新型コロナウイルスが報告されてから、すでに6年あまりが経過しました。ニュースを騒がせることはなくなってきましたが、季節性の流行病のような位置づけとなりつつあり、今も一定の流行がみられます。
薬局でも、新型コロナウイルス感染症の治療薬を調剤する機会がまだまだあると思います。
そこで今回は、新型コロナウイルス感染症の治療薬について、それぞれの特徴や指導上の注意点などをまとめました。
改めて、復習の機会としてみてください。
新型コロナウイルス感染症治療薬の比較
ここでは、一般的に調剤薬局で取り扱う内服の治療薬について、各薬剤の特徴をご紹介します。
ラゲブリオ(モルヌピラビル)
カプセルに加え、2025年には錠剤も追加承認されました。錠剤はカプセルと比較するとやや小さくなり、飲みやすくなっています。18歳以上に、1回800mgを1日2回、5日間投与します。
発症5日以内に服用を開始しましょう。6日目以降に内服開始した場合の有効性を示すデータは得られていません。
体内動態はほとんど変わらないため、食事が取れない場合でも内服可能です。腎機能・肝機能による用量調節が不要で、現在のところ臨床的に重要な相互作用もとくに報告されていないため、高齢者でも使用しやすいといえます。
| 規格 | 用法用量 | |
|---|---|---|
| ラゲブリオカプセル | 200mg | 1回4Cp、1日2回 5日間 |
| ラゲブリオ錠 | 400mg | 1回2錠、1日2回 5日間 |
カプセル・錠剤ともにある程度大きさがあるため、うまく飲めないという相談があるかもしれません。カプセルに関しては、脱カプセルして懸濁液を調製して投与した経験があります。AUCに差がみられなかったことから、脱カプセルによる懸濁は可能と考えられます。(米国の添付文書では、12F以上の経鼻胃管 、経口胃管、胃瘻管または14F以上の胃空腸瘻管から投与の記載あり)
パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)
成人だけでなく、「12歳以上かつ体重40kg以上の小児」にも適応があります。パキロビッドパックも、発症5日以内に服用を開始しましょう。高脂肪食摂取後のニルマトレルビルのCmaxは、空腹時投与と比較して約60%増加するというデータはありますが、食事の有無に関わらず投与は可能とされています。
いくつか注意すべき点があるため、調剤の前にしっかり確認しましょう。
<注意すべきポイント>
①腎機能による用量調整が必要
| ニルマトレルビルとして | 用法用量 | |
|---|---|---|
| eGFR 60ml/min以上 | 300mg/回 | パキロビッドパック600 1日2回 5日間 |
| 30 < eGFR < 60ml/min | 150mg/回 | パキロビッドパック300 1日2回 5日間 |
| eGFR 30ml/min未満 | 推奨しない | – |
②CYP3A4で代謝されるために併用薬のチェックが必要
代表的な薬剤をいくつかピックアップして掲載します。相互作用があるかどうかは、こちらのページで検索可能です。
🔎ファイザー 薬物相互作用検索ツール
【併用禁忌】
スボレキサント、トリアゾラム、エスタゾラム、アミオダロン、アゼルニジピン、エプレレノン、リバーロキサバン、ボリコナゾール、エレトリプタン、カルバマゼピンなど
【併用注意】
アムロジピン、ニフェジピン、クラリスロマイシン、シクロスポリン、ワルファリン、アピキサバン、シロスタゾール、クロピドグレル、トラゾドン、クエチアピンなど
③肝機能障害のある患者は注意が必要
トランスアミナーゼの上昇を合併している患者の場合、肝機能障害を増悪させるおそれがあります。
ゾコーバ(エンシトレルビルフマル酸)
12歳以上の小児および成人に対して適応があります。重症化リスク因子の有無を問わず軽症・中等症の方が対象とされていることから、他の内服薬よりも適応される患者層が広く、症状改善目的での使用も想定されている点が特徴です。発熱や咳などの症状が消失するまでの期間を、24時間程度短縮してくれます。
ほかの2剤よりも服用開始のリミットが早く、発症3日以内に服用を開始しなければならない点に注意しましょう。また、相互作用や用法用量も確認すべきポイントです。
<注意すべきポイント>
①CYPによる代謝、CYPの阻害、P-gp/OAT1B1/BCRPの阻害作用等があり相互作用のチェックが必要
代表的な薬剤をいくつかピックアップして掲載します。相互作用があるかどうかは、こちらのページで検索可能です。
🔎SHIONOGI. ゾコーバ 薬物相互作用検索ツール
【併用禁忌】
シンバスタチン、カルバマゼピン、スボレキサント、トリアゾラム、リバーロキサバンなど
【併用注意】
アトルバスタチン、アルプラゾラム、アピキサバン、シクロスポリン、ゾピクロン、ダビガトラン、ニフェジピン、ベラパミル、メトトレキサートなど
②初回内服はローディングが必要
