冬になると、服薬指導カウンターやOTC相談で増えるのが、手足のトラブルです。
「赤く腫れてかゆい」「指先が割れてしみる」 など似た訴えでも、「しもやけ」と「ひび・あかぎれ」では、背景(末梢循環の乱れ/皮膚バリアの破綻)が異なり、提案すべき対処も変わります。
そこで本記事では、現場でそのまま使えるように、3つのポイント(①寒暖差で増悪するか? ②亀裂・出血はあるか? ③水仕事・消毒の頻度は?)で切り分けるコツを整理し、聞き取り結果に応じた薬の選び方までまとめました。
忙しい冬でも迷わず、適切な提案につなげるための実践ガイドとしてお役立てください。
しもやけ(凍瘡)とは:原因と症状の特徴

しもやけのイメージ
しもやけは、寒冷環境による末梢の血行障害が原因で起こる皮膚疾患です。寒暖差の大きい初冬から春先にかけて発症しやすく、血流が低下しやすい手足の指先、耳たぶ、鼻、頬などの末梢部位に好発します。
患部には赤紫色から暗紫色の腫れ(浮腫性紅斑)が生じ、強いかゆみやジンジンとした痛みを伴います。入浴や暖房で急に患部を温めると、かゆみや痛みが増すのも特徴的です。
近年は住環境の改善により発症は減少していますが、子どもから成人まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。
あかぎれ・ひびとは:原因と症状の特徴

あかぎれ・ひび割れのイメージ
あかぎれは、皮膚の乾燥や外的刺激により皮膚バリア機能が低下し、深い亀裂が生じた状態です。特に手指は皮脂分泌が少なく乾燥しやすいため、水仕事や洗剤、アルコール消毒などのダメージを受けやすく、あかぎれが発症しやすい部位といえます。
皮膚の亀裂が浅い場合を「ひび」、赤みや痛み、出血を伴う深い亀裂を「あかぎれ」と呼び分けることがあります。
あかぎれは手指の関節部にできやすく、硬く厚くなった皮膚がぱっくりと裂けて、強い痛みやしみるような感覚を伴います。場合によってはかゆみや軽い腫れが生じることもあります。症状が進むと割れ目から出血し、日常生活で関節を動かすたびに亀裂が広がって治りにくいのも特徴です。
足のかかとに生じる場合もあります。かかとは角質が厚くなりやすく、体重による負荷もかかるため亀裂が深くなりがちです。歩行時に痛みが出て、治癒が遅れる傾向があります。
治療薬の選択

塗り薬を塗る人のイメージ
しもやけとあかぎれは原因が異なるため、状態に合った薬を選ぶことが改善への近道です。ここでは、両者それぞれについて、薬の選び方と使い分けの目安を解説します。
両疾患に有効な薬剤
💊ビタミンE製剤(血流促進:凍瘡/手荒れに適応あり)
ビタミンE(トコフェロール)+ビタミンA油の外用(ユベラ軟膏)は、効能効果として凍瘡と進行性指掌角皮症(手荒れ)が明記されています。皮膚の血行を促進し、皮膚温度を上昇させます。
- 処方薬:トコフェロール・ビタミンA油軟膏(ユベラ軟膏)
- 市販薬:ユースキンAaなど
「あかぎれそのものに直接適応がある」というよりも、手荒れ(進行性指掌角皮症)や凍瘡の治療として使われ、乾燥・角化が背景にあるひび割れの改善を補助します。
💊ヘパリン類似物質:(保湿+血流改善:乾燥手荒れ〜凍瘡まで適応あり)
ヘパリン類似物質外用は、凍瘡や皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症(手荒れ)などに適応を持ち、角質の水分保持を高める作用や血流量増加作用が記載されています。
- 処方薬:ヒルドイドソフト軟膏など
- 市販薬:ヒルマイルドクリームなど
しもやけ:保温・生活対策を土台に、乾燥や血行不良のケアとして併用候補
あかぎれ:亀裂そのものを接着する薬ではないが、乾燥(皮脂欠乏)を改善して亀裂の治り・再発予防を助ける
しもやけ特有の治療
基本対処:軽度であれば、37~40℃程度のぬるま湯で、じんわり温めます。熱すぎる湯や急激な加温は症状を悪化させるため避けましょう。そのうえで、症状(かゆみ・赤み・腫れ)の程度に合った外用薬を併用すると、炎症やかゆみを抑えやすく、改善を早めることが期待されます。
