SOAP方式薬歴例:複数のプロブレム(問題)を抱える患者

キャリア&スキル
薬を飲むこと、治療を受けることに対して、前向きになれない方や十分に理解ができていない方は、決して少なくありません。 さまざまなプロブレムを抱える患者と遭遇した時、「何から対応したらいいのか?」など困ってしまったという経験はありませんか?特に高齢患者の場合は、複数の疾病を抱えるケースも多い中で、病識不足や自己判断による服薬の自己調整など、さまざまな問題が見られます。 そこで、シリーズ7回目の本記事では、「複数のプロブレムを抱えた患者」をテーマに、面談や薬歴記載のコツをご紹介していきます。

薬剤師が患者へ介入する意義とは

薬剤師は「薬を渡して終わり」ではありません。薬剤師が対人業務をおこなうメリットは国にも評価され、近年はさまざまな加算も増えてきました。 ここで改めて、薬剤師に求められる患者への介入やその意義について考えてみましょう。
【患者の安全に関わる介入】 ・相互作用の防止 ・副作用の早期発見 ・服薬ミスをなくすためのサポート ・ポリファーマシーの解消による減薬 【医療費の削減に関わる介入】 ・コンプライアンス改善による残薬の削減 ・服薬継続による合併症の予防 ・ポリファーマシーの解消
高齢化に伴い、複数の疾患を抱えた患者、薬の管理が難しくなってくる患者も増えています。また、高齢者は若年者と比較して生理機能の低下によって副作用が出やすいなど、問題も生じやすいです。 薬剤師として患者の服薬のサポートや副作用確認を実施することで、治療効果を最大限に発揮させつつ、安全にも貢献することができます。不要な薬剤を使用しないこと、残薬を減らすことなどは、医療費を削減するためにも重要な関わりです。 さまざまな意義があるということを肝に銘じて、薬剤師として積極的に患者の薬物治療に関わっていきましょう。

ケース:「薬の効果を勘違いし自己調節している」場合の薬歴例

病識がない・薬の効果を勘違いしているために自己調節をおこなっており、服薬コンプライアンスが悪く、治療効果が十分でないというケースを考えてみましょう。

介入初回の面談:プロブレムの発見

【面談例】
薬剤師:今日は、いつもの薬に加えて、こちらの利尿薬「フロセミド」という薬が出ています。先生からは何か聞いていますか?
患者:なんか、体重が増えていたら飲むと聞いたけど、その薬かな。心臓が少し悪くなってる言われたんだ。
薬剤師:そうなのですね。朝の体重が62kg以上だったら1錠飲むという指示になっていますので、体重測定をしてください。体に溜まった水分を出すことで、心臓の負担を減らせます。
患者:そういうことね。それはそうとこっちの薬、血圧ですよね?100錠くらい余ってるから、今回減らせない?
薬剤師:こちらの「ビソプロロール」を、血圧で調整していたのですね。飲んでいて気になる症状がありましたか?
患者:いや、血圧は低くないから、いらないと思ったんだ。薬が多いから減らしたくてね。
薬剤師:減らしていいかどうかは先生に聞いてからになるので、少しお待ちいただけますか。
患者:じゃぁいいや。先生に言ってないから。今回はもらっとくよ。
薬剤師:次回の受診の時に減らしてもらえるように先生に伝えておきますね。このビソプロロールには、心臓の負担を減らしてくれる役割があるので、毎日きちんと飲んでいただきたいです。
患者:へぇ。血圧が心配だけど…まぁ飲むようにします。
このケースでは、以下の2点のプロブレムが挙げられます。 ・薬効の理解不足 ・それに伴うコンプライアンス不良
<ポイント1> 服薬していない場合は、その理由を確認し、薬歴に記載しましょう。薬の効果や使用目的を勘違いしている場合は、再度説明をおこない、理解を得られるようにします。
服用していない理由は、人によりさまざまです。以下のような例を実際に体験した方も多いのではないでしょうか?

