慢性疾患の患者で、年に何度も顔を合わせるものの大きく処方内容が変わらない…というケースは、どの調剤薬局でも多いでしょう。
何度も同じような説明をするのもはばかられ、有意義な面談ができない、という声はよく聞かれます。
シリーズ4回目の本記事では、それほど大きくは処方内容が変わらないものの、患者と面談をする機会は多い慢性疾患患者のケースを想定し、面談や薬歴記載のコツをお伝えします。
慢性疾患における面談・薬歴記載のコツ
慢性疾患は、それほど自覚症状がなくても、服薬を続けて長く付き合っていく必要があります。とはいえ、症状がないのだから「面倒だな」「もう薬はいらないのでは?」という気持ちが生まれてしまうのも、仕方のないことかもしれません。
病気や薬に対する正しい認識を持つことが、前向きな気持ちで治療を継続することに繋がります。
たとえば、以下のような項目を正しく理解できているか、定期的に確認し、必要な指導をする・資料を渡すということをしてみてはいかがでしょうか?
| 糖尿病 | ・HbA1cの値やその目標値 ・低血糖症状や対処法 ・糖尿病の合併症について |
| 高血圧 | ・自分の血圧の値やその目標値 ・血圧が高いことによる影響 |
| 心不全 | ・治療の必要性、目的 ・心不全が進行性の病態であること ・心不全の悪化兆候 |
| その他 | ・免疫抑制剤:感染予防 ・ワーファリン:制限すべき食事の内容 ・抗凝固・抗血栓薬:生活上の注意点 ・ビスホスホネート製剤:服用方法 |
ケース1:心不全患者の薬歴例
面談の例として、心不全の治療をしている患者への指導を挙げてみます。とくに、心不全は国としても管理に力を入れている疾患で、「調剤後薬剤管理指導料2」の対象疾患にも追加されました。(細かな算定要件がありますので、ご確認ください。)
服薬指導や、服薬状況の確認に加えて、薬剤師が療養指導に参加することも求められています。面談の例をみていきましょう。
【面談例】
1回の面談で1つの項目についての確認であれば、それほど時間もかかりません。一度にたくさん説明するよりも患者の頭に残りやすいため、ぜひ実践してみてください。何か確認・指導をした場合、記録は以下のように書くことができるでしょう。
心不全の悪化兆候>診断されたとき、息切れがあった。
体重増加とは?
O)
【処方内容】
ビソプロロール錠2.5mg 1回1錠 1日1回朝食後
フォシーガ錠5mg 1回1錠 1日1回朝食後
エンレスト錠100mg 1回1錠 1日2回朝夕食後
スピロノラクトン錠2.5mg 1回1錠 1日1回朝食後
ニフェジピンCR錠20mg 1回1錠 1日1回夕食後
ロスバスタチン錠2.5mg 1回1錠 1日1回夕食後
フロセミド錠10mg 1回1錠 1回1錠 1日1回朝食後
【説明事項】
心不全の悪化兆候:体のむくみや体重増加、疲れやすい、食欲がない
体重増加について:数日で2〜3kgなど急な悪化に注意
A)
説明により心不全悪化兆候について理解できたと思われる
P)
次回以降、理解度確認。
心不全の悪化兆候について、体重増加や息切れなどの具体的な症状を患者に認識させることができれば、悪化時の早期受診に繋げることが可能です。
薬剤師が心不全患者の薬剤管理にどのように関わっていけばよいのかについては、日本心不全学会が作成した「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き」が参考になります。
(https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/shinhuzenhukuyakukanri.html)
ケース2:糖尿病患者の薬歴例
糖尿病も、「調剤後薬剤管理指導料2」の対象疾患です。糖尿病と診断された方と予備軍の方は合計で2000万人もおり、しっかりと治療を継続して合併症を予防することが、健康維持のために重要な課題となっています。
糖尿病患者は日々たくさん来局されるでしょうから、全員でステップアップするチャンスです。
【面談例】
薬歴としては、以下のように書くことができます。
正月に食べ過ぎて、A1cが悪化しました。
O)
【処方変更点】
メトホルミン錠250mg 1回1錠 1日2回朝夕食後→1回2錠 1日2回朝夕食後へ増量
【HbA1c】7.1→7.8
A)
HbA1cの悪化原因を把握できており、改善に向け行動できると判断。
P)
A1cの推移確認。DM合併症についての知識確認でアドヒアランス向上をはかる。
いかがでしょうか。
アドヒアランス不良の方には、合併症のことをお伝えし、治療の必要性を理解してもらうことも大切です。
ケース3:服用方法に注意-ビスホスホネート製剤の薬歴例
薬の中には、食直前・食間など服用タイミングが決まっているものや、服用する際に決まりがあるものもあります。
はじめのうちは服用方法を守っていたものの、慣れるにしたがって決まりを忘れてしまったり、そもそも説明を覚えていなかったりという患者も少なくありません。また、意味を勘違いしているケースも見られます。
服用方法に注意が必要なものについては、年に1回など確認をしましょう。
【面談例】
もちろん、間違いなく服用できている方もいますが、面談例のように服薬方法について再指導につながることもたくさんありますので、定期的に実施して見てください。この患者の薬歴記載例は、以下のようになります。
BPを飲んだ後ウトウトすることがあった。
OA)
BPの服用方法について説明→改めて理解できたと判断
(起床時、30分横にならない、30分水以外の飲食をしない)
P)
再度時間を空けて、BPの服用方法を確認する。
指導内容についてはテンプレートを作成しておくことをおすすめします。説明しなかった箇所を削除するだけで、簡単に内容の充実した薬歴を記載することができ、次に担当する薬剤師にもわかりやすく引き継ぐことが可能です。
まとめ
今回は、薬の説明をするだけでなく、病気そのものや治療の意義などについて理解の確認や指導をすることで、さまざまな介入ができるということについてご紹介しました。
慢性疾患患者の場合は、自覚症状のなさから怠薬につながってしまうこともあります。
知識を深めるような介入をすることで、治療に対して前向きな気持ちを持たせることも、薬剤師としての大切な業務の1つです。薬歴にも反映させやすくなります。
ぜひ、今回ご紹介した方法を実践してみてください。