💊刺激血行促進系外用剤
トウガラシチンキを配合した製剤は、皮膚を刺激して局所血流を高めます。
- 市販薬:ベルクリーンSクリームなど
注意:傷がある部位には刺激が強いため使用を控えます。
💊ステロイド外用剤
炎症が強く赤み、腫れ、かゆみがひどい場合に短期間(1週間程度を目安)使用します。
- 処方薬:リンデロンVG軟膏など
- 市販薬:コートf MD軟膏(ウィーク)、フルコートf(ストロング)など
我慢できないかゆみで掻破すると悪化するため、良くならない場合は早めに皮膚科受診を検討します。
💊内服療法(症状に応じて処方されることもある)
- 抗ヒスタミン剤:強いかゆみに対して使用
- 漢方薬:当帰四逆加呉茱萸生姜湯(冷え症改善)
あかぎれ特有の治療
基本対処:保湿と創部保護が基本です。早めに外用薬でケアし、亀裂部に外力や水分が加わらないよう絆創膏などで保護します。皮膚修復成分や保護材などを症状に合わせて併用すると、割れ目への刺激が減り、治りが早まることが期待されます。
💊皮膚修復成分
- アラントイン:細胞増殖を助け肉芽形成を促進
- パンテノール:皮膚細胞を活性化し修復を助ける
市販薬:ヒビケア軟膏b(アラントイン+パンテノール+トコフェロール配合)
💊角質軟化成分
尿素クリーム:角質軟化作用と保湿作用があり、特にかかとなど角質肥厚を伴うひび割れに適しています。
- 処方薬:ケラチナミンコーワクリーム20%など
- 市販薬:ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリームなど
注意:尿素はしみやすいため、亀裂(割れ目)や炎症・ただれがある部位には避け、角質が厚い部位(かかと等)を中心に使用します。しみる場合は中止しましょう。
💊抗炎症・止痒成分
- グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール:炎症を鎮める
- クロタミトン、リドカイン:局所麻酔・鎮痒作用
💊保護材
- 液体絆創膏:コロスキンなど(深い亀裂では刺激が強いため注意)
- ハイドロコロイドパッド:ヒビケアパッドなど、湿潤環境を維持して治癒促進
ステロイド外用剤
亀裂そのものを「塞ぐ薬」ではありませんが、亀裂周囲に湿疹(発赤・腫れ・強いかゆみなどの皮膚炎)がある場合は、皮膚炎の改善を目的に短期間使用します。改善が乏しい場合は漫然と継続せず、原因(刺激・アレルゲン・アトピー素因など)の再評価を行います。使用後も保湿・バリア対策を継続します。
日常でのセルフケアと生活指導のポイント

冷えに対する生活の注意
しもやけとあかぎれは、原因が違うため「避けるべき刺激」も異なります。日常の習慣を整えるだけで症状の悪化を防ぎ、治りを早められることも少なくありません。ここでは、今日から実践できる予防・ケアのコツを整理します。
しもやけ予防と対策
- 寒冷刺激を避ける
何より寒冷刺激を避けることが大切です。冬場は屋内外を問わず防寒対策を徹底し、外出時は手袋、耳当て、厚手の靴下、マフラーなどで末梢を冷やさないようにしましょう。 - 濡れたままにしない
手足を濡れたままにしないことも重要です。水仕事や汗で濡れた後は速やかに水分を拭き取り、濡れた手袋や靴下は交換します。 - 急な温度変化を避ける
急な温度変化は症状を悪化させます。凍えた手足は熱湯やストーブで急激に温めず、ぬるま湯に浸ける、または室温で徐々に温めるなど、ゆっくり保温しましょう。
あかぎれ予防と対策
- こまめな保湿
こまめな保湿と外的刺激の遮断が大切です。手洗いや水仕事の後は必ず水分を拭き取り、すぐにハンドクリームなどで油分と水分を補給します。アルコール消毒の後も同様に保湿しましょう。就寝前には尿素やヘパリン類似物質入りの保湿剤をすり込んで、手袋や靴下を着用する方法も効果的です。 - 水仕事での刺激を避ける
水仕事時にはゴム手袋や、綿手袋とプラスチック手袋の重ね着用などで洗剤や水に直接触れないようにし、皮膚への刺激と脱脂を防ぎます。特に台所洗剤やシャンプーは洗浄力が強く、手指の皮脂を奪う原因となります。手袋の使用や低刺激製品への切り替えを検討しましょう。 - 熱いお湯を避ける