・効果が強すぎると感じた ・副作用のような症状があり心配だった ・薬効から自分には必要ない薬だと思った ・雑誌などで危険な薬だと見て不安になった

アプローチの方法が変わってくるため、「服用しない理由」は重要な情報です。 必要に応じて、トレーシングレポートを送付することも検討しましょう。今回の例ではトレーシングレポートの記載例については割愛させていただきますが、ビソプロロールの自己調整の事実や、説明した内容について報告したと想定して、続けていきます。
# 薬効の理解不足によるコンプライアンス不良 S) ビソプロロールは血圧の薬だから、あまり飲んでない。100錠くらい余っている。 O) 【処方内容】 ビソプロロール(0.625) 1回2錠 1日1回朝食後 アルダクトン(25) 1回1錠 1日1回朝食後 ジャディアンス(10) 1回1錠 1日1回朝食後 アトルバスタチン(10) 1回1錠 1日1回朝食後 フロセミド(10)1回1錠 頓服 体重62kg以上あるとき服用 【説明事項】 ・ビソプロロールは脈を抑えて心臓の負担を減らす薬 ・ビソプロロール残薬調整のため医師へ連絡する ・毎朝体重測定してフロセミドを服用するか判断する A) 薬効を勘違いしており、コンプライアンス不良につながっている。トレーシングレポート作成。 P) 次回以降、薬効について全体的な説明、心不全治療の目的などを指導。

フォローアップ面談:プロブレムを1つずつ解消

次の受診で、また患者が来局したシーンを考えてみましょう。
【1か月後の面談例】
薬剤師:前回と同じ内容で処方が出ていますが、余りがあるということで、ビソプロロールは日数が少し調整してあります。
患者:あの薬、先生にもちゃんと飲んでって言われたよ。血圧にはあんまり関係ないからって。
薬剤師:そうですね。血圧への影響はあまりないので、不安になりすぎずに飲んでもらえたらと思います。今日はこちらの資料を用意してみました。
患者:これはなに?
薬剤師:薬が、心臓にどのような効果を持っているかがまとめられた資料です。ビソプロロールは、心臓の脈をおさえて負担を減らします。ジャディアンスは、心臓を守る薬です。アルダクトンは、体に水が溜まらないようにすることで心臓の負担を減らします。色々な作用の薬を組み合わせて、心臓を守っているので、どれもきちんと続けることが大事です。
患者:先生にも、ちゃんと飲まないと薬が増えるって言われたんだよな。大事だってことはわかりました。
薬剤師:副作用などで不安に思うことがあったらいつでも教えてください。
<ポイント2> Pに次回以降の計画を記載します。
指導をおこないたいポイントが複数ある場合でも、1回の面談で1〜2点にポイントを絞って指導をした方が、患者も1つ1つの情報をしっかりと聞くことができます。焦らず、優先順位をつけてじっくり指導をおこなうようにしてみてください。 また、その場合、薬歴の「P」には今後指導が必要と思われる内容を記載しておきましょう。誰が指導を担当しても、必要な情報が引き継がれるように意識します。一度にすべてのプロブレムを解消するのではなく、優先順位をつけて短い時間で端的に指導すると、患者にも伝わりやすいです。
# 薬効の理解不足によるコンプライアンス不良 S) 医師からも飲むよう指導された。大事なことはわかった。 O) 【処方内容】 ビソプロロール(0.625) 1回2錠 1日1回朝食後 アルダクトン(25) 1回1錠 1日1回朝食後 ジャディアンス(10) 1回1錠 1日1回朝食後 アトルバスタチン(10) 1回1錠 1日1回朝食後 フロセミド(10)1回1錠 頓服 体重62kg以上あるとき服用 【説明事項】 ・心不全手帳の資料、ジャディアンスのRMP資材を用いて薬効を説明 A) 薬効について正しい認識を持ってもらえたと思われる。服薬状況確認。 P) 服薬状況確認。心不全治療の目的を指導。
もし、ジャディアンス等の医薬品リスク管理計画(=RMP)のある医薬品が初めて処方された場合、あるいは、保険薬剤師が重点的な服薬指導が必要と認めた場合に、RMP資材を用いて要件を満たす指導をおこなえば、「特定薬剤管理指導加算3」を算定することができます。 RMP提出品目は「こちら」からご確認ください。

まとめ

今回は、複数のプロブレムを抱える患者に対し、どのように対応していけばよいか、面談のコツや薬歴記載のポイントをお伝えしました。 面談により聴取した「プロブレムに直結するような内容」は、薬歴に記載して残しましょう。複数の指導ポイントがあったとしても、焦らず、1回の面談で指導のポイントを絞って伝えるのがおすすめです。また、RMP資材を活用して指導することで、「特定薬剤管理指導加算3」を算定できる場合もあります。新しい加算についてもアンテナを張り、薬剤師として患者に必要なこと、国に求められていることを実践していきましょう。 これまで、7回のシリーズとして、薬歴の記載方法、面談のコツなどをご紹介してきました。皆さんの実務に、何か1つでも役立てられる情報があれば幸いです。
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