オピオイドの使い方を薬剤師向けに解説|在宅医療で押さえたい疼痛コントロールと副作用対策

キャリア&スキル

近年は、在宅医療を専門とする調剤薬局も増えてきました。それに伴い、オピオイド(医療用麻薬)を扱うようになった薬剤師の方も多いでしょう。
皆さんは、オピオイドを使った疼痛コントロールについて、しっかり理解していますか?痛みをコントロールできれば患者のQOLをグッと向上させることができ、自宅で思うような時間を過ごすことも可能です。
オピオイドの使い分け、痛みのある患者と面談する際に確認・説明したいポイント、副作用のマネジメントなど、疼痛コントロールで知っておきたい知識をおさらいしておきましょう。
自信を持ってオピオイド使用患者に関われるよう、参考にしてください。

オピオイドの基本

まずは、オピオイドの基本をおさえておきましょう。

「3段階除痛ラダー」にこだわりすぎない

かつては、「3段階除痛ラダー」の順に、NSAIDs等の非オピオイドから開始し、痛みが抑えられない場合に弱オピオイド、強オピオイドと段階を踏んでいくことが一般的でした。ところが、「WHOがん性疼痛に関するガイドライン」の2018年改訂により、WHO方式三段階除痛ラダーは本文から削除され、あくまで「目安」という位置付けに変更されました。

トラマドールなどの弱オピオイドには、天井効果があります。増量していったとしても、ある程度のところで効果が得られなくなるのです。少量から増量して、効果が乏しいので今日オピオイドに変更して…と段階を踏んでいては疼痛を取り除くまでに時間がかかり、患者のQOLが損なわれたままになってしまいます。

一方、ほとんどの強オピオイドには天井効果がありません。低用量の規格も用意されているため、痛みが強いことが明らかであれば、弱オピオイドの使用をはさまなくとも、安全に強オピオイドを開始することができます。
強い痛みをずっと我慢していた場合、病勢の進行に伴って急激に痛みが強くなった場合などは、はじめから強オピオイドが必要です。痛みの状態を適切に評価し、「強い痛みには強い痛み止め」「痛みの状態に合った鎮痛剤を使う」これが新しいスタンダードだと覚えておきましょう。

鎮痛剤使用の4原則

2018年のガイドライン改訂で「3段階除痛ラダー」が削除されたために、「がん疼痛治療5原則」は「4原則」へと変更されました。

①経口的に
②時刻を決めて規則正しく
③患者ごとの個別な量で
④その上で細かい配慮を
疼痛コントロールにおいては、一人ひとりの状態に合わせて細やかな調整をしていくことが基本です。

オピオイド導入における説明事項

「オピオイドを初めて導入する」というときには、おさえたい指導ポイントがあります。最近は少なくなってきている印象ですが、「麻薬」という言葉に抵抗を感じていたり、漠然とした不安を抱えていたりする方は少なくありません。しっかり説明をおこなって、納得・安心して服用できるようにしましょう。

ポイント①オピオイドの安全性について

もし、患者さんがオピオイドを不安に感じているようであれば、まずは安全に使える薬であることをお伝えしましょう。
患者さんが抱える不安としては、以下のようなものがあります。

・痛みの悪化は病気の悪化なのではないか
・他の人より量が多いということは、私のがんは悪いのだ
・麻薬は死期を早めるのではないか
・依存して、やめられなくなるのではないか

親が使ってすぐ亡くなってしまった、過去にドラマでみたイメージが怖いなど、それぞれ誤解に至ってしまった経緯はさまざまです。不安の原因を探り、一人ひとりに適切な説明をおこないましょう。

たとえば、麻薬中毒になるという不安に対しては、「痛みがある状態の方が、医師の指示に基づいて適切に使用した場合、中毒にはならないですよ」「使ってみて、もしご希望があればやめる方向で調整することもできます」といった説明があると安心できると思います。

死期を早めるという誤解に対しては、「麻薬の使い方が確立していなかった時代は、我慢に我慢を重ねて、いよいよ辛いとなった時に麻薬を使っていた。結果として、死期が近くなって麻薬を始めることとなり、そういった誤解を多くの方が持ってしまった」「今では、痛みがあれば早い段階から使って、痛みをとるだけでなく、やりたいことをやれるようにという考え方になっている」など、これまでの歴史を踏まえた説明がよいかもしれません。

ポイント②副作用の出る時期と対処法について

オピオイドの代表的な副作用として、吐き気・眠気・便秘が挙げられますね。

ですが、吐き気や眠気は、導入時や増量時に一時的に出現する副作用です。「ずっと吐き気が続くんだ」と勘違いしていると、オピオイドを続けることがつらく感じてしまいます。どの時期に副作用が出て、どのような対策をとっていくのか説明することで、安心して服用できるようになるでしょう。

便秘に関しては、服用中には避けられない副作用です。導入の段階からしっかりとお伝えし、患者さんが苦痛に感じないようサポートしてください。

ポイント③目標の共有

患者さんやご家族の方と、疼痛コントロールにおける目標設定をしてみましょう。

たとえば、「今は痛みで夜も眠れないという状況ですから、まずはゆっくり眠れるように痛みを抑えていきましょうね」「椅子に座ってテレビを見たり、食事をしたりが辛くないようにしていきましょう」など、患者さんの状況に応じて、段階を踏んだ目標設定にします。

