回復期・慢性期病院の薬剤師の働き方とは?業務内容・特徴を解説|急性期との違いも紹介

回復期病院薬剤師のイメージ キャリア&スキル
回復期病院薬剤師のイメージ

前回の記事では、急性期病院の薬剤師は、短期間で治療が大きく動く環境のなかで、病棟やチーム医療、中央業務を通してスピード感のある介入が求められることをご紹介しました。

一方、回復期・慢性期病院では、患者の生活機能や療養生活に寄り添いながら、薬物療法を「続けられる形」に整えていく役割が中心になります。

この記事では、回復期・慢性期それぞれの現場で、薬剤師がどのように関わり、どんな力が求められるのかを具体的に整理していきます。

🔖 前回の急性期病院の薬剤師についての記事はこちら

回復期病院の薬剤師の仕事内容と役割

まずは、回復期病院での薬剤師業務の特徴についていくつか挙げていきます。

リハビリによる在宅復帰を支援する

リハビリのイメージ

回復期病院は、命の危険のある急性期は脱したものの、まだ自宅退院や社会復帰は難しいという患者を受け入れる病院です。
そのため、急性期病院よりも回数・時間の多い集中的なリハビリを実施します。

こうした環境では、薬剤師の視点も「病気を治す」だけでなく、「リハビリを進められる状態を整える」方向に広がります。

たとえば、眠気・ふらつき・せん妄・便秘・食欲低下などの副作用は、転倒リスクや訓練量の低下に直結するため、早めの評価と処方調整が重要です。鎮痛薬・睡眠薬・抗精神病薬・抗コリン作用薬などは、ADLや認知機能への影響を意識して、減量や代替提案を検討する場面も少なくありません。

また、嚥下機能の回復段階に合わせた剤形変更(散剤→錠剤、口腔内崩壊錠の活用等)や、服薬回数を減らす工夫(1日3回→1日1回への整理、配合剤の検討等)は、退院後の服薬継続に直結します。回復期では「治療の継続」と「患者の実際の生活」を両立させる調整が、薬剤師の大きな役割になります。

そのため、患者の回復過程を追いながら丁寧に調整を積み重ねたい方、退院後の生活まで見据えて個別の支援を考えるのが好きな方は回復期病院に向いているでしょう。

回復期病院に多い疾患

回復期病院では、リハビリをおこなうというその特性上、次のような疾患の患者が多いです。
疾患ごとにリハビリ期間の上限が定められています。

  • 頭部疾患:脳梗塞や脳出血、脳炎、脳腫瘍など
  • 運動器疾患:下肢や骨盤の骨折、人工関節置換術後、靭帯損傷など
  • 神経、脊髄疾患:多発性神経炎、脊髄炎、神経損傷後、義肢装着訓練を要する状態など
  • 心筋梗塞や狭心症など心大血管疾患やその術後
  • 廃用症候群

場合によってはがん患者が入院するケースもありますが、一般的に積極的ながん治療を目的とした入院は多くありません。

薬の自己管理訓練もある

在宅復帰を支える病院のため、患者ごとに自宅での服薬に近い形で自己管理する訓練をおこなっている病院も多いです。
薬剤師としても、単に一包化をするだけでなく、自己管理できる形への用法・剤型変更、カレンダーへのセット、薬剤指導など、関わるタイミングが多くあります。

患者ごとの理解度に合わせて柔軟な指導ができる方、患者の生活に寄り添って治療を整えたいという方は、やりがいを感じやすいでしょう。

慢性期病院の薬剤師の仕事内容と役割

慢性期病院は、長期療養が必要な患者を支える場であり、病態が大きく変化しにくい一方で、合併症や生活上の課題を抱えた方が多いです。薬剤師の関わりは「安全に続けられる薬物療法を守る」方向性へシフトしていきます。

長期的な視点で療養生活の質を支えるのが、慢性期の特徴です。

経管栄養・嚥下機能低下などによる剤形調整が多い

薬剤師のイメージ

慢性期病院では、口から錠剤やカプセルを服用できない患者が多く入院しています。そのため、個々人にあった服薬ができるよう、粉砕や簡易懸濁などへの対応力、代替薬を考えるベースとなる幅広い知識が必要です。

実際に投薬をする看護師と相談しながら、効果・安全性を担保した上で現場でもやりやすい形に落とし込む調整力が求められます。

製剤の工夫や投与設計が好きな方、現場の困りごとを一つずつ解決していくのが得意な方は慢性期病院でもやりがいを持って働けるのではないでしょうか。

多剤併用の見直しや減薬も必要

多くの基礎疾患を抱える患者は、必然的に薬剤数も多くなりがちです。しかし、慢性期病院では、あらゆる薬剤を在庫しているわけではありません。

そのため、同効薬への置き換えや、投与の必要性の再評価(中止・減量)を含めて、処方を組み立て直す必要が出てくることがあります。

また、長期療養では「漫然投与」になりやすい薬も増えるため、効果判定が曖昧な薬剤、重複処方、相互作用、腎機能に見合わない用量などを定期的に点検し、優先順位をつけて整理することが重要です。

ガイドラインを理解した上で、患者の状態に合った現実的な落としどころを考えるスキルが求められます。

褥瘡管理、感染症管理など慢性期ならではの関わりもある

慢性期病院では、薬剤の追加や変更などが少なく、薬剤師として関わるタイミングがないのでは?と想像している方も多いと思います。ですが、慢性期病院でも、薬剤師としての知識を活かして関わるタイミングは少なくありません。

