CYPによる薬物代謝のメカニズムや相互作用について解説するシリーズ全4回の2回目として、今回は薬剤相互作用・リスク管理・薬剤選択について理解を深めていきたいと思います。
「CYPに関連した相互作用に介入したことがない」「どのくらい影響するのか、自信を持って答えられない」そのような方は、多いのではないでしょうか?
CYPを介した相互作用への介入は、薬剤師として一歩進んだもののように感じているかもしれません。ですが、難しく考えすぎる必要はありません。今回は、相互作用を考えるポイント、リスクの評価方法、相互作用のある組み合わせ例、についてご紹介します。
CYPによる相互作用を考えるポイント
CYPを介した薬物相互作用は、すべてを覚えて回避しなければならないというわけではありません。影響がごくわずかなものについては、減量・代替薬への変更などは不要です。薬効に影響するほどに関連がある薬に限ると、そう多くはありません。
ポイントは、2つです。
ポイント①
代表的なものをしっかり把握しておきましょう。よく使われる薬、使う時は代替が難しい薬などを中心に把握するとよいです。
ポイント②
薬物相互作用への影響の度合いが高いものを知っておきましょう。影響の少ないものまで把握する必要はありません。CYPの強い阻害作用(影響を受けやすい基質のAUCを5倍以上に上昇させる)、中等度の阻害作用(影響を受けやすい基質のAUCを2〜5倍に上昇させる)を持つ薬剤は、基質薬の減量や変更を考慮する必要があるため、注意すべき薬剤として頭に残しておきたいです。
上記の2点を踏まえ、CYPを介した相互作用を持つ代表的な薬剤を以下に挙げます。
・強い阻害薬
ボリコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、セリチニブ
・中等度の阻害薬
エリスロマイシン、フルコナゾール、シプロフロキサシン、イマチニブ、ニロチニブ、ベラパミル、シクロスポリン
トリアゾラム、アルプラゾラム、アトルバスタチン、リバーロキサバン、スボレキサント
・強い阻害薬
パロキセチン、ダコミチニブ
・中等度の阻害薬
デュロキセチン、ミラベグロン、シナカルセト、アビラテロン
メトプロロール、アトモキセチン
・強い阻害薬
フルボキサミン
・中等度の阻害薬
ボリコナゾール、フルコナゾール
オメプラゾール、クロピドグレル、ボリコナゾール
リスク評価をおこなう「PISCS」の考え方
近年になり、基質薬の血中濃度や臨床上のニーズ、重要性を考慮して薬物相互作用を管理するために、 pharmacokinetic interaction significance classification system(PISCS)という方法が活用されるようになってきました。基質薬のクリアランスへの寄与率(CR)、阻害薬の阻害率(IR)、誘導薬によるクリアランスの増加(IC)に基づき、AUCの変化を評価する方法です。
以下の式で、AUCの変化率を計算します。
CYPで代謝される薬剤を、CYP阻害作用のある薬剤と併用する場合には、下記の式でAUCがどの程度上昇するか計算可能です。

CYPで代謝される薬剤を、CYP誘導作用のある薬剤と併用する場合には、下記の式でAUCがどの程度低下するか計算できます。

上記のような方法を用いれば、報告のない組み合わせだとしても、相互作用によるAUCの変化を予測することができます。
たとえば、CYP3Aの基質薬であるシクロスポリンと、CYP3Aの阻害薬であるイトラコナゾールの併用を考えてみましょう。
シクロスポリンのクリアランスへの寄与率は「CRCYP3A = 0.80」、イトラコナゾールのCYP阻害率は「IRCYP3A = 0.95」です。これを、上記の式にあてはめ、AUCの変化率を計算します。
すると、シクロスポリンのAUCは約4.2倍へ上昇すると予測できるというわけです。
相互作用のある組み合わせ例と考え方
では、実際にどのような組み合わせのときに、どのように代替薬を選択すべきかについて、例を挙げて考えてみましょう。
スボレキサント・レンボレキサントとCYP3A阻害薬の併用
たとえば、気管支拡張症などに対してクラリスロマイシンの少量長期投与をおこなっている患者さんに、スボレキサントが処方された場合を考えてみましょう。
スボレキサントとクラリスロマイシンは、添付文書上で禁忌となっています。禁忌なので、計算をしなくてもよいのですが、一旦、次の式を使い、どの程度AUCが変化するのか計算してみます。