初回は1回3錠、2日目以降は1日1回1錠を服用します。ローディング投与することで、初日から血中濃度を維持することができます。
患者が服用方法を間違えることのないよう、しっかりと説明することが大切です。
3つの治療薬の違いをまとめて比較
対象患者や併用薬、服用開始期限などの違いを、比較表で整理しました。
| ラゲブリオ | パキロビッド | ゾコーバ | |
|---|---|---|---|
| 規格・剤型 | カプセル(200mg) 錠剤(400mg) |
パキロビッドパック600 パキロビッドパック300 |
錠剤(125mg) |
| 用量調節 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 対象患者 | ・18歳以上 ・重症化リスク因子のある軽症〜中等症 |
・成人、および12歳以上かつ体重40kg以上の小児 ・重症化リスク因子のある軽症〜中等症 |
・12歳以上の小児および成人 ・軽症〜中等症 |
| 服用開始期間 | 発症5日以内 | 発症5日以内 | 発症3日以内 |
| 相互作用 | 報告なし(2026年1月現在) | 多数あり (🔎検索サイトあり) |
多数あり (🔎検索サイトあり) |
| 服用が向いている方 | ・服用薬の多い方 ・腎機能や肝機能の悪い方 |
・大きな錠剤やカプセルの服用が難しい経口内服の方 ・服用薬の少ない方 |
重症化リスク因子のない方 |
新型コロナウイルス感染症の流行の状況
新型コロナウイルス感染症は、現在どのくらい流行しているのか?については、厚生労働省が毎週報告を出しています。各々、確認してみてください。
厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)
報告によると、毎年夏(7〜8月頃)と冬(12〜1月頃)の2回、流行の大きな波が生じているようです。波の大きさ自体は年々小さくなりつつありますが、夏休み・冬休みで人の移動が多い時期には、変わらず感染対策の強化が必要といえるでしょう。
感染の報告が多い年代は、10歳未満と80歳以上です。入院し、ICU入室や人工呼吸器による管理が必要となる方も、全感染者数のうち3%前後います。重症化リスク因子を持っている方は、年間を通して感染対策は意識するとよいのではないでしょうか。
・糖尿病
・慢性閉塞性肺疾患
・慢性腎臓病
・悪性腫瘍
・免疫抑制剤の使用
・喫煙者
・肥満
・高齢
薬局内・家庭での感染対策
コロナ流行の初期は、家庭での感染対策についてテレビ等で特集されていましたが、忘れてしまった方も多くなってきました。家庭内での感染対策について、自信を持って答えられるよう、復習としてご紹介します。
Q. 換気はどのくらいしたらいい?
1時間に1回、数分間程度窓を開けて空気を入れ替えてください。部屋に窓が1つしかない場合でも、窓を少し開けて空気の流れを作るだけで効果があります。寒い季節やエアコン使用時でも、短時間の換気であれば室温変化は最小限にできます。
陽性者がいる家庭では、とくに陽性者の部屋を定期的に換気することが重要です。空気清浄機は補助的な効果はありますが、換気の代わりにはなりません。できる範囲で空気の入れ替えを続けましょう。
Q. どこを消毒すべき?
消毒は「家の中すべてを徹底的に」おこなう必要はありません。ウイルスが付きやすい「よく触る場所」を重点的に対応しましょう。
具体的には、ドアノブ、照明スイッチ、リモコン、スマホ、蛇口、トイレのレバーなどです。使うたびに、こまめに拭き掃除をするのが感染対策としてはおすすめされます。陽性者が使ったティッシュやマスクは袋に入れて密閉してから捨てましょう。
Q. 食器や洗濯物は分けたほうがいい?
食器や洗濯物を完全に分ける必要はありません。通常どおり、洗剤で洗えば問題はなく、食器洗い機があればより安心です。ただし、陽性者が使用後の食器やコップを共用しないでください。
タオルだけは感染リスクがやや高いため、ハンドタオル・バスタオルは共有しないことを徹底してください。基本的に、感染者がいないときでも、日頃からタオルの共有を避けておくとよいでしょう。
まとめ
新型コロナウイルス感染症は、流行の規模こそ小さくなってきているものの、夏と冬を中心に依然として一定数の発生が続いています。
薬局ではラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバといった経口治療薬を扱う機会もあるでしょう。それぞれで投与開始時期、用量調整の要否、相互作用など、確認すべきポイントが異なります。患者の背景や併用薬を踏まえ、最適な薬剤を選択できるよう知識を整理しておくことが重要です。
また、家庭内では換気の実施、タオルの共有を避けるなど、無理なく実践できる基本的な感染対策が効果的です。薬剤師として、最新情報に基づいた治療薬の指導と家庭での対策の両面をサポートしていくにあたって、今回の記事が参考になれば幸いです。