たとえば、ご自身で体位交換の難しいような患者などは褥瘡が生じやすいです。褥瘡治療では、栄養管理や外用剤・ドレッシング剤の選択など、薬剤師の関わりによって質の向上が見込めます。「褥瘡・創傷専門薬剤師」という資格も作られており、どのような施設で勤務していても取得を目指すことが可能です。

📚資格「褥瘡・創傷専門薬剤師」について
一般社団法人 日本褥瘡学会. 褥瘡・創傷専門薬剤師

また、慢性期病院に入院する患者は、感染症の管理も重要となります。

  • 尿カテーテル、胃瘻、PICCなどのデバイスを使用しているケースが多い
  • 感染を繰り返すことで耐性菌となっていることもある
  • 感染症の専門医がいない環境
  • 自施設で細菌培養をおこなっていない

こういった事情から、薬剤師が抗菌薬の選択、治療期間の確認、必要な検査の提案などをおこなえると、質の高い治療がおこなえます。

多職種と一緒に療養の質を底上げするという、慢性期病院ならではの面白さがあります。

回復期・慢性期病院でもキャリアアップできる?

若い薬剤師さんに多い不安として、「急性期病院でなければ資格取得などのキャリアアップが難しいのでは?」というものがあります。実際のところ、どうなのでしょうか。

研修体制は大病院と比較すると弱い可能性がある

回復期・慢性期病院では、急性期の大病院に比べて、教育担当者の人数や院内勉強会の頻度、チーム活動の種類が限られることがあります。新人・若手の体系的なローテーション研修が整っていない施設もあるため、入職後は「見て覚える」比重が高くなるケースもあるでしょう。

ただし、これは一概にデメリットとは限りません。少人数の現場では、病棟・中央業務・委員会活動などを幅広く担当しやすく、若手にも委員会活動などへの参加のチャンスが回ってきやすいといえます。

「メンター(指導者)」探しに苦労する可能性はある

薬剤師指導のイメージ

回復期病院や慢性期病院では、急性期病院と比較すると、資格取得者の割合が少ないのは事実です。そういった環境で、より専門的な治療介入のアドバイスを受けたり、資格取得のための症例を添削してもらったりするのは、たしかに難しいでしょう。

しかし、自施設に指導者がいない場合でも、指導者を探す方法はあります。たとえば、地域の薬剤師会が主催する勉強会に出席して、目指す資格を取得している薬剤師に直接コンタクトをとり、関係性を作っていくというのが1つの方法です。
施設間で調整ができれば、業務の見学や短期の研修などをセッティングできる場合もあるでしょう。

学会に参加して、他施設の薬剤師と繋がりを持つことも大切です。積極的に他施設の薬剤師と交流を持ち、一緒に勉強する仲間や指導者を探してみましょう。

指導者がいなくても、学会が「症例の書き方」などの講義をおこなっている場合もありますので、チェックしてみてください。

施設要件のない資格も多くある

実際に、特定の施設に勤務経験がなければ取得できない資格もあり、現実的に「目指せない」ものがあることは事実です。
たとえば、医療薬学会の「薬物療法専門薬剤師」を取得するためには、「学会が認定する薬物療法専門薬剤師研修施設での5年以上の研修歴」などが必要とされます。

ですが、資格取得のために施設要件のないものも多いです。興味のある分野の資格の取得要件をよく確認してみましょう。

【単位や試験のみで取得できるもの】
・漢方薬・生薬認定薬剤師
・小児薬物療法認定薬剤師
【症例や学会発表が必要なもの】
・抗菌化学療法認定薬剤師
・老年薬学認定薬剤師
・腎臓病薬物療法認定薬剤師
・褥瘡・創傷専門薬剤師

回復期や慢性期でもキャリアを諦める必要はない!

回復期・慢性期病院で得られる経験は、決して「急性期より価値が低い」というわけではありません。むしろ、生活機能や療養生活を見据えた薬物療法、剤形調整、多剤併用の整理、感染・褥瘡・栄養といった横断的な課題への関与は、薬剤師としての基礎体力を着実に伸ばしてくれます。

研修環境や指導者の面で工夫が必要な場合はありますが、外部研修や学会活動、地域の勉強会を活用すれば、学びの場は十分に確保できます。

大切なのは「自分が患者やその治療に対して、薬剤師としてどのような関わり方をしたいか」です。
病院ごとの役割や、その中での薬剤師の関わり方を理解して、病院選びをおこないましょう。

まとめ

回復期病院では、リハビリを妨げる副作用の評価や剤形調整、服薬自己管理の支援などを通じて、在宅復帰を後押しする役割が薬剤師に求められます。

慢性期病院では、剤形調整や多剤併用の見直し、褥瘡・感染症管理などを通じて、療養生活の質を長期的に支えることが中心です。急性期病院とは異なる視点の介入が多く、薬剤師に求められる役割も異なります。

学び方を工夫すれば、回復期や慢性期病院であっても、キャリア形成が可能です。

今回は、病院の役割ごとに、薬剤師の働き方や求められるスキルをご紹介しました。ご自身の性格や興味に合った働き方をするためのヒントになれば幸いです。

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