薬剤師として働き始めると、添付文書を見る機会が増えると思います。はじめのうちは、どこに何が書いてあるのか、調べたいときにどこを見たらいいのか、よくわからずに時間がかかってしまうことも多いでしょう。
今回は、薬剤師として調べ物をするときの基本である「添付文書」の役割や記載内容、活用タイミングについて解説します。さらに、添付文書に加えて情報収集に活用できる資料もご紹介しますので、実際の業務の際に参考にしてみてください。
添付文書とは?
添付文書は、薬機法第52条に基づき、用法や用量、取扱条の注意などを記載した「公的文書」です。記載内容、方法などはすべて決まっているため、添付文書はどの医薬品も同じ形式で書かれています。
単なる「薬の説明書」ではなく、薬剤師が薬学的な知識を使って読み解く文書というイメージをしておくとよいのではないでしょうか。何がどこに書かれているか、どのように薬学的なアセスメントをするか、わかっていなければ、うまく活用できません。
添付文書の記載項目
添付文書に記載される内容とその順番(項目の番号)は次のように決められています。
2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
3. 組成・性状
3.1 組成
3.2 製剤の性状
4. 効能又は効果
5. 効能又は効果に関連する注意
6. 用法及び用量
7. 用法及び用量に関連する注意
8. 重要な基本的注意
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.3 肝機能障害患者
9.4 生殖能を有する者
9.5 妊婦
9.6 授乳婦
9.7 小児等
9.8 高齢者
10. 相互作用
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
10.2 併用注意(併用に注意すること)
11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.2 その他の副作用
12. 臨床検査結果に及ぼす影響
13. 過量投与
14. 適用上の注意
15. その他の注意
15.1 臨床使用に基づく情報
15.2 非臨床試験に基づく情報
16. 薬物動態
16.1 血中濃度
16.2 吸収
16.3 分布
16.4 代謝
16.5 排泄
16.6 特定の背景を有する患者
16.7 薬物相互作用
16.8 その他
17. 臨床成績
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.2 製造販売後調査等
17.3 その他
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
19. 有効成分に関する理化学的知見
20. 取扱い上の注意
21. 承認条件
22. 包装
23. 主要文献
24. 文献請求先及び問い合わせ先
25. 保険給付上の注意
26. 製造販売業者等
たとえば、「リベルサス錠」の添付文書をみてください。まず、「1.警告」がありません。「9.特定の背景を有する患者に関する注意」についても、「9.2 腎機能障害患者」「9.3 肝機能障害患者」などの番号が欠番となっています。
各項目の記載内容
各項目のうち、何が書いてあるのかわかりにくい部分や、確認する機会の多いだろう項目について、いくつかピックアップして解説します。
【1.警告】
冒頭に赤字・赤枠で記載されます。致死的な副作用や、重篤で非可逆的な副作用が発現するような薬で、とくに注意喚起が必要な内容について記載される項目です。
たとえば、「オランザピン錠」の場合であれば、著しい血糖上昇による糖尿病性ケトアシドーシス・糖尿病性昏睡などの重篤で致死的な副作用が生じる可能性について記載されています。
【2.禁忌】
使用すべきではない患者の状態(症状、合併症、既往歴など)や、併用すべきではない薬剤について記載される項目です。黒字・赤枠で記載されます。
2019年以前は「原則禁忌」という項目もありましたが、現在はなくなりました。禁忌の理由についての詳細な情報は、インタビューフォームで確認できます。
【8.重要な基本的注意】
重大な副作用や事故を防止するための注意事項が記載されます。副作用予防や早期発見のために必要なモニタリング項目についてや、重篤な副作用が現れた場合の対処法などです。
たとえば「シクロスポリンカプセル」の場合、同一成分の「サンディミュン(内用液・カプセル)」とは生物学的に同等ではなく血中濃度が低下するおそれがあることから、原則として切り替えをおこなってはいけないと記載されています。
【9.5 妊婦】
妊婦は、次の3つの分類で記載されます。独特の言い回しですが、意味合いを理解しておきましょう。
・投与しないこと
ヒトで影響が認められるか、非臨床試験の成績からヒトでの影響が懸念される。
・投与しないことが望ましい
非臨床試験の成績から、ヒトでの影響が懸念されており、妊婦の治療上の有益性を考慮すると、投与が推奨されない。
・治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること
薬理作用・非臨床試験の成績・臨床試験成績などから妊娠、胎児又は出生児への影響が懸念されるが、「投与しないこと」「投与しないことが望ましい」のいずれにも当てはまらない。あるいは、非臨床試験の成績がなく、影響がわからない。
【16.薬物動態】
薬物動態は、薬剤師としてチェックする機会も多いでしょう。
たとえば、「16.2 吸収」の項目は、服用タイミングが特殊な薬(空腹時、起床時)の場合などに、理由を調べるため確認するような項目となります。
投与量や腎機能などによる半減期やAUCの違いなども、表やグラフの形式でこちらに記載されます。
添付文書を見るべきタイミングは?
