【SOAP方式の薬歴例】カルテ情報がない環境での薬歴記載のコツと実践例

薬剤師のリアル

薬歴は、「POS(Probrem Oriented System:問題志向型システム)」の考え方をもとに、SOAP形式で記載するのが一般的です。薬歴記載のコツについてはこちらの記事でもご紹介しましたが、多くの方が薬歴の記載に悩んでいることがわかりました。
そこで、これから7回にわたって、薬歴記載のコツや、薬歴を薬学的管理に活かす方法などについて、さまざまなケースをもとにご紹介していきます。薬歴の書き方に悩んでいる方、ブラッシュアップしたいと考えている方などにとって、参考になれば幸いです。
初回となる今回の記事では、主に調剤薬局やドラッグストア併設薬局など、カルテ情報を閲覧できない環境を想定した薬歴記載のコツをご紹介します。

カルテ情報がない環境における薬歴記載の悩み

調剤薬局やドラッグストア併設薬局など、カルテ情報が閲覧できない環境で働く皆さんは、薬歴記載に関して、病院とは異なったお悩みを持っていることが多いです。

・聞いたことや説明したことを羅列しているだけになる
・ただ薬効を説明して終わっている
・プロブレムが見つからない
・DO処方だから、書くことがない
・患者に何を聞けばいいかわからない など

ご自身の感じているお悩みに、該当するものはありましたか?このシリーズでは、こういったお悩みを解決し、患者との面談や、それを薬歴活用に活かしていくためのコツについて紹介していく予定です。

「ただ薬歴を書いている」という段階から、ステップアップしませんか?薬歴を十分に活用できる薬剤師になるため、いま一度、薬歴について一緒に学び直していきましょう。この記事では、まず2つのケースを挙げてみます。

ケース1:カルテ情報がない環境でのプロブレム設定方法は?

将来的にはカルテ情報が共有されるとも言われていますが、現状では調剤薬局などではカルテ情報を閲覧することができません。それゆえに苦労している方も多いと思います。
まずは、薬局やドラッグストアでよくある例として、高血圧治療を継続している患者の例を挙げ、まずは基本的な「プロブレムの立て方」を考えてみましょう。

たとえば、「現在の治療に新しくアジルサルタンが追加され、その事実を伝えた」という場合でも、以下のような記録は書くことができます。

Before
#降圧不十分
S)
血圧は140
O)
アジルサルタン追加。
A)
降圧不十分。
P)
降圧効果確認。

もちろん、この記録でも診療報酬を請求するのに最低限の情報は記載できているでしょうが、患者が治療についてどう思っているかなどはわかりません。また、治療が不十分な原因には、もう十分下がっていると勘違いして薬を飲んでいない・減塩食や運動をやめてしまったなども考えられます。たしかに「降圧は不十分」なのですが、その理由がわかりませんね。
患者の治療がうまくいっていない原因を探ることで、プロブレムが見えてくるのです。その点を意識すると、面談時の会話も変わってくるでしょう。

<ポイント>
患者の理解度を探り、プロブレムを見つける
After
#HT治療に対する理解不足
S)
クリニックでBP140。まだ増えるのか。
血圧の正常値はわからない。
O)
・アジルサルタン20mg追加、怠薬なし
・家庭血圧の測定なし(血圧計あり)
・降圧目標値→130未満と説明
・過降圧によるめまいやふらつきを注意喚起
A)
アドヒアランス不良。降圧目標を共有し、血圧治療が不十分と理解。自宅での血圧測定をすすめた。
P)
血圧の推移確認。

いかがでしょうか?
面談の前からプロブレムを設定しようとしてしまっている薬剤師も、少なくありません。ですが、プロブレムは、患者との面談の中から生じるものです。
薬の内容に変化があったときには、なぜ薬が変わった(増えた)のか?なぜ治療が必要なのか?などについて患者の理解度をチェックし、プロブレムの設定に繋げてみてください。

ケース2:カルテ情報がない環境で処方意図を探るには?

カルテ情報が閲覧できないことで最も困るのは、処方意図を正確に掴めないことではないでしょうか?処方意図は、処方内容と患者面談から判断するしかありません。
聴取して推察した処方意図は、その次に担当する薬剤師にもわかるよう記載しておきましょう。

たとえば、睡眠薬の種類が増えた高齢患者のケースで考えてみます。睡眠薬が増えたことをただ伝えるだけでも、以下のような薬歴をつけることができてしまいます。

Before
#不眠
S)
わかりました。
O)
ブロチゾラム0.25mgにデエビゴ2.5mg追加
AP)
睡眠状況を確認する

ですが、実際に睡眠に問題があるのか、他の意図があるのかはわかりません。処方意図を探るため、本人に聞いてみる必要があります。

薬剤師:今回は、睡眠のお薬が1つ増えています。うまく眠れていないですか?
患者:眠れてるんだけどね。雑誌で睡眠薬はボケるとみたから、聞いてみたの。そうしたら、体にいい睡眠薬があるから試してみようとか言っていたよ。
薬剤師:そうなのですね。デエビゴという新しい薬は、自然な眠りを促すお薬なので、劇的な効果は感じないかもしれませんが、クセになりにくく安全なものなので、今の薬と合わせて飲み続けてください。
患者:2つも飲んで危なくないの?
薬剤師:組み合わせて飲んでも問題ありません。今まで飲んできたブロチゾラムという薬は、急にやめるとかえって眠りにくくなることがあるので、新しい薬と合わせながら少しずつ減らしていくのではないかと思います。
患者:わかったよ。

患者との面談により、医師がブロチゾラムからデエビゴへの切り替え、あるいはブロチゾラムの減量などを考えている可能性が考えられました。面談により処方意図がわかったので、「あまり変わらないから、デエビゴは飲まなくてもいいや」とならないような説明をすることができました。一連の流れを引き継げる薬歴にしましょう。

After
#BDZ系への不安
S)
睡眠薬でボケるのが心配。体にいい睡眠薬を追加すると聞いた。2種類飲んで危険はないか?
O)
・デエビゴは依存性が少なく、ブロチゾラムと組み合わせても問題ないこと伝えた
・不眠なし
A)
ブロチゾラムから切り替えを検討していると思われる。
P)
睡眠状況確認。睡眠衛生指導も検討。

このように記載しておけば、次回以降でブロチゾラムが減量された場合、すぐに状況が理解できます。睡眠の質が悪化したと感じているようであれば、カフェインの摂取時間や運動習慣などを聞いてアドバイスするなど、指導に繋げることもできるでしょう。

処方の変更があった場合、「先生はなんと言っていましたか」「新しい薬について、先生から何か聞いていますか」という質問が有効です。患者の症状だけでなく、医師の処方意図や、患者本人の理解度などさまざまなことがわかります。薬が追加・削除されていたときには、積極的に患者へ聞いてみることで、薬歴を充実させることができますよ。

まとめ

今回は、「カルテ情報を閲覧できない環境」を想定し、薬歴記載のコツをお伝えしました。実際の業務でよくあるシーンだと思いますので、活用してみてください。
これからシリーズ記事として、薬歴の書き方やブラッシュアップのコツについてご紹介していきます。次回は、病院など「カルテ情報を閲覧できる環境」を想定したケースをお届けしますので、楽しみにお待ちください。

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