スボレキサントのCYP寄与率は添付文書には掲載されていませんが、インタビューフォームを見るとケトコナゾールとの併用でスボレキサントのAUCが179%増加した(つまり全体として279%)という記載があるため、そこから寄与率を計算しましょう。
日本医療薬学会による「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」を参考に、CRやIRを調べました。ケトコナゾールのCYP阻害率は1.0ですから、スボレキサントの寄与率は0.64と計算できます。
クラリスロマイシンの阻害率は0.88のため、併用するとスボレキサントのAUCは約2.3倍になるだとうと予測することができます。
では、スボレキサントの代替薬は何を提案するとよいでしょうか?
類似薬の「レンボレキサント」は、クラリスロマイシンとの併用が添付文書上は禁忌になっていません。レンボレキサントとの相互作用を考えてみます。
インタビューフォームでは、イトラコナゾールと併用することで、レンボレキサントのAUCが270%増加した(つまり全体として370%)と記載されていますので、レンボレキサントのCYP3Aへの寄与率を計算可能です。イトラコナゾールのCYP3A阻害率は0.95ですから、レンボレキサントの寄与率は0.77と計算できます。
そうなると、クラリスロマイシンと併用することでAUCは約2.4倍と予測され、AUCの変化率はスボレキサントとほとんど同等です。添付文書上は禁忌に該当しませんが、影響は大きいことがわかります。AUCが上昇することを踏まえて、2.5mgの少量で服用するのは1つの選択肢ですが、スボレキサントの代替薬に最適とは言えないかもしれません。
CYP3Aに関与しないもので、ガイドライン上も優先的に選択される睡眠薬である「ラメルテオン」などがよいのではないでしょうか?
リファンピシンによる酵素誘導
CYPは、薬剤によって誘導されることもある点に注意が必要です。
酵素誘導をする代表例であるリファンピシンは、CYP3A、2C9、2C19を誘導し、これらにより代謝される薬物の血中濃度を大きく下げてしまいます。中でも、CYP3Aの誘導作用は非常に大きいです。
リファンピシンを使用するのは、どのような治療をするときでしょうか?結核やMAC症が代表的です。また、人工物がある方の黄色ブドウ球菌菌血症で、リファンピシンを上乗せする場合もあります。いずれにせよ、長期間にわたって服用が必要で、かつ、リファンピシンを他の薬剤へ代替することはできないという場合が多いです。
リファンピシンによる酵素誘導は、服用後数日から生じ、投与終了後も数週間にわたって持続すると報告されています。
ですから、リファンピシンが開始される場合には、開始直後から投与終了数週間後まで、影響を受ける薬剤の用量調整をおこないましょう。
以下の式で、酵素誘導によるAUCの残存比を計算することも可能です。

たとえば、リファンピシンとニフェジピンの併用を考えてみましょう。
ニフェジピンのクリアランスへの寄与率は、0.78です。CYP3Aの誘導によるクリアランスの増加(IC)は、リファンピシンで7.7と報告されています。計算すると、AUCの残存比は0.14となり、ニフェジピンの血中濃度が大きく低下することが予測できました。
同じCa拮抗薬であるアムロジピンも、CYP3Aの基質薬です。リファンピシンを使用する間は、CYP3Aを介さない降圧薬であるACE阻害薬やARBを選択するのがよいのではないでしょうか。
まとめ
今回は、CYPを介した相互作用へ実際に介入するにあたって、必要となる考え方を解説しました。
添付文書上で禁忌に該当していない場合でも、禁忌に該当する薬剤と同程度にAUCへ影響する場合もあるため、薬剤師として責任を持って考え、代替薬を提案する必要があります。今回ご紹介した方法で、実際に相互作用のリスクを評価してみましょう。
次回シリーズ3では、リスク評価について理解を深めるとともに、添付文書上の記載との乖離などについて解説したいと思います。
