「薬歴をどのように書けばよいか」「わかりやすく、役立つ薬歴とは何か」と、悩んでいる薬剤師の方はとても多いです。そんなお悩みを解消し、薬歴を「ただの記録」からステップアップさせるため、全7回のシリーズとして、薬歴記載やそれに関わる面談のコツについてご紹介していきます。
シリーズ2回目の本記事では、カルテ情報を閲覧できる環境、主に病院で勤務する薬剤師を想定し、薬歴記載のコツをお伝えします。
カルテ情報がある環境における薬歴記載の悩み
カルテからは、患者の情報や治療経過、処方意図などの情報のほか、他職種が患者と何を話したか、何を指導されているのかなども把握することができます。逆に言えば、薬剤師の記録も他職種が読んでおり、何かしらの参考にされるということです。
・プロブレムが多すぎてゴチャゴチャする
・他職種に見られるのが恥ずかしい など
ケース1:他職種に伝わる記載をするには?
病院では、他職種と協力しながら患者の治療や指導に当たることができるのが特徴です。他職種に伝えるという意図を持って記載してみましょう。また、他の職種と連続性をもった業務ができるのも利点です。
たとえば、糖尿病で教育入院中の患者の看護記録に、次のような記載があったとします。
薬がどんどん増えていく。食前だの食後だの、管理できる自信がない。
O)
薬剤の必要性を説明した。
P)
入院中、自己管理の練習をすすめる。
この記載を見て、あるいは看護師からの申し送りを受けて、薬剤師が指導をするというのはよくある流れでしょう。自宅退院後の薬剤管理がうまくできるよう、薬剤師として面談したという例を考えてみます。
#新規薬剤の指導
S)
食直前はなぜですか?わかりました。
O)
【処方内容】
リナグリプチン5mg 1回1錠 朝食後
メトホルミン250mg 1回2錠 毎食後
レパグリニド0.25mg 1回1錠 毎食直前
アムロジピン 1回1錠 朝食後
【説明内容】
・それぞれの薬剤の機序や副作用について説明
・レパグリニドは食直前でなければならないことも説明
A)
飲み忘れ防止のため服用タイミングの統一はどうか。医師に相談。
P)
自己管理の支援。
一見、簡潔にまとまっているようにも見えます。が、この記録では、本人が薬剤師の説明によって、食直前・食後に分かれていることに納得しているようにも受け取れます。
もう少し本人の状況がわかると、医師も服用タイミングの統一に納得しやすいのではないでしょうか?
#服薬管理の不安
S)
仕事をしているから、朝はバタバタして今までも飲み忘れがあった。昼の薬は忘れずに持っていかないとな。夜は晩酌をしながらダラダラしがち。
食前じゃないとダメか?
O)
【処方内容】
リナグリプチン5mg 1回1錠 朝食後
メトホルミン250mg 1回2錠 毎食後
レパグリニド0.25mg 1回1錠 毎食直前
アムロジピン 1回1錠 朝食後
【確認内容】
平日は仕事(デスクワーク) 飲み忘れもあった
1日3食とる習慣がある 間食はしない 飲酒(毎日ビール1缶)
【説明内容】
・レパグリニドの作用機序を平易な言葉で説明し、食前に服用する必要があることを説明
・昼薬は、薬を受け取ったら必要分を職場のデスクに置いておくことを提案
A)
服用タイミングが増え、管理に不安がある。
飲み忘れ防止のため、すべての薬を食直前にまとめてもよいだろう。医師と相談。
P)
自己管理の支援を継続。
いかがでしょうか。生活の状況を聴取した上で、薬剤師として「なぜ服用タイミングを統一すべきと考えたのか」がわかるようになりました。
医師は治療の観点から薬剤を処方しますが、薬剤師は治療を成功させるためにも、実際に服薬する患者の性格・生活などを考えなければなりません。
薬剤師ならではの立ち位置から考えた経緯を記載することで、「他職種にも経緯がわかりやすく、役立つ薬歴」になりえることが、お分かりいただけたと思います。
ケース2:複数プロブレムがある患者の薬歴を書くには?
