効果の差がある可能性や、耐性が生じやすいという懸念点があり、慎重な使用が必要です。「ゾフルーザを出してもらいたかったのに、出してもらえなかった」というような訴えがあった場合には、「耐性ができやすく、効果が得られないことがあるので、先生の判断で違う薬にしたのかもしれませんね」などフォローをするとよいでしょう。

インフルエンザの治療に関してよくある質問

よくある質問に対する回答例をまとめました。実際に質問された場合、困らないよう、目を通してみてください。

Q. 治療薬を飲めばすぐに治りますか?隔離期間は短くできますか?

インフルエンザ治療薬は、症状のある期間を1日程度短縮する効果がありますが、「飲んだ瞬間に熱が下がる」「すぐに治る」という薬ではありません。治療薬の服用を始めても、症状改善まで通常1〜2日はかかります。

また、治療薬を使用しても 法律上の出席停止期間(幼稚園や学校)が短くなることはありません。ウイルス排出が完全に止まるわけではないため、解熱後も一定期間は感染リスクが残るためです。

Q. 予防内服はどのくらい効果がありますか?

受験生の子供がいる親御さんなどから、このような質問が多くあると思います。

インフルエンザの感染者と接触したあとの「予防内服」は、発症リスクを大きく下げてくれます。オセルタミビルやラニナミビルなどの抗インフルエンザ薬では、発症を70〜90%程度下げる効果が期待されます。

ただし、予防内服の効果は薬を服用している期間に限られ、接種したワクチンのように長期間の免疫をつけるものではありません。予防内服をしていても、感染者との接触は最小限にし、手洗い・うがい・マスク着用などの感染対策をしっかりすることは重要です。

Q. 治療薬を処方してもらえませんでした。なぜですか?

インフルエンザの治療薬は、必ずしも全員に必要なわけではありません。たとえば、発症から48時間以上と長い時間が経過している場合は、治療薬を使うメリットが見込めないため、処方しないという選択をとることが多いです。
また、持病がなく健康で若い方は、治療薬を使わなくとも肺炎など重症化する危険性が少ないため、不要と判断される場合があります。
薬の副作用や耐性ウイルスの問題から、近年は「必要な人に適切に使う」方針をとる医師が増えてきています。

まとめ

今回は、インフルエンザ治療薬それぞれの特徴や、薬剤師が現場で押さえておきたい指導ポイントを整理しました。
インフルエンザは急性疾患であり、患者の体調や理解力が低下している場合も多いため、説明はシンプルかつ確実に伝えることが大切です。家族内で複数の処方が出ている場合などは、管理する人(親など)の混乱を防ぐために、的確な指導をおこないましょう。

この記事によって、流行シーズンを通じて、薬剤師として適切な情報提供と相談対応につながれば幸いです。

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