がん治療の現場では、医師や看護師を中心としてさまざまな医療のエキスパートがチームを組んで治療にあたります。その中でも、薬物療法に関するエキスパートとして医療チームに参加するのが「がん薬物療法認定薬剤師」です。では、がん薬物療法認定薬剤師になるためにはどうすれば良いのでしょうか。本記事では、がん薬物療法認定薬剤師の概要や認定条件、更新手続きや仕事内容、資格が活かせる仕事などについて詳しく解説します。
がん薬物療法認定薬剤師とは
がん薬物療法認定薬剤師とは、がん領域において薬物を用いた治療に関する高度な知識、技能、実践能力を備えた薬剤師のことです。一般社団法人日本病院薬剤師会によって認定される資格で、2007年4月1日から開始され、2022年までに認定者数は1,000人を超えています。
がん薬物療法認定薬剤師が設置された目的として、がん治療における薬学的な管理を安全かつ有効に行うこと、チームを組んで行うがん医療の中で医師や看護師などを含む多くの医療エキスパートと連携しながら、患者にとって適切な薬物療法を提供することが挙げられます。
似たような資格に「がん専門薬剤師」「外来がん治療認定薬剤師」などがありますが、それぞれ認定する学会が異なります。がん専門薬剤師は日本医療薬学会が、外来がん治療認定薬剤師は日本臨床腫瘍薬学会がそれぞれ認定する資格です。外来がん治療認定薬剤師の場合は仕事内容もやや異なるため、自分に合った資格を取得しましょう。
がん薬物療法認定薬剤師になるにはどうすれば良い?

がん薬物療法認定薬剤師になるにはどうすれば良いのでしょうか。がん薬物療法認定薬剤師の認定条件と認定までの流れ、更新手続きや各種手数料について見ていきましょう。
認定条件と認定までの流れ
がん薬物療法認定薬剤師になるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
(1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。
(2)薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。た だし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。
(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。
(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度 により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。
(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、がん薬物療法に3年以上、かつ、申 請時に引き続いて1年以上従事していること(所属長の証明が必要)。
(6)日本病院薬剤師会が認定する研修施設(以下「研修施設」という。)において日本病 院薬剤師会が別に定める実施要綱・コアカリキュラムに基づく実技研修を履修して いること、または、研修施設において3年以上、がん薬物療法に従事していること (所属長の証明が必要)。
(7)日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会、及び別に定める学会が主催するが ん領域の講習会などを所定の単位(40時間、20単位以上)履修していること。 ただし、40時間のうち日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会 12時間、6単位以上を取得すること。
(8)がん患者への薬剤管理指導の実績50症例以上(複数の癌種)を満たしていること。
(9)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(10)日本病院薬剤師会が行うがん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格していること。
がん薬物療法認定薬剤師認定申請資格に関する事項
1.(2)で「別に定める団体」とは、以下の通りである。 ● 日本薬剤師会 ● 日本女性薬剤師会
2.(3)、(7)で「別に定める学会」とは、以下の通りである。 ● 日本医療薬学会 ● 日本癌治療学会 ● 日本薬学会 ● 日本臨床腫瘍学会 ● 日本臨床薬理学会 ● 日本緩和医療学会 ● 日本癌学会 ● 日本緩和医療薬学会 ● 日本臨床腫瘍薬学会
3.(7)で「日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会」とは、以下の団体が実施す る講習会である。 ● 日本病院薬剤師会 ● 日本病院薬剤師会が実施するeラーニング ● 各都道府県病院薬剤師会(ブロック開催も含む)
4.(6)に定める実技研修の履修者に限り(7)の「日本病院薬剤師会が認定するがん 領域の講習会」として、以下に定める機関が実施する講義研修を認める。 ● がん専門薬剤師研修事業において日本病院薬剤師会が認定する研修施設
これには所属長の証明も必要とされ、非常に重視される部分であることがわかります。初めに紹介したように、がん薬物療法認定薬剤師には、がんの病態や患者特性など、臨床的な知識が広く求められるためです。
更新手続きについて
がん薬物療法認定薬剤師の資格は、5年間有効です。5年ごとに更新が必要で、資格取得から更新までに資格要件の(1)〜(3)のほか、以下の要件を満たす必要があります。
- 認定期間中、施設内においてがん薬物療法に関する専門的業務に従事していたことを証明できる
- がん治療に関する講習単位50単位以上を取得する(日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会12単位以上を含む)
- がん患者への薬剤管理指導(入院・外来化学療法)の実績が25症例以ある
- 関連する学会への学会発表が1回以上、国際的あるいは全国的な学会誌や学術雑誌に学術論文が1編以上ある
申請手数料と更新手数料
申請手数料と更新手数料は、以下の通りです。
申請手数料(認定料)…22,000円(税込)
認定審査料…会員11,000円(税込)、非会員16,500円(税込)
更新手数料(更新料)…22,000円(税込)
更新審査料…会員11,000円(税込)、非会員16,500円(税込)
参考元:一般社団法人日本病院薬剤師会
がん薬物療法認定薬剤師の仕事内容は?
がん薬物療法認定薬剤師は、がん医療に関する知識や技術を活かし、薬物療法に関してより良い提案をしたり、薬剤の適切な管理をしたりするのが仕事です。副作用が起こった場合のフォローや解決策も含め、薬物療法に関する包括的な支援を行います。
がん治療は医師や看護師を中心に、その他のさまざまな医療のエキスパートが連携して行いますが、がん薬物療法認定薬剤師は薬物のエキスパートとしてチームに参加し、医師や他の医療スタッフへの助言や提案を通じて最適な薬物療法が行われるよう務めます。それと同時に、患者本人や家族にも薬物療法に関する説明や指導も行います。
がん薬物療法認定薬剤師が活きる仕事
がん患者数は年々増加しており、それに伴ってがん治療に専門的な知識をもつチーム医療が求められるようになってきています。そのため、がん薬物療法認定薬剤師は一般の病院だけでなく、がん治療に特化した専門的な病院でその職能が活かせるでしょう。
今後は在宅医療も増えていくと考えられており、その際には地域と連携した医療的な支援が求められます。がん治療の現場における薬物療法のエキスパートとして、活躍の場は多いでしょう。
薬剤師が取得できるその他の認定資格

がん薬物療法認定薬剤師とは、がん領域の薬物療法に関する高度な知識、技能、実践能力を備えた薬剤師のことで、がん治療のための医療チームの中で薬物療法のエキスパートとして活躍することが求められます。がん治療に特化した専門病院や、今後は在宅医療などでも職能が発揮できるでしょう。
薬剤師が取得できる資格には、他にもさまざまなものがあります。それぞれの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。




