「α-GIやSU薬は時代遅れ?」糖尿病治療における現在の位置付けと今なお有効な事例とは

キャリア&スキル

糖尿病治療は、ここ数年で新しい作用機序の薬剤が複数登場したことで、大きく変化しました。選択肢が増えた一方で、患者ごとの状態や併存疾患に応じた「適切な薬剤選択」の重要性も増しています。

薬剤師としては、各薬剤の特徴や使い分けのポイントを把握し、患者の背景に応じたきめ細やかな提案とフォローアップを行うことが求められます。

新薬の登場で治療選択肢は広がりましたが、いわゆる“古い薬”にも今なお活躍の場があります。

本記事では、最新の糖尿病治療についてアップデートをおこなうと共に、各薬剤の特徴や、古くからあるα-グルコシダーゼ阻害薬やSU薬の使いどころについて提示していきます。日々の服薬指導や処方提案に、ぜひお役立てください。

最新の糖尿病治療とは?

糖尿病治療は、ここ数年で新しい作用機序の薬剤が複数登場したことで、大きく変化しました。最新の知識にアップデートし、よりよい薬物治療を提供できるようにしていきましょう。

糖尿病治療の基本ステップ

インスリン分泌が保たれている方の場合、おおむね次のようなステップで治療を進めていくこととなっています。

STEP1. ビグアナイド薬から開始
まずはビグアナイド薬単剤で開始されることが多いです。ビグアナイド薬を処方できない場合は、STEP2から開始します。

STEP2. 1剤上乗せする
①SGLT2阻害薬
②DPP-4阻害薬
③GLP-1受容体作動薬(経口)
のいずれかを上乗せします。

STEP3. さらに1剤上乗せする
上記①〜③のうち、STEP2で上乗せした以外の薬剤をさらに上乗せします。DPP-4阻害薬からGLP-1受容体作動薬への切り替えでもよいでしょう。
①〜③を選びにくい場合は、α-グルコシダーゼ阻害薬やスルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、イメグリミンも検討できます。

STEP4. さらに1剤上乗せする
STEP3までに使用しなかった薬剤をさらに上乗せします。

STEP5. インスリン導入、GLP-1受容体作動薬(注射)も考慮
多剤を併用しても血糖コントロールがつかない場合は、注射薬の導入も検討が必要です。

高齢者の治療のポイント

高齢者の場合、一般の成人患者とは治療目標が異なることに注意が必要です。

患者の状態 ・認知機能正常
かつ
・ADL自立
・軽度認知機能低下〜軽度認知症
または
・手段的ADL低下、基本的ADL自立
・中等度以上の認知症
または
・基本的ADL低下
または
・多くのへ依存疾患や機能障害
低血糖リスクの高い薬剤
(インスリン、α-GI、SU薬など)の使用
なし 7.0%未満 7.0%未満 7.0%未満
あり 65〜74歳:6.5〜7.5%未満
75歳以上:7.0〜8.0%未満
7.0〜8.0%未満 7.5〜8.5%未満

年齢やADL、使用している薬剤の種類に合わせた適切な目標設定をおこなうことで、低血糖のリスクを軽減し、安全性を担保することができます。

【指導・介入のポイント】
目標について正しく認識できているか、確かめましょう。患者の中には、「HbA1cは6台の前半がよい」と若い頃に指導を受けた情報のままでいる方もいます。医療者と患者で認識が違ったままでいると、「数値が良くない」と勘違いし、自己流の食事制限で低血糖になってしまうこともあります。

薬剤ごとの特徴を整理

薬剤の提案をするにあたって、それぞれの特徴を知っておく必要があります。

ビグアナイド薬

年齢を問わず、多くの方に使用できる基本の薬です。以下のようなさまざまな作用があります。

  • 肝臓での糖新生を抑制
  • 食欲の抑制
  • 抹消組織でのインスリン感受性の改善
  • 腸管からの糖吸収を抑制

とくに広く用いられているメトホルミンは、腎機能によって上限量は異なるものの、eGFR≧30の方であれば、基本的には服用すべき薬です。副作用として下痢や吐き気といった腹部症状があること、造影剤使用の前後には休薬が必要となる場合があることに注意しましょう。

SGLT-2阻害薬

心不全、腎不全の治療でもキードラッグとなっている薬です。
心血管疾患、心不全、蛋白尿、肥満などがある場合は、SGLT2阻害薬を早い段階から積極的に使用しましょう。

以下のような方は、SGLT2阻害薬の使用に注意が必要です。

・尿路感染症を繰り返している方
尿路感染の原因となる場合があります。

・痩せている方
体重減少の効果があるため、痩せている方や栄養状態の悪い方には使いにくいです。

・転倒リスクの高い方
SGLT-2阻害薬は、筋肉量を減少させる可能性があり、転倒の独立した危険因子だと報告されています。とくに、GLP-1受容体作動薬との併用はリスクを高めます。

DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬

DPP-4阻害薬は低血糖を起こしにくいことや、食前・食後のいつ服用してもよいという特徴から、高齢者にも使いやすいです。また、腎機能の悪い方にも使用できる種類があり、選択肢も多いのがメリットといえます。
※SU薬との併用で、高齢者や腎機能低下患者は低血糖を起こしやすいので注意しましょう。

DPP-4阻害薬と類似の作用機序を持つGLP-1受容体作動薬は、2剤目〜3剤目などかなり早い段階での開始が推奨されるようになってきました。内服のGLP-1受容体作動薬(セマグルチド)は用法が「起床時」であり、服用タイミングが多くなると管理が難しくなってしまう方には向きませんが、用量調整ができ、非常に効果が高いです。

「糖尿病治療ガイド2024」では、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用はしないと記載されていますので、注意してください。

α-グルコシダーゼ阻害薬

食後高血糖の改善に特化した薬です。小腸のα-グルコシダーゼを阻害して糖の分解・吸収を遅らせるというもので、必ず食直前に服用します。

とくに食後血糖の上昇が目立つ方、早期の2型糖尿病の方、空腹時血糖はさほど高くないものの食後血糖が高い方などに選択されることが多い薬です。

単独での低血糖リスクはさほど高くありませんが、SU薬やSGLT-2阻害薬、インスリンなどとの併用時には低血糖に注意が必要になります。糖尿病治療歴の長い方では、「低血糖のときは、チョコとかアメとか、とにかく甘いものを食べればいい」と認識が甘くなっている場合があります。α-GIを新たに処方された場合には、「低血糖時には必ずブドウ糖で」と改めて指導をおこなうようにしましょう。

スルホニル尿素薬

古くからある薬剤で、膵臓β細胞からのインスリン分泌を直接的に促進する作用があります。主に使われるグリメピリドやグリクラジドは、比較的作用時間が長いため、とくに低血糖には注意が必要です。

SU薬の長期使用で効果が減弱していく「二次無効」について知っておきましょう。長期にわたって高血糖が持続することでβ細胞が疲弊し、インスリン分泌が低下するためと考えられます。

誰にでも気軽に使用するという位置付けの薬ではありませんが、使用する場面を適切に見極めれば、一定の効果が期待できます。
食事や運動療法もおこなえており、肥満ではない方で、インスリン分泌量が少なく血糖値が高い場合などに有効です。

チアゾリジン薬

インスリン抵抗性を改善する薬で、脂肪細胞に作用してインスリンの効きやすい状態を作るのが特徴です。日本ではピオグリタゾンのみ承認されています。1日1回の内服で、食前・食後のどちらでもよいため、使い勝手はよいです。

ただし、次の点には注意しましょう。

  • 水分貯留により、心不全の悪化リスクがある
  • 骨折リスクが増加する(骨折の既往のある方、骨粗鬆症の方は避ける)
  • 肝機能障害のある方は使用しない
  • 食事療法ができない場合、太りやすい

インスリン抵抗性の強い肥満型糖尿病の方で、心機能や骨代謝に問題がない場合には良好な効果が期待できます。

α-GIやSU薬を使うのはどんなとき?

新しい治療薬がどんどん出てきたことで、「α-GIやSU薬を使うのは、時代遅れ」「低血糖リスクがあるから使わない方が良いのでは」と考える方もいるでしょう。
しかし、必要になるケースというのは確実に存在します。必要なケースで、安心して使用できるように、薬剤師がしっかりと指導・フォローアップをすることが大切です。

α-GIやSU薬を使うケースについて、具体例を挙げてみてみましょう。

例①ステロイド使用により血糖コントロールが悪化した場合

代表的な例としては、元々糖尿病の治療をしていた方が、ステロイドの導入によりコントロールが悪化したというパターンです。

【症例】
78歳男性 体重65kg CRE1.06mg/dL eGFR=52.1mL/min/1.73m2
10年来の糖尿病があり、以下の処方内容で治療をおこなっていた。
・メトホルミン錠500mg 1回1錠 毎食後
・リナグリプチン錠5mg 1回1錠 朝食後
・ダパグリフロジン錠5mg 1回1錠 朝食後

リナグリプチンを被疑薬とした水疱性類天疱瘡を発症し、ステロイドパルス療法をおこなったのち、プレドニゾロン1mg/kg/dayでの内服が開始となった。開始後、食前血糖が250以上、眠前血糖が300以上と著明に高血糖を認めた。
はじめは即効型インスリンにより対処していたが、プレドニゾロンも40mg/dayまで減量が進んだことから、退院を見据えて内服でのコントロールを目指し、調整がおこなわれた。