添付文書の記載内容がおおむねわかったかと思います。それを踏まえ、「こんな時はまず添付文書を見ればよい」という代表的なタイミングをいくつかお伝えします。
- 何に使う薬なのか?
- 用法、用量を確認したい
- 腎機能で調整が必要かどうか知りたい
- 相互作用はあるか?
- どんな副作用があるか?
- 薬物動態について大まかに知りたい
- 1箱に何錠入っているか確認したい
- 添付文書で情報が足りないときは何を見る?
添付文書だけでは、知りたい情報が十分に得られないケースもあります。そういった場合には、次に挙げるような情報源を活用してみてください。
インタビューフォーム
インタビューフォーム(IF)は「添付文書等の情報を補完し,医師・薬剤師等の医療従事者にとって日常業務に必要な、医薬品の品質管理のための情報、処方設計のための情報、調剤のための情報、医薬品の適正使用のための情報、薬学的な患者ケアのための情報等が集約された総合的な個別の医薬品解説書として、日病薬が記載要領を策定し、薬剤師等のために当該医薬品の製造販売又は販売に携わる企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付けられています。
添付文書では不十分な情報を補い、臨床現場のさまざまなシーンで薬学的な評価をおこなう助けとなる資料ということです。
IFも添付文書と同様に、記載要領によって内容が定められており、以下のような内容を確認することができます。
- 臨床成績
- 非臨床試験に関する情報
- 製剤学的特性
- 用法用量及び関連する注意点
- 薬物動態
- 相互作用に関する詳細なデータ
- 薬剤師として何らかの観点で医薬品を評価したいと考えたときは、IFをみてみましょう。
【IFを見るべきタイミング】
- 粉砕しても大丈夫?
- 相互作用の程度はどのくらい?
- 溶解後は何時間まで使用できる?
- 他剤との配合変化はどうだろう?
CYPを介した相互作用の考え方とIFの活用法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。一歩進んだ相互作用のアセスメントをしたい方は、ぜひ取り組んでみてください。
緊急安全性情報、安全性速報
緊急安全性情報は「イエローレター」、安全性速報は「ブルーレター」とも呼ばれています。呼び名は、それぞれの用紙の背景色に由来します。厚生労働省の指示に基づいて、製薬会社が配布するものです。
それほど頻度の高いものではなく、年に数例、ブルーレターやイエローレターの配布されない年もあります。また、令和5年から、紙による配布ではなく、電子的な情報提供も可能と変更されました。
緊急安全性情報(イエローレター)は、医薬品による重篤な副作用の事例によって、重要あるいは緊急性の高い添付文書の改訂がおこなわれた際に配布されます。
安全性速報(ブルーレター)は、緊急安全性情報に準じて、一般的な使用上の注意の改訂よりは迅速な安全対策措置が必要と判断される場合に配布されます。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)のホームページで、最新の情報を確認できます。
添付文書が改訂される前にいち早く情報を得たい方は、PMDAのメールサービスである「メディナビ」に登録しておくのもおすすめです。医薬品に関する重要な安全性情報がすぐに配信されるため、情報を見逃す心配がなくなります。
適正使用ガイド
元々は、オンコロジー(腫瘍)領域の医薬品の安全な使用のため、任意で制作されていた資材です。医薬品リスク管理計画(RMP)の策定に伴って、RMPに基づく資材という位置付けとなり、オンコロジー領域だけでなくさまざまな医薬品で適正使用ガイドが作られるようになってきました。
適正使用ガイドには、以下のような項目が記載されています。
- 警告、禁忌、用法用量など添付文書と同様の内容
- 投与開始前の確認事項
- 代表的な副作用や有害事象、その対処法についての詳細
とくに、副作用や有害事象については詳細に記載されているため、副作用モニタリングをおこなう上で役立ちます。
たとえば、「オフェブ錠」の適正使用ガイドを見てみましょう。代表的な副作用である下痢の対処法について、フローチャートでまとめられています。(p14)
下痢が生じたらすぐに減量をするのではなく、まず止瀉剤や整腸剤を投与するなどの対症療法を実施します。その上で、下痢のコントロールが不十分であれば減量や中断を考慮するという順番で対応することとなっています。
【適正使用ガイドを見るべきタイミング】
- 副作用の程度、頻度、発現時期など詳細に知りたい
- 投与開始前に注意すべき点を確認したい
- 副作用が出た時の対処法を知りたい
まとめ
添付文書は、薬剤師が日常業務で最も頻繁に活用する情報源の一つです。記載内容や構成を理解しておくことで、必要な情報を迅速かつ的確に確認でき、医薬品の適正使用や安全管理に役立ちます。
添付文書だけではわからない情報は、インタビューフォームや適正使用ガイド、安全性情報などを組み合わせて確認しましょう。調べたい内容に対して、適切な情報源をあたれるようになることで、調べ物の早さも質も向上させることができますよ。