熱すぎるお湯の使用を控えることも重要です。冬場に熱い湯で長時間手を洗うと、皮膚の油分が過剰に落ちて乾燥と亀裂のリスクが高まります。ぬるま湯で短時間にとどめ、洗浄後はすみやかに保湿しましょう。 - 傷のケア
ひびやあかぎれ部分にささくれ状の皮膚がめくれている場合、無理に引きちぎらないよう注意します。清潔なハサミで余分な皮片をカットし、ワセリンなどで覆って保護しましょう。入浴時に患部を湯につけてふやかすと角質が柔らかくなり、不要な角質が除去しやすくなります。かかとの厚い角質は軽石ややすりで優しく削り、その後に尿素クリームを塗るとひび割れ予防に効果的です。
生活上の注意
- 喫煙・飲酒
喫煙は末梢血管を収縮させ、血流を悪化させます。しもやけを治す上でも禁煙や節煙が望ましいです。飲酒も体表からの放熱を促し、体を冷やします。冬場の過度の飲酒は控えましょう。 - 栄養バランス
ビタミンEやビタミンC、コラーゲン合成に関与するタンパク質などをバランスよく摂取し、皮膚の修復力を高めることも心がけましょう。 - 職業的配慮
日常的に手荒れしやすい職業の方(美容師、調理師、医療介護職、主婦など)は、ハンドケアを習慣づけることが何より大切です。肌のバリア機能を常に整えておくことが予防につながります。
受診勧奨の目安
以下のような場合は自己治療の範囲を超える可能性があるため、早めに皮膚科を受診してください。
しもやけで受診が必要な場合
すぐに受診が必要なケース
- 患部が広範囲に及ぶ
- 強い痛みや腫れを伴う
- 大小の水疱や潰瘍がある
- かゆみが強く我慢できず、掻いて浸出液が出る
治療効果が不十分なケース
- ステロイド外用を5〜6日使用しても改善しない、または悪化している場合は使用を中止して受診しましょう
精査が必要なケース
- 寒くもない季節に類似症状が出る
- 毎年同じ部位に繰り返す
これらの場合、膠原病などの可能性を鑑別するため、血液検査などの精査が勧められます。
医療機関では外用薬に加えて内服治療(ビタミンEや漢方処方など)を組み合わせ、全身状態の評価も行います。
あかぎれ・手荒れで受診が必要な場合
基本ケアで改善しないケース
- 基本の保湿ケアを続けても改善しない
- ステロイドを数日塗っても悪化する進行した手湿疹
- 亀裂が深く、出血を伴う状態が長引く
これらの場合、適切な治療(創傷被覆や処置)が必要です。
感染が疑われるケース
- 指先の化膿
- ひび割れ周囲の腫れや熱感
これらは細菌感染を起こしている可能性があり、抗生剤治療が必要になります。
その他の注意が必要なケース
- 糖尿病などで末梢神経障害がある方は、足の小さな傷に痛みを感じにくく悪化しやすいため特に注意が必要です
皮膚科では角質培養や顕微鏡検査で真菌感染を調べたり、必要に応じて血糖コントロールの指導を含めた総合的ケアが行われます。
「たかが手荒れ」と侮らず、痛みで日常生活に支障が出る前に専門家へ相談することが大切です。
まとめ
冬の手足トラブルは、しもやけとひび・あかぎれで原因が異なるため、選ぶ薬も伝える生活指導も変わります。忙しい現場で迷ったときは、次の3点を確認しましょう。
- 寒暖差で症状が増悪するか
- 亀裂や出血があるか
- 水仕事や消毒が多いか
この3点を押さえるだけで、提案の精度はぐっと上がります。
そして、薬は「塗って終わり」ではありません。保温、保湿、刺激回避、保護といったセルフケアをセットで伝えられたとき、改善は早まり、再発も減らせます。「手袋と保湿を続けましょう」「急に温めず、じんわりがコツです」と一言添えるだけで、患者さんの満足度も上がるでしょう。
患者さんが「どれを買えばいいかわからない」「毎年こうなる」と困っているときこそ、薬剤師の聞き取りと提案が頼りになります。今回の記事を参考に、明日からの服薬指導にぜひ活かしてください。
参考:日本臨床皮膚科医会-ひふの病気 凍瘡
:日本臨床皮膚科医会-ひふの病気 手あれ
:日本皮膚科学会雑誌第128巻第3号 手湿疹診療ガイドライン