最終的には、被疑薬となったDPP-4阻害薬の使用は避け、以下のような処方内容で血糖コントロールが良好となった。

  • メトホルミン錠500mg 1回1錠 毎食後
  • ダパグリフロジン錠5mg 1回1錠 朝食後
  • グリメピリド錠0.5mg 1回1錠 朝夕食直前
  • デュラグルチド 1日1回皮下投与 毎週土曜

💡治療の基本ステップと照らし合わせると、STEP1(メトホルミン)、STEP2(ダパグリフロジン)はすでに導入されている段階で、STEP3のリナグリプチン(DPP-4阻害薬)の使用を中止。
STEP4として、SU薬を少量上乗せし、DPP-4阻害薬からGLP-1受容体作動薬に変更したという流れです。

【指導・介入のポイント】
今後ステロイドが減量されていく場合は、減量に伴って血糖が低下し、薬剤の調整が必要になる可能性が高いです。レパグリニドのように低血糖リスクの高い薬剤を使用中は、低血糖症状やその対処法についてよく指導しておきましょう。

例②透析患者の場合

透析患者の場合、使用できる血糖降下薬が少なく、α-GIやSU薬、インスリンを使用せざるを得ません。

【症例】
81歳女性 体重38kg CRE7.34mg/dL
毎週月・水・金の午前に透析クリニックへ通院している。血糖コントロール不良のため、薬剤調整目的に入院となった。
処方内容
・沈降炭酸カルシウム錠500mg 1回1錠 毎食直後
・ポリスチレンスルホン酸Caゼリー20%分包25g 1回1個 毎食後
・ドキサゾシン錠2mg 1回1錠 朝食後
・アジルサルタン錠40mg 1回1錠 朝食後
・ニフェジピンCR錠20mg 1回1錠 夕食後
・レパグリニド錠0.25mg 1回2錠 毎食直前
・グリメピリド錠1mg 1回1錠 朝夕食直前
・ビルダグリプチン錠50mg 1回1錠 朝夕食後

【指導・介入のポイント】
α-GIやSU薬の用量が多い場合には、正しく服用できているかをよく確認しましょう。服用方法を間違えているために効果を得られていなかったり、服用していないことを医師に申告していなかったりする場合、薬の用量や種類だけがどんどん増えている、ということがよくあります。

聴取によると、以前低血糖になった経験があるため糖尿病治療薬の服用に不安を感じ、レパグリニド錠とグリメピリド錠を1日1回程度しか服用していない状況であったことが判明した。
さらに、糖尿病性網膜症のため視力低下があり、インスリンの手技獲得は難しい状況であった。施設入所には消極的で、自宅で自己管理することを念頭に薬剤調整がおこなわれた。入院中にデイサービスの手続きをおこない、透析のない火・木・土に通うこととなった。

月〜土曜は透析クリニック及びデイサービスで時効型インスリンの投与をおこなってもらい、日曜・祝日は別居のご家族が投与のために患者宅へ行くことで合意を得た。

時効型インスリンの導入とコンプライアンスの改善で内服血糖降下薬は減量でき、また、本人も低血糖が生じないことで安心を得ることができた。

変更後の処方内容
・沈降炭酸カルシウム錠500mg 1回1錠 毎食直後
・ポリスチレンスルホン酸Caゼリー20%分包25g 1回1個 毎食後
・ドキサゾシン錠2mg 1回1錠 朝食後
・アジルサルタン錠40mg 1回1錠 朝食後
・ニフェジピンCR錠20mg 1回1錠 夕食後
・レパグリニド錠0.25mg 1回1錠 朝夕食直前
・グリメピリド錠0.5mg 1回1錠 夕食直前
・ビルダグリプチン錠50mg 1回1錠 朝夕食後
・インスリングラルギン 1日1回 8単位

まとめ

糖尿病治療薬は進化を続けており、新薬の登場により治療の幅が広がる一方で、既存薬の役割を見直す機会も増えています。

今回の記事で紹介したように、α-GIやSU薬といった古くからある薬剤も、適切な症例であれば今でも有効に活用できます。重要なのは「どの薬を使うか」だけではなく、「なぜその薬を使うのか」「どのようにフォローするか」を丁寧に考えることです。

薬剤師は、薬物治療の最前線に立つ存在として、医師や看護師と連携しながら、患者に寄り添った治療を支える役割を担っています。知識のアップデートを続けつつ、患者ごとに最適な薬物治療が提案できるよう、今回の記事を現場で活かしてもらえればと思います。

タイトルとURLをコピーしました