前回は、こちらの記事で、添付文書に書かれている内容やその書式、また、添付文書以外に活用できる情報源について解説しました。新人薬剤師の方からは、記事を読んで添付文書やインタビューフォーム(IF)の内容は理解できても、実際の現場でどのように活用すればよいのか迷う…という声も少なくありません。
今回の記事では、実際に患者と面談をしたり、医療スタッフから相談を受けたりする中で生じうる3つのシーンを例示します。調べたいことが出てきたとき、どの情報源を確認するとよいのか、一緒に流れを確認してみましょう。
症例1. 服用タイミングについて質問された場合
起床時、空腹時、食間など、特殊な服用タイミングの薬はいくつかあります。患者にとっては管理が複雑になるため、用法をまとめたい、変更できるなら食後にしたい、などの相談を受けることは多いです。
そんなときは、用法が設定されている理由を調べ、患者の生活リズムの中で飲みやすいタイミングを探してみましょう。
たとえば、エンテカビル錠を例に考えてみます。
ではまず、エンテカビルの添付文書を見てみましょう。
「6. 用法及び用量」には、「空腹時(食後2時間以降かつ次の食事の2時間以上前)」と記載されています。この用法に設定された理由は、「16.2.1 食事の影響」を見てください。「高脂肪食又は軽食とともに傾向投与したとき、吸収はわずかに遅延し、Cmaxは44〜46%、AUCは18〜20%低下した」とあります。
空腹時に投与しなければ、十分な効果が得られない薬だということがわかりました。就寝前以外のタイミングで、服用できそうなタイミングを聴取してみましょう。
添付文書の適切な箇所を素早く確認できるようにしましょう。
また、製薬会社が「製品に関するQ&A」のページを設けていることも多く、そちらでも有益な情報が得られます。たとえば、「グーフィス錠」の製品Q&Aのページでは、以下のようなよくある疑問に回答されています。
- 食前投与の理由は?
- 食後投与や頓服での使用はできますか?
- 食事の影響は受けますか?
- 胆嚢切除患者に対して効果が期待できるか?
- 一包化/粉砕/簡易懸濁できるか?
症例2. 薬剤を不適切な環境で保管した場合
冷所で保管しなければならないなど、薬を保管する環境も、品質を保つためには重要です。
薬局内ではしっかり管理できていたとしても、患者宅や病棟での保管状況が悪ければ、品質をそこなってしまいす。とはいえ、直ちに品質に問題が出るとは限りません。
2例目として、保管方法を間違ってしまった…という場合を考えてみます。
では、一緒にオレンシアの安定性について調べてみましょう。
まず、薬の保管条件については、添付文書の薬剤名の左上に記載があります。オレンシアの場合、「貯法:凍結を避け、2〜8℃で保存」と記載されており、冷所での保管が必要だとわかります。
ですが、添付文書では、これ以上の情報は得られません。さまざまな条件下での安定性を調べたい場合は、IFを見るということを覚えておきましょう。
「6. 製剤の各種条件下における安定性」を確認すると、「30℃、75%RH、暗所、ガラスシリンジ:1週間規格内であった」とあります。室温で暗所であれば、箱から出していたとしても1週間は品質に問題がないということです。
また、「25℃、蛍光灯/紫外線、ガラスシリンジ+紙箱(遮光):4日間規格内であった」「25℃、蛍光灯/紫外線、ガラスシリンジ:4日間純度試験が規格に適合しなかった」とあり、箱から出した状態(遮光されていない条件)では、室温下でも4日間までは品質を維持できないことがわかります。
IFはボリュームが多くあまり読んだことがないという方もいるかもしれませんが、検索機能を使えば速やかに調べることも可能です。ぜひ、日頃からIFも使って調べ物をする習慣をつけてみてください。
症例3. 相互作用について聞かれた場合
薬剤師として業務をしていると、医師や看護師などから、相互作用について聞かれることも多いです。相互作用について調べるシーンを想定し、考えてみましょう。
ではまず、処方内容や患者情報を確認しましょう。
Aさん 64歳、75kg、CRE 0.86mg/dL (Ccr=92.1mL/min)
【処方内容】
エドキサバン60mg 1回1錠 朝食後
ビソプロロール1.25mg 1回1錠 朝食後
エンパグリフロジン10mg 1回1錠 朝食後
アムロジピン2.5mg 1回1錠 朝食後
サクビトリルバルサルタン100mg 1回1錠 朝夕食後
アトルバスタチン10mg 1回1錠 朝食後
ベラパミル40mg 1回1錠 朝昼夕食後
添付文書の「10. 相互作用」の箇所をみると、ベラパミルとの併用で「エドキサバンの血中濃度を上昇させ、出血の危険性を増大させるおそれがある」と記載されています。また、関連する項目として以下のような記載もありました。
- 7.2 ラパミルと併用する場合には、エドキサバン30mgを1日1回傾向投与すること
- 16.7.4 ベラパミル240mg/日とエドキサバン60mgを併用したとき、エドキサバンのCmax及びAUCは、ともに約1.5倍に上昇した
つまり、ベラパミルによってエドキサバンの曝露量が1.5倍に増加した影響で出血をきたしていると考えられ、エドキサバンの減量が推奨されるとわかります。
相互作用の程度などの詳細が記載されていない場合は、IFを確認してみます。また、CYPを介した相互作用の場合、こちらの記事で解説している「PISCS」の考え方をもとに、変化量を計算することも可能です。ぜひ挑戦してみてください。
まとめ
今回は、実際に臨床でよくある3つのシーンを例示して、調べ物をする過程を示してみました。どこに何が書いてあるのか把握できれば、調べ物の速度や質を向上させることができます。
実際にやってみて、慣れていくことが一番の近道です。業務中に疑問に思ったことがあれば1つ1つ調べ、知識だけでなく、調べ方も身につけていきましょう。