短い入院期間の中で、複数のプロブレムに対応しなければならないとき、記録がうまくまとまらない…そんなケースは少なくないと思います。どのように記載したらすっきりとまとめられるでしょうか?
例として、抗がん剤治療中に疼痛コントロールにも難渋している例を考えてみましょう。
#疼痛コントロール不良
#CDDP+5-FU 副作用モニタリング
S)
昨日抗がん剤をやってから吐き気でご飯が食べられないです。水分もあまり取れません。
痛みもあるし身の置きどころがない。レスキューは使いすぎが怖くて使えてません。
O)
CDDP+5-FU 1コース目day2
食欲不振:G2 悪心:G1 体重増加:+1.8kg
オキシコドン10mg/day レスキュー使用なし 安静時痛:NRS3 突出通:NRS6
・レスキューは1時間空けて何度でも使えること、比較的すぐに体から排出されるため、複数回使っても安全であることを伝えた。使えること、比較的すぐに体から排出されるため、複数回使っても安全であることを伝えた。レスキューの使用回数はベースアップを考える材料にもなるため、使ってみて欲しいことを伝えた。
・腎臓への影響を減らすため、できる範囲で少しずつ水分を摂るよう指導した。
A)
シスプラチンの影響と思われる悪心により、食事・飲水ができていない。
レスキューの使用に対して不安の表出があり、上記説明した。使用により突出通の緩和ができるか確認した上で、ベースアップも検討が必要になるだろう。
制吐剤の追加を検討する。
P)
悪心のフォロー。レスキュー使用回数・疼痛状況を確認。
記載内容は過不足ないかもしれませんが、異なるプロブレムについての記載が入り乱れており、把握しにくくなっています。
#1 疼痛コントロール不良
#2 CDDP+5-FU 副作用モニタリング
S)
#1
痛みもあるし身の置きどころがない。レスキューは使いすぎが怖くて使えてません。
#2
昨日抗がん剤をやってから吐き気でご飯が食べられないです。水分もあまり取れません。
O)
#1
オキシコドン10mg/day レスキュー使用なし 安静時痛:NRS3 突出通:NRS6
・レスキューは1時間空けて何度でも使えること、比較的すぐに体から排出されるため、複数回使っても安全であることを伝えた。レスキューの使用回数はベースアップを考える材料にもなるため、使ってみて欲しいことを伝えた。
#2
CDDP+5-FU 1コース目day2
食欲不振:G2 悪心:G1 体重増加:+1.8kg
・腎臓への影響を減らすため、できる範囲で少しずつ水分を摂るよう指導した。
A)
#1
レスキューの使用に対して不安の表出があり、上記説明した。使用により突出通の緩和ができるか確認した上で、ベースアップも検討が必要になるだろう。
#2
シスプラチンの影響と思われる悪心により、食事・飲水ができていない。制吐剤の追加を検討する。
P)
悪心のフォロー。レスキュー使用回数・疼痛状況を確認。
それぞれのプロブレムごとに、患者の訴え・聴取内容・アセスメントなどがすっきり整理されました。スペースや書き方の自由度が高い電子カルテを使用している方は、#1に対するSOAP、#2に対するSOAPと、完全に分けてしまうのもアリでしょう。
薬剤師にとって見やすいだけでなく、他職種も必要な情報を見つけやすくなります。
まとめ
今回は、「カルテ情報を閲覧できる環境」として主に病院を想定して、薬歴記載のコツをお伝えしました。病院では、薬剤師だけでなく他職種にも記録を読まれているという意識が大切です。
「ただの記録」から「活用できる薬歴」へのステップアップを目指していきましょう。
次回は、DO処方が続いている場合の薬歴記載のコツをご紹介する予定です。
