アドヒアランス不良は治療失敗のもと!薬剤師にできる取り組みとは

服薬指導をしている男性 最新薬剤師ニュース

服薬指導をしている際に「患者があまり治療に前向きになっていない」「服薬の必要性を理解していない」と感じたことはありませんか?
必要性を理解して積極的に治療に向かうこと、アドヒアランスを向上させることが、しっかりと治療効果を出すことにも繋がります。そのために、薬剤師に何ができるでしょうか?
今回は、アドヒアランスについて解説するとともに、アドヒアランス不良による影響・アドヒアランスを向上させるために薬剤師ができることをご紹介します。

アドヒアランスとは?

まず、アドヒアランスについて正しく理解しておきましょう。

アドヒアランスの定義

疾患の治療は、医師が薬を処方して終わりではありません。通院や服薬の継続、生活習慣の改善など、治療の成功には、患者自身の努力が必要不可欠です。

そこで、「アドヒアランス」という考え方ができました。アドヒアランスとは、医師の指示にただ盲目的に従うのではなく、自分自身が疾患や治療内容について理解し、主体的に治療に参加するいう意味です。

コンプライアンスとの違い

アドヒアランスはコンプライアンスと混同されがちですが、別のものです。

コンプライアンスは、「医師の指示通りに服薬ができている」ことを指し、治療に対して、受け身の状態です。以前はコンプライアンスが重視されていましたが、現在は「医療者と患者は対等な関係で、治療方針も患者自身が決めるのだ」という考え方が主流となり、服薬に関しても患者の主体性を重視するようになりました。

今では、コンプライアンスよりもアドヒアランスが重視されるようになっています。

アドヒアランス不良で生じる問題とは?

ここでは、架空の症例を用いて、アドヒアランス不良でどのような問題が起こりうるのか考えていきたいと思います。

【症例】
40歳代男性、糖尿病治療で内科クリニックに4週間ごとに通院していた。
仕事が忙しいと話しており、外来の受診予定日よりも数週間遅れて受診することが多かった。薬が不足しているはずだと考えて何度か服薬状況を尋ねたこともあるが、「きちんと飲んでいる」「飲み忘れはない」と言われ、介入することはできなかった。
血糖コントロールが悪化したため、新規薬剤が追加された。薬剤の説明や服薬状況の確認をおこなおうとするも、「急いでいるから」とあまり熱心に説明を聞いていない様子だった。
その後しばらく経って、受診が途絶えた。数か月ぶりに来局されたとき、処方を見ると内容が大きく変わっていた。事情を聞いてみると、「糖尿病性昏睡で救急搬送され、入院していた」「今まできちんと薬を飲んでいなかったのが悪かった」と話された。

この症例では、アドヒアランス不良によって、どのような影響があったでしょうか?

①治療効果が出にくい

この症例では、予定日を過ぎての受診を繰り返していたことから、薬が不足していたか、きちんと飲んでおらず薬が余っていることなどが推測されます。

服薬していないため、当然、期待するような治療効果は得られません。服薬していない背景には、治療の重要性・必要性を理解できていない、服薬方法が患者の生活スタイルに合っていないなどが考えられます。

②医療費がかさむ

医師には、服薬していないことを伝えていなかったのでしょう。治療効果が不十分のため、医師は新規薬剤を追加しました。

もし服薬をきちんとできていれば、新規薬剤は不要だったかもしれません。症例では、本来なら必要のない薬剤が処方された可能性があり、さらにその薬剤も服用されていなかったと考えられます。患者個人にとっても、国全体にとっても、余分な医療費がかかったといえるでしょう。

③合併症を発症する

症例では、服薬ができていなかったために、糖尿病性昏睡という合併症を起こしてしまいました。糖尿病性昏睡以外にも、糖尿病の治療がきちんとおこなわれないことで、神経障害や失明、腎機能低下なども生じる可能性が高いです。

糖尿病に限らず、高血圧や脂質異常症などの自覚症状がほとんどない疾患は、服薬を続けるモチベーションを保ちにくいといえます。アドヒアランス不良は、将来的な健康も損なってしまうことを、理解してもらう必要がありますね。

れは架空の症例ではありますが、こういったことが実際に起こる可能性も十分にあることから、服薬指導の重要性も再認識できるかと思います。
では、具体的に患者様とどのようなコミュニケーションをとり、アドヒアランスの向上につとめるべきなのでしょうか?次項でポイントを解説していきます!