患者さんやご家族と医療スタッフが同じ目標を共有することが大切です。

ポイント④レスキューの使い方について

レスキューの使い方について、しっかり理解してもらうことが重要です。
患者さんの中には、「痛みがまだあると言ってしまっては、先生の治療が悪いみたいで言いにくい」と感じている方もいます。レスキューの使用を遠慮されてしまうと、痛みの評価が難しくなってしまうため、レスキューについての指導は、薬剤師の腕の見せ所です。

「痛みの程度やタイミングを知るために必要なもので、遠慮する必要は全くありません」「レスキューの回数を、ベースの量を増やす必要あるかどうかの目安にしているので、遠慮なく使っていただいた方が痛みの調整がうまくできます」など、痛ければ使用してよい・使用した方がよいと感じてもらえるような説明をおこないましょう。

疼痛の評価とオピオイドの用量調節

実際にオピオイドを使用し始めたら、疼痛の評価をおこない、用量を調節する必要があります。

疼痛は11段階のNRSで評価する

痛みは、「NRS(Numerical Rating Scale)」を用いて、患者さんに主観的な痛みの強さを評価してもらいます。0が痛みなし、10が考えうる最大の痛みとして、11段階で評価する方法です。

もし、NRSであらわすのが難しい患者さんの場合は、医療者や家族が患者の表情から痛みの強さを判定する「フェイススケール」を使います。

いずれにせよ、統一した痛みの評価方法で、すべての関係者が同じ情報を共有できることが大切です。

痛み日誌を記載してもらう

痛みの強さ、レスキューのタイミングなどを、患者と医療者の間で誤解なく共有するために、痛み日誌を記載してもらいましょう。レスキューの使用は、トイレやシャワー、食事など、行動と結びついていることもあります。レスキューのタイミングがいつも同じなのであれば、予防的にレスキューを服用するということもできますので、使った時間だけでなく、行動も合わせて記載してもらうことをおすすめします。

レスキューを使用した場合には、使用の前後でどのくらい痛みが変化したかを聞くことも大切です。レスキューの量は、ベースの1/8〜1/4程度とされていますが、レスキューの用量が十分かどうかを判断する材料になります。

増量のペースは?

オピオイドを増量しようと思ったとき、「増量しすぎ」に注意が必要です。オピオイドの過量投与は、呼吸抑制など重大な結果になってしまうことがあります。

一般的には、現在のベースの1.2〜1.5倍程度へ増量するという方法がとられます。経口モルヒネ120mg/日以上の用量を使っている場合には、増量幅は少なめにしてください。レスキューの合計量を追加するという方法もありますが、いずれにしても急激な増量には注意が必要です。
フェンタニル貼付剤の場合は、定常状態に至るまでに時間がかかります。ベースアップしてから3日間程度は増量せず、経過を見るようにします。

ベースを増量した場合には、レスキューの増量も忘れずに検討してください。

オピオイドの副作用対策

オピオイドは、強い効果が得られる一方で、副作用が必発の薬です。そのため、副作用対策もしっかりとおこなう必要があります。

吐き気対策

吐き気は全員に生じるわけではありませんが、一時的に制吐剤を併用することも検討しましょう。
導入から1週間程度の使用でよいことが多いです。

オピオイドを導入すると、便秘対策などによって薬剤数が増え、患者の服薬アドヒアランスにも影響しますので、必要以上に制吐剤を継続しないように注意します。

便秘対策

便秘になってしまってからでは解消が難しくなりますので、便秘対策は、オピオイド導入と同時に始めるべきです。
導入前の排便ペースを確認し、そこから悪化がないかどうかを基準にコントロールしていきます。元々1日おきの排便であれば、無理に毎日排便がある状態を目指さなくとも問題はありません。患者さん本人の苦痛感を聞き取り、調整していきましょう。

オピオイドによる便秘は、オピオイドが中枢神経系あるいは腸管粘膜下神経叢に作用して、腸分泌の抑制・腸蠕動運動の低下をきたすことが原因です。どの種類の下剤がよいかについて、はっきりとしたエビデンスはありませんが、複数種類を組み合わせた方がよいと示唆される報告はあります。

ナルデメジンをオピオイド導入と同時に開始し、そのほかに塩類下剤(酸化マグネシウム等)なども便性に合わせて使用できるようにしておくとよいでしょう。酸化マグネシウムは、腎機能が悪い場合には避けるか、用量を少なめに設定します。

まとめ

今回は、オピオイド(医療用麻薬)に関わる薬剤師が知っておきたい、指導のポイントや疼痛評価の方法、副作用のマネジメントなどについて、総合的なまとめの記事を作成しました。
自信を持ってオピオイド使用患者の疼痛コントロールに関われるよう、知識をアップデートしていきましょう。

参考
ペインクリニック学会. 痛みの基礎知識
日本緩和医療学会. がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)

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