アドヒアランス向上のための取り組み

患者への情報提供

治療へ前向きになるためには、正しい情報を知ることがまず第一です。

たとえば、糖尿病や高血圧の治療はなぜ必要なのか?しないとどうなるのか?具体的に知っている方はそう多くないです。
治療が始まったときに、パンフレットなどを用いてまとめて情報をお伝えするのもよいでしょう。あまり時間がない方には、薬局で薬をお渡しするたびに、一言ずつ新しい情報をお伝えしてみましょう。

「血糖値を下げる薬、1日1回です」で終わっていませんか?「透析になる原因の第1位が糖尿病ですから、この調子で頑張りましょう」のように一言付け加えることで、アドヒアランスの向上に寄与することができます。

治療効果の共有

検査値や血圧手帳などの数値をみながら、治療効果が出ていることを共有しましょう。

「HbA1cの値がずいぶん下がりましたね」「血圧が安定してきましたね」のように、患者本人の努力が身を結んでいることをフィードバックすることで、モチベーションの維持に繋がります。
治療効果が出ていない場合は、「少しHbA1cが上がっていますね。お正月に食べすぎてしまいましたか?」など、原因を考えるよう促すのも効果的です。

服薬状況・副作用のモニタリング

定期的に通院していたとしても、飲み忘れがあるかもしれません。「昼の薬を家に忘れてしまう」「朝は子供のことでバタバタしていて飲み忘れが多い」など、生活スタイルと関連した理由が多いです。

また、副作用が理由で自己中断される方もいます。実際に副作用が出てやめるというだけでなく、薬の説明書に書いてある副作用が不安になった、雑誌で危険だと書いてあったなどの理由も少なくありません。

「飲んでいない」という事実は、医療者に伝えにくいものです。医師に言い出せずに、飲んでいない薬を延々ともらっていることもあります。「お変わりないですか?」と聞くのもよいですが、「こういう副作用が気になる方もいますが、問題ないですか?」「夜勤もあるのですね。お薬を忘れてしまうなどお困りのことはないですか?」「何か薬のことで支障があれば、先生に相談もできますので教えてくださいね」など、言い出すきっかけになるような声かけをしてみてはいかがでしょうか。

用法の調整などの服薬支援

服薬ができていない原因を取り除くのも、薬剤師の役目です。患者が服薬しやすいように、処方提案できないか考えましょう。

昼食後薬を飲めていないのであれば朝と夕にまとめられないか、副作用で服用できないのであれば代替薬がないか、薬の種類が多くて飲み忘れるのであれば一包化はどうか、処方をシンプルにできないか、など薬剤師ならではの解決法がいくつもあります。

服薬指導で何を意識する?薬剤師が押さえたい基本ポイントを解説
薬剤師の必須業務の1つである服薬指導。実は苦手意識があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそんな不安を抱えている方に向けて、現役薬剤師の方から服薬指導を行ううえで気を付けるべきポイントやコツを教えていただきました。

まとめ

今回は、アドヒアランスとは何か、アドヒアランス不良によってどのような影響があるか、薬剤師としてアドヒアランス向上のために何ができるか、の3点について解説しました。
ちょっとした声かけの工夫で患者のモチベーションや理解度が高まり、アドヒアランスの向上に寄与することができるでしょう。ぜひ、今回ご紹介したコツを実践してみてください。